第3話 話は、今晩の飲み会でやろう。

「そういう食堂も、悪くはなさそうですね」


 オシ16という食堂車があって、それがどんな車両なのかを兼ねて藤木氏に聞かされていた堀田氏であるが、実際に知人が乗車されたとなると、いささか思うところあっての感想を述べざるを得ない気分。


「ああ。今回は日曜の夜で繁忙期でもないからさほど混雑していなかったが、行きの食堂車で相席になった国鉄の人の話によれば、そのビュフェとやらは食堂車以上に、寝る前の酒一杯でくつろぎたい人と、酒のあるなしにかかわらず食事をとりたい人との間で、深夜に至るまで口論とまでは言わんが、ひと悶着あることもちょくちょくあるらしい。幸い、私が行ったときはそんな光景に出会わず済んだが」

「そのビュフェですけど、行きの食堂車に比べて、どうでした?」

 行きと帰りの食堂車の車種どころかその設備と提供料理などにも差があることは明らか。堀田氏は、さらに興味をもって山藤氏に尋ねかける。

 山藤氏の答えは、おおむね予想通りではあった。

「まあなぁ、味ならやっぱり、行きの食堂車のほうが断然よかったかな。帰りはせいぜいうなぎ飯を食べながらビールを幾分飲んだ程度で終らせたけどな、味の方、なんか簡単に調理して軽く出されたような感じが拭えなかったかなと」

 要するに、行きの食堂車のほうが本格的なものであったという趣旨であろう。


「何だか、行きと帰りで時代の違いを一気に感じられたようですね」

「そういうものじゃ。折角であるから、堀田君も今晩居酒屋で一杯飲まんかな。その時にお話しよう。そうそう、高松の真鍋さんが今日はちょうど帰りの駄賃で岡山の法廷に来ることになっておるらしい。あと、国鉄官僚の若い人も来られる。夕方には時間ができるから、一緒に飲むことになっておる。ぜひ、いらっしゃいな」

「それは是非、伺わせていただきます。どうせ明日は祭日ですからね」


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 かくして、この日の夕方、岡山駅前にある彼らの行きつけの居酒屋で一杯飲みながら話をすることと相なった。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


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