第14話 ソド村とゴ村【1】

 僕が出来る事……考えながら歩いています。


 コムラ達の歩む速度が上がり、僕達と殆ど変わらない速度で着いて来てる。

 コムラさんって呼ぶと「アラン様は吸血鬼ハンターの党首、配下の自分達は呼び捨てでお願いします」って言われました。

 僕は全然強く無いし偉くも無いのに、対応に困ります。


 空車は勿体無いので、ゴーレム車には交代で乗る事にしました。

 次の村までモンジイとフデさんスエさん、タキさんが乗っています。

 ゴーレム車は運転しないでカンミの命令で動いてます。


 対応に困ると言えば、皇室でも兄や姉達ギラギラギスギスして恐かった、末っ子の僕が兄達を呼び捨てなんてとんでも無い、下手をすると殺される気がして、カンミと目立たない様に息を潜める暮らしでした。


 だからうやまわれるのも、大勢でにぎやかに過ごすのも馴染めません。


 僕達は廃村になったコム村から海岸沿いに東に向かって居ますが、この先には何があるのでしょう。

「え~とムトでしたっけ」

「はい、ムトです!アラン様!」

 5人の男性の内一番長身の人です。

「この先には何が有るの?」

「新開拓村ゴ村があり、その先には開拓村ソド村が有ります。ソド村がビオラ様の生まれ故郷と聞いてます」

「そう、なの?」

 いつそんな僕の知らない事聞いたんだろ?

「生まれ故郷と言っても、ご両親は亡くなられて、村の為に村長に売られたそうです」


「ビオラってそんな理由で売られた?ソド村の村長許せんな!」


「アラン様、ゴ村です」

 コムラが指差した方向に、村らしき物が見えました。

 林を切り開き、残りの木は防風林に利用された20建程の家が見えて居ます。

「何か無防備な村だな」


「ここからは気を付けて下さい!ゴ村はバンパイアに定期的に人的貢ぎ物をして、安全を買っています」

 コムラは元村長だけある、事情に詳しいね。

 近付くと不愉快な思いをします、素通りしましょう。

 こんな状況で無事素通り出来た試しが有りません。


 僕はひ弱なバンパイアだけど、トラブル体質じゃ無い…はず、誰だ?トラブル引き寄せてるのは、カンミ?違うカンミは危険を避ける方だ、ビオラか?引き寄せ体質は。


「私はゴ村の村長ゴンと申します、旅人の皆様何も無い村では御座いますが、旅の疲れが取れるよう歓迎させて頂きます、です」

(怪し過ぎる愛想笑い)

⦅アラン様!滅ぼしますか?ソドムとゴモラは滅ぼされる運命!⦆

⦅ビオラそれは何の話だ?指示するから待って⦆

⦅はい!アラン様!⦆



 新鮮で豊富な海の幸は僕達には珍しく満足の行く宴でした。

 ゴ村の村人は女子供入れて50人程、全員が何を期待して居るのかギラ着いた目を僕らに向けてる。

 給事の女性が小声で「お水飲まない様に、薬が仕込まれています」と教えてくれました。

「貴女は?」

「パンジ、ビオラちゃんの友達です、村長達の悪巧み聞いて、お伝えに来ました」

 ビオラを見ると、僕に頷いてる。


 胡散臭いゴ村にも、まともな人が居ました。


「おい!!薬が効いて居らん、間違えてないか?」

「全員の水に牛でも即昏睡する量を入れて居ります…間も無く効くと思います」

「早くせんと、ズレ様の使いが来られる」




「村長!貢ぎ物を受け取りに来た!ズレ様は3名ご所望だ」

「何だ?ハンス、偉そうに!」

 村長の取り巻きが、ズレの使いに詰め寄ってる。

 ハンスと呼ばれたゾンビ級が手を振ると、取り巻き男が吹き飛んでいました。

「一人はこの男か?」

「いえいえ!ハンス様!あちらに座って居る者を、ご自由にお選び下され!」

(旅人を上手く取り込んだ?姉ちゃん今回も貢ぎ物にされずに済んで良かった)

 ハンスは以前貢ぎ物にされた、パンジの弟です。

 ゾンビ級バンパイアにされても、姉に対する思いで人の心を持ち続けている珍しい存在です。

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