第4話 情勢の変化に気づかぬ者たち

 森川氏は、教育勅語に連なる私見を述べ始めた。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 米河さん、あなたが教育勅語をどのように思われようとかまわないが、私自身としては、この教育勅語というテキストを盲目的に覚えて軍隊にでも入って、さア中国でも韓国でもアメリカでもロシアでもよいが、他国に攻め入って占領して日本の旗を立てまくれなどと申しておるのでは、決してない。

 もちろん外に向けてだけでなく、中に対してもそれは同じであり、むやみに人の自由や尊厳を蹂躙することもいとわず気に入らない者を問答無用で黙らせればよいなどと言っておるのでもない。

 親とは言えぬ行為を行う生物的に親だけのものを、親だからと言って反射的とはいえ利益を与える必要も、一切ない。


 あなたのかねての持論ともつながるが、右も左も、そこがなっておらん!

 まあしかし、そういうアホどもな、あなたの言うところの。そんなのを相手にして罵倒しても仕方ないでしょうが。


 さて、わしは教育勅語の精神というのは、ひとえに、自と他の関係性を極限まで良好に維持・発展させていくためのひとつの道標であると、かく考えておる。

 これが侵略戦争を引起こした元凶であると述べる者も左巻きに多いようであるが、自分の生きている世界を守るためにいざとなったら自らやらねばならぬことをやらねばならぬのは、当然のことではないか。

 それを国家がどうこうとなるとやれ戦争ということになるのだろうが、誰も戦争なんかやりたいと思う人はおらんわ。

 では、そんな侵略はよくないのヘチマのと述べる左巻きの者らの考えでは、そんなことをするのではなくやれ話し合いの外交のと、御大層なことをひたすらわめいておるようだが、肝心の彼らの考えや動きというのは、テメエらの仲間内だけで通じるのはええとしても、それを広めて皆に押し付けてテメエらだけはええ思いをしようというレベルのアホどもが、実に多すぎる。

 具体的にどことは言わんが、今、そんな調子で党勢を失いつつあるところがおるでしょうがな。


 まあ、これについては、わしなんかが生きておる時には想像もつかん方向に変化しておるようじゃのう。ここまで若い層に相手にされなくなってしかも高齢化が進んでおるとか何とか。あの手の左巻きは、若い者のなまじ賢い者が目を向けるものかと思っておったら、今どきは何じゃ、年寄りの巣窟みたいな扱いではないか。

 それも、洒落にすらなっておらん。


 ではここで、政治から離れてひとつ別の現象も指摘致そう。

 昔は、少女向けの漫画というか、それをもとにしたアニメーションなど、ええ年の大人のしかも男性が見るようなものというイメージはなかった。

 それがどうじゃ?

 わしが見聞きする限りでも、セーラームーンあたりに始まって、いろいろあるようであるが、さらに今どきでは、プリキュアかいな。それが20年にもわたって継続してアニメ化されていて、テレビのリアルタイムだけでなく、ネットでも見られるようになっているとはな。それをまた何か、50代のいい歳の男が張り切って観るとか、明治生まれのわしには、考えもつかんわ。

 まあ、別に米河君のことを揶揄しておるのではない。

 心配しなさんな。日曜の朝に邪魔に来たりは、せんから(両者爆笑)。


 その現象をあえて指摘したのは、教育勅語というものを否定どころか敵の巣窟の経典かのように扱ってきた者たちのズバリ今の現状と一緒で、かつての現象とは逆の状況を引起こしている物事を、例をもって示すためである。

 先に述べたアニメのおじさんらは自分たちがどんな位置取りかを理解しておるようであるから問題ない。よそ見するなよ、米河君もそのお一人じゃ(失笑)。


 その一方で、左巻きの、目先の過去を全否定してかかってきたような者たちは、そのような理解ができておらぬまま今を生きておることに、わしは呆れておる。

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