むき出しのプライバシー

第86話 むき出しのプライバシー 0

 2023年8月20日・日曜の未明。

 森川氏は、予定通りやって来た。


「さて、貴君は今日、岡山臨港鉄道廃線跡を自転車で廻られる予定ですな」

「はい」

「それなら、2日ほど論戦を延期しませんか?」

「ありがたいです。2日あれば、さらに思考もまとまりましょう」

「しっかり動かれれば、頭も回り出そうものかな」

「そういうことで、御理解を」

「それから、このところなんか正面切った話ばかりじゃな、それも疲れの原因ではないかと、私は思うのですが」

「それもそうですね」

「ならば、少し話を変えていこうではありませんか」

「望むところです」

「では、こういうテーマでどうじゃ。むき出しのプライバシー」

「何ですかいきなり?」

「貴君が論ずるにはぴったりのテーマではないか。養護施設という場所における、子どもら、それに職員らのプライバシーというか、私的生活の余地についてじゃ」

「そうですね、それなら確かに、思うところは多々ございまっせ」

「妙に、語尾で変なやる気を出されたな?」

「あ、ばれましたか(苦笑)」

「そんなもん、年の功なんかなくてもわかるわ(苦笑)」


 かくして、本論議は2日後の8月22日未明に延期された。

 加えて、養護施設という場所における子ども同士の距離感と、子どもと職員の間の距離感というものが、論戦の主題となることとなった。

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