第10話 床下のエンジン音が気になる人も・・・
せっかくの機会ということで乗りましたが、A寝台車の前のあの新車の寝台車、スハネフ14型というようですね。
あの車両の床下には電源用の設備が置かれていると、地元の鉄道好きの藤木さんという、私や堀田君より幾分若い方に伺っておりました。
彼の話では、今の寝台特急に連結されている電源車で作られる車両用の電源を何両かのスハネフ14の床下に設置することで電源車を1両入れなくてよくなる分、そこにお客さんを乗せられるのだと、そのように伺っております。
ただ、その車両に当たった人の中には、床下のエンジン音が気になって良く寝られないと訴える人もいると、藤木さんもおっしゃっていました。
川中さんからその車両がスハネフ14だと聞かされて、いささか驚きました。
車内でこそ、さほど気になりませんでしたが、東京駅のホームに降りて改めて車両を振り返ってみましたら、確かにその電源のエンジン音、耳につきましたね。
ただ、寝台列車のあの電源車とやらの音、私も聞いたことありますけれども、スハネフ14は、それほどの大きさではなかったですね。
そんな調子でエンジン音が云々と言われているようですが、私は特に何ということはなく、むしろ適度な揺れと単調な音のおかげで、あ、何より酒のおかげというのを忘れてはならんでしたね(爆笑)、気にならずに、むしろ快適に寝ることができました。
もう一つ申すなら、食堂車の手前ではなくてA寝台車のすぐ手前でしたから、通り抜けの客もさほどおりませんから、それもありがたかったですね。
この列車は食堂車の前に普通車が何両もありまして、そちらからの客でいささか長居する方もおいでのようで、それがちょっと気になりますが、混雑する時期でもないので、そこで食堂車が満席などということもなかったので、助かりましたね。
もっとも、私のような、若い頃陸軍で鍛えられた上に酒も覚えて少々のことでは動じないおっさんなんかはよろしかろうが、一般の人の中には、あのエンジン音のおかげで寝られないという人もおられんかと、そんなことも思われた次第です。昨晩から今日の帰りの「瀬戸」ではA寝台に乗りまして、こちらは今まで通りの車両ですけども、その走行中の音と比べましても、ちょっと引っかかるところはありました。
そのあたりは、川中さん、おいかがかな?
・・・ ・・・ ・・・・・・・
国鉄官僚氏は、そのような話がかねて乗客より出ていることも把握している。
彼は、対外的な発言で常日頃答えている内容をトレースして答える。
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