第7話 バンパイア皇国を離れ旅に

 衛兵が即扉を全開しました。

(気持ちの整理が出来て無いよ)

 エンター侯爵は執務中の様で、札の様な物に何かを書き込んで居ます。

 重鎮でしょうか10人程が書類を持って執務机の前に並んでます。


 エンター侯爵が顔を上げこっちを睨んでる。

(あの眼光ビビル)

「カンミ!これを持って行け」

 何か書き込んだ札をカンミに差し出して居ます。

 カンミは受け取り「有り難う御座います!お父様」と言ってる。


 見せてくれた札にはエンター侯爵の紋章👊が押され、こう書かれていました。

【一行に害なす者、総力で討ち滅ぼす!!エンター侯爵】

 並ぶ者の居ない武闘派集団、エンター侯爵の目立つ紋章入りです、ある意味皇帝の紋章より効果が有る、バンパイアが統治する所全てを自由に行き来出来る、天下御免の通行手形でした。

「アラン様!お健やかに暮らして下され!!不出来な娘ですが宜しくお願いします」

「はっ?はい」

「いつの日か良い国をアラン様が建国されたなら、エンター一族を住まわせて下され!」


 何を言われて居るのか理解出来ない、エンター侯爵の回りには侯爵領の重鎮らしき面々が立ち並んで居ます。

 エンター侯爵の、取りように寄れば謀反とも取れる言動を、誰もいさめる者が居ない、追放皇子の僕に何を期待してる?何を思っての言動?…エンター侯爵はカンミを一度抱き締め別れは済んだようです。


 エンター侯爵以下その場の全員が、僕に対し深々とお辞儀してくれてる。

「アラン様、行きましょう!」

 対応に困ってる僕に、カンミが声を掛けて促します。

(このまま帰って良いのだろうか?)

 お辞儀を続けているエンター侯爵をいちべつし、無言は失礼過ぎると思い。

「お心使いありがとうございました……」

 主語も実語も無い、漠然としたお礼を言い僕達は執務室を出ました。



 除籍追放の僕が侯爵領に長居をしては迷惑を掛けます。

 ゴーレム車に乗り込み宮殿から遠ざかって、街道を南下して行きます。

「アラン様、申し訳有りません!シラノの暴挙は父が煽った結果だそうです、瞬時に倒されたアラン様を認めた事が手形と見送りでした」

「シラノ隊長との事、エンター侯爵知ってたの?随分報告が速いね!」

「お父様は、結果の如何いかんで態度を決めるつもりでアラン様をシラノ隊長と闘わせました」

「成る程やっと意味が分かった、武闘派だもんねエンター侯爵、腑抜けた者に娘の同行は許さんって事か、お眼鏡に叶ったと思って良いのかな?」


「アラン様を主と敬う見送りでした」

「僕を主?主君は皇帝でしょ!」

「エンター侯爵領は、父を始め重鎮達も武を極めた最強の武闘派集団です、その父が皇帝陛下よりアラン様の方が強いとみて居ます」

「いやいや、それは無い!」

「現時点皇帝陛下より父の方が強いです、その父がアラン様に挑めば敗北すると気付いています」

「買い被りだよ…」

「アラン様はもっと自信を持った方が良いですよ」


「瞳を赤く輝かせ本気モードのアラン様は、とっても素敵でした」

「ビオラ?」

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