第5話 まずは、最年長弁護士の感想から
「我々が乗ったのは、上りの「瀬戸1号」です。岡山は午後5時台に出ますから、まだ、寝台をセットされていませんでしたよね。早めに食事をしておきましたが、姫路に到着する前に、少し早く帰りましょうと申し上げました。真鍋さんと山藤さんに、ぜひ、新型寝台車のセットの様子を御覧いただきたいと思いましてね」
この中では最年少の国鉄職員の川中氏が述べる。
「川中さん、その新車の寝台、国鉄さんはいずれ特急にされるおつもりですね?」
「ええ、堀田先生、国鉄きっての新車でございますゆえ、無論その方針です」
「それでは川中さん、堀田君にその新車のこと、話して差上げてください」
山藤氏の弁に、川中氏が話すところを、真鍋弁護士が制した。
「まあ諸君、お待ちください。その前に、私の感想をお聞き願えぬものかな」
川中氏は、意外にもその提案をすんなり受入れた。
「それなら真鍋先生、ぜひ、お先にお願いできませんか。先生のご感想の後に下手なことを述べると大変ですから、まずはぜひ、先生のご感想を。堀田先生さえよろしければそのようにさせていただければ何よりですが、先生、おいかがでしょうか? ここはひとつ、真鍋先生のご感想をお聞きいただければと」
「ええ、かまいません。そういうお話でしたら、まずは真鍋先生のご感想をお聞きして、それから、山藤さんにもご感想を伺えればと思います」
「そうですか。それでは堀田先生、先に、私の感想、述べさせてください」
かくして真鍋弁護士は、自信の寝台車体験全般について語り始めた。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
先日の寝台車のことも申しますが、その前に、私自身の寝台車の全般的な乗車体験を述べさせていただいて、そのうえで先日の列車のことを述べさせてください。
私の故郷は香川県でして、今でこそ高松で弁護士をやっておりますが、戦前と戦後の一時期まで、裁判官をやっておりました。戦時中は一時陸軍で法務官もやっておりまして、こちらの山藤さんとは、姫路の連隊で知合いになりました。
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