第6話 避けては通れない事

「アラン様、無礼なシラノに厳罰を!!」

「カンミ、シラノはお前を慕って居る様だ、説得出来ないか?」

「皇族を除籍され追放された貴様が、カンミ様を呼び捨てにするな!ぶっ殺す!!」

「御主人様!私がこの無礼者を捻り殺します」

「ビオラ、アラン様はやる気になられた!見て居れ」


「そうですね、チンピラバンパイア風情にエンペラーバンパイアの僕が貴様呼びで侮られたまま放置したなら、この先厄介事が続きます、エンター騎士の隊長がどの程度か見てあげる掛かって来なさい」


「ビオラ、アラン様の目をご覧!」

「赤く輝いてます?」

「滅多に見せない、アラン様の本気モードです」


 アランの見え見えの挑発に、追放皇子を侮りバカにしていたシラノは騎士剣を抜き、斬り殺さんと尋常で無い凄まじい勢いで迫った。


 騎士団の多くは、追放皇子の首が斬り落とされる所が見えたようだった。

 ところが誰もが予想しなかった出来事が起こった。

 シラノの剣撃は目に止まらない縮地だったが、アランに届く寸前シラノはバタリと倒れ動かなくなった。


「追放されようが除籍されようが、僕がエンペラーバンパイアでなくなった訳では無い!命は取っていない、安心して眠れ!!

 さて、不甲斐ない隊長の代わりに僕を倒せる者が居るか?

 我こそと思う者!掛かって来なさい!!」


 アラン様は赤く輝く瞳のまま、騎士達を睨んでいました。

「御主人様って凄い!何をされたか私には見えませんでした」

「ビオラも私と同じ立場、御主人様でなくこれからはアラン様と呼びなさい。

 それからビオラは、もう少し能力の使い方を学びなさい、私もビオラもアラン様と殆ど同じ能力になって居ます」

「カンミ様にアラン様と私が同じ能力ですか?」

「使い方を覚えたなら、ビオラは上級バンパイアごときには負けません!エンペラーバンパイアの力を授かったのですから当然です!」


 何が起こったのか訳が分からない騎士達は、シラノ隊長が倒れた事実、エンペラーバンパイアの得体の知れない不気味な力を恐れ成りを潜めていました。

「相手が居ないなら、ここに居る必要が御座いません、アラン様行きましょう」


 無言で見送る騎士達を残し、ゴーレム車に乗り今度こそ宮殿に向かっています。

「流石侯爵の宮殿だね、きらびやかな華やかさは無いが見事な宮殿だ」

 エンター侯爵家は代々質実剛健を誇る武闘一族と聞いて居ます。

 実は僕、カンミの父親エンター侯爵に会うの気後れしてます。

「アラン様?どうかされました?立ち止まられて」

「エンター侯爵に会わないとダメかな?親娘おやこの別れに、僕達邪魔にならない?」


「アラン様今更?父が無礼な態度なら遠慮無く厳罰を与えて下さい」

「いやいや、天下無双のエンター侯爵に厳罰?返り討ちされるよ!!」

「今のアラン様なら、父にも勝てます!自信を持って!!」

「……自信無いです」

 エンター侯爵が待つ部屋の前に到着してしまいました。


 扉を守る衛兵がカンミに敬礼して居ます。

(入るしか無いか)

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