第9話 人の村に着いた

「アラン様の剣は力任せに扱っても折れない頑丈な作りですが、刃筋を整え真っ直ぐ振ると威力が増し剣の傷みも少なくなります」

「以前教えて貰った構えで良い?」

「そうです、そのまま振り上げて、振り下ろす。この素振りを繰り返して下さい!」

(剣道でも【初段は素振り1年】と言われる様に、正確な素振りを真剣に1年続けると初段の実力が付くとされて居ます)


 夜が明けるまで素振りを続けると、流石に疲れました。

 少し横になって休んで居てヒラメキました。

「僕は血を見て卒倒する、卒倒は寝る事と同じだ!あれを応用すれば僕も眠る事が出来る!!」

 血を出せば即眠れるが、寝る前に腕とか切る?毎回切るのは面倒だし血で汚れる、もっと簡単な方法は…


「朝御飯出来ました」

 良い考えが浮かびそうだったのに「ビオラありがとう!食べよう」

 朝食は固いパンをスープで煮込んだ、パンがゆでした。

「これ食べ易い」

「料理をおめ下さってありがとうございます、嬉しいです」


 乏しい食材を工夫して作るビオラの料理は、毎回美味しくて大満足です。

 食後ビオラが片付けしてる間に、僕とカンミは森に入って獲物を探して居ます。

「アラン様、獣の気配や魔物の魔力感じますか?」

「ん?……感じない、どうやれば良い?」

「探そうとする意識を広範囲に広げます…この先に兎の魔物アルミラージュが居ます」

「アルミラージュって?」

「大きな兎です、獣と違いバカで戦闘的な魔物は逃げずに襲って来ます、剣を抜いて構えて着いて来て下さい」


 僕はカンミの後を着いて行きました。

 10分程歩くと屋根無し3輪ゴーレム車位大きい兎がいました。

(こんな遠くの魔物を感知するカンミはヤッパ凄いな)

 カンミが言ってた通り、アルミラージュが向かってきました。

「剣を振り上げ…振り下ろす!」

 カンミの号令の通り剣を振り下ろすと、アルミラージュの頭を真っ二つにし胸の辺りまで切り裂いていました。

「アラン様!お見事!!」


 言われた通りに剣を振っただけ、褒め方が大袈裟だよ。

 でも、気分が良い!

「巨大兎アルミラージュって食べられるの?」

「美味しいですよ、宮殿料理にもシチューに入ってました」

 巨大兎はカンミが片手で引きずって帰って居ます。

「持つの代わろうか?」

「この程度全く問題有りません、お構い無く」


 カンミは巨大兎を川まで引きずり、水に浸けてる。

「肉は血抜きして、こうやって冷すと美味しくなります」

 実地訓練勉強になります。


 巨大兎の解体はビオラが見る間に毛皮と肉、骨に分け解体終了です。

「ビオラ凄いね!」

「アラン様が眷族にして下さったので、力が涌き出て大物でしたが楽々解体出来ました」


 川の水をタンクに汲んで、野営地を後に更に街道を南下海岸を目指します。

 車の後ろにはビオラ作の干し肉が吊るされ、ぷらぷら揺れてる。


「ここからコズラ侯爵領です」

 3日目の昼カンミの説明が入ります。

「コズラ侯爵って言えば、ルール無用の荒くれ者って聞いたけど通行問題無い?」

「問題が起これば蹴散らせば良いですが、接触しない方が無難です」

「他の道を行けば?」

「広大なコズラ侯爵領を抜ける最短の道がこの街道です、私達は問題有りませんがバンパイアは流れる水を恐れます、2日の距離に海岸が有りそこに人が住む漁村が有ります」

「案外人の村って近くに有ったんだ」

「安全な海岸沿いに人間の集落が集中してます」


 街道が急に悪路に変わり、1日行くと海岸が見えてきました。

 漂う匂いは臭く感じました。

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