第9話 寝台サービスの差別化について
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それぞれ飲みながらつまみを食べつつ、ビールがなくなれば追加を頼んでいる。
真鍋氏は、少し休ませてくださいと言い残し、飲食物を補給している。
「堀田先生は、寝台車に乗られたことは、おありですか?」
最年少の国鉄職員である川中氏が、堀田教授に質問した。
列車ですでに同席している真鍋氏や山藤氏よりも、初対面の堀田氏に聞いた方がより情報も集まろうということか。
東京に出張するときに片道を寝台車にするとか、そういう経験はあります。
しかしどうもあのB寝台ですか、あの狭い空間で寝るのは勘弁でしてね。
家族旅行で利用したこともあるにはありますが、子どもを連れていましてね、さすがにそこはケチらずに今のA寝台を利用しましたよ。
子ども連れには、あのA寝台くらいのスペースがあれば、何とかなります。しかし、いくら広くなったと言いましても、その新車のB寝台を親子連れで利用するとしましても、さすがに窮屈じゃないかと思えますけどね。
川中さん、どうです?
国鉄官僚の川中氏が、非公式の場とはいえ、利用者の声に答える。
先生のおっしゃるとおりです。
やはりA寝台とB寝台の差別化は、明確にしなければなりませんね。
弊社といたしましては、多くのお金をお支払いいただくお客様には、それなりのサービスをご提供しないといけませんから。
ここだけの話ですけど、うちの会社では(一同苦笑)、二段式のB寝台を現在計画しております。
こうなりますと、ベッドの高さにつきましては、A寝台とほぼ同じになります。
ですが、今のA寝台車ほどの幅にはできませんね。
定員も少なくなって、さらにいただける料金も減るでは、さすがに弊社といたしましては、ただでさえ赤字のところに、持ちませんがな。
そこはやはり、寝台幅とあとは、その車両の持つ雰囲気と申しますか、そういう物理的なサービスで補えないところで差別化を図らなければなりませんね。
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ここで、話を聞いていた山藤氏が間に入った。
「それじゃあ皆さん、私の感想、述べさせていただいてもよろしいですか」
ビールのジョッキを飲み干し、お替りを頼んだところを見計らい、岡山市内で米屋を経営する元陸軍将校が話し始めた。
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