物事の二面性
第67話 権利義務関係の複式性へ 1
2023年7月23日・日曜日の未明。
米河邸にて。
「森川さん、おはようございます」
「ああ、おはようございます。しかし米河君、ちょっと頻尿が過ぎるようじゃな。自重自愛せねばならんでしょうが・・・」
「そうですね。それでも、何とかよく眠れてはおります」
「それはいいとしてもじゃが、気をつけなさいよ」
「は、はい。さすがに、ちょっと気をつけねばと」
「さて、今日は貴君もお忙しそうであるから、明日に改めてのこととしたいが、それに先立ち、少し争点を整理しておこうではありませんか」
「はい。私もそれをお願いしたいです」
ここで話を切出したのは、森川氏のほうだった。
・・・・・・・ ・・・・・ ・
さて、貴君は先週延べ5日にもわたって社会性と人間性の複式性を論じられた。
それはそれで大いに興味深いものであり、さらに論を進めていく必要もあろう。
それに先立ち、私も補足的に述べたいことがある。
権利義務関係
権利と義務。
これは、どんなものにおいても両面性があるでしょうが。義務を免れるとか、場合によっては権利を一切認めないとか、そういう事例もあるにはあるが、基本は、この両者もまた、単式ではなく複式の要素がたがいにありはしませんですかな?
貴君は大宮さん、親父さんのほうな、君が若いころ、司法試験の教養選択の会計学の教材を読まれた折、大宮さんにその本のことで、こんなことを述べていたろう。
その問題となった記述は、ずばりこれですな。
「(会計学においては)権利や義務の発想は、なじまない。」
そういう議論が主体となる法律の試験で問われる事例というのは、どうしてもその発想、対立構造じゃな、そればかりに意識が向いていると、物事の二面性というものに往々にして気づかなくなってしまう。
現に君はそのころ、簿記もかじる程度学ばれたようじゃが、あまりの感覚の違いに唖然とされたようですな。
それは、わからんこともない。
ではあるが、よく考えてごらんなさい。
権利と義務、債権と債務、原告と被告、検察官と弁護人。
こういう対立関係においてもまた、複式性が成立していやすまいか。
せっかく貴君に置かれては社会性と人間性における複式性に気づかれたのであるから、そのあたりも十二分に意識されながら、明日からの論争に臨んでいただきたいと思っております。
異議は、おありですか?
~ 特にはありません。全面的に同意します。~と、米河氏。
では、本日はどうぞゆっくりされるなり、仕事されるなり。
プリキュアは君にとっては仕事のようであるから、しっかり業務に邁進されよ。
ともあれ、明日までにお互い論点を再度整理し、論争を継続いたしましょう。
・・・・・・・ ・・・・・ ・
この日は、簡単な打合せのみで終わった。
いうなら野球の打席上で打者がタイムをかけるようなものであるが、これで仕切り直しの上、明日からの論争が展開されることに。
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