第十七話、友情にゃ

「……なるほど?形勢逆転という奴か。なら、素直に撤退てったいさせてもらおう」

 そう言って、盗賊の頭は懐から煙幕えんまくの玉を取り出した。どうやら、再びげるつもりのようだ。

 だが、そんな盗賊の頭を素直に逃がすつもりはないようでカルロは神剣を構えて盗賊の頭をにらみ付ける。

「逃がすと思うか?俺の友達を散々痛めつけたんだ。そのツケをはらってもらう」

「逃げるさ。この俺が何の用意よういもせず此処にると思うか?」

 瞬間、盗賊の一人がカルロにけて取り出した玉をげた。カルロはそれを神剣で切り払う。だが、その瞬間その玉は切り払った瞬間にまばゆいばかりの閃光を発して周囲一帯をおおった。

 どうやら、目くらましのようだ。その閃光をまともに食らったカルロはうめくような声を上げた。僕も、その閃光に目をやられてしばらく目がくらんでいた。

 やがて、ようやく目がれてきた頃。其処には盗賊とうぞくの姿が一人も居なかった。前回のように盗賊全員を引き連れてげたようだ。こんな物まで用意している辺り、かなあり用意周到な盗賊らしい。

 ……いや、用意周到過ぎる。

「……逃げられた、か。ダム、大丈夫か?」

「うにゃ、大丈夫にゃ。それより、どうして此処ここに?」

「アリサとミーナに言われてな。どうやら二人には俺の内心ないしんを見抜かれていたようで少しばかりおこられたよ」

「……にゃ?カルロの内心?」

「ああ、やっぱり俺にはダムを見捨みすてるなんて事は出来ないよ。お前は俺達にとって掛け替えのない友達だからな。友達が友達をたすけるのに理由なんて要らないさ」

「……うにゃ。そうか、にゃ」

「ああ、そうだ」

 そう言って、カルロは僕をきかかえた。丁度、人間が子猫を抱きかかえるような感じの抱え方だ。

「うにゃ?何をするにゃ……」

「ダムはさっきまで単身盗賊達を相手にしていただろう?だったらかなり疲弊ひへいしている筈だ。今はゆっくりやすんでおけ」

「……う、うにゃ」

 しかし、こうしていいとしした野郎が男に抱えられるのも精神的にキツイ物があると僕は思う。だけど、カルロの言う事も最もなのでそれを否定ひていする事も出来ない。僕は黙り込んで大人しく抱えられる。

 ううむ、これはかなり気恥きはずかしい?

 ……けど。

「カルロ」

「……何だ?」

「ごめんにゃ」

「だったら、今度からこんな無茶むちゃはしないでくれ。俺だって友達をこんな形で失いたくはないからな」

「……うにゃ、ごめんなさいにゃ」

 謝る僕を、カルロは黙ったままはこんでいった。何も言わなかったけど、その顔には薄っすらとみが浮かんでいた。

 その笑顔は、何処か暖かくて。やさしかった。

 そんな、カルロに僕は心の中で礼を言う。

 ———カルロ、僕の友達ともだちで居てくれてありがとう。

 今は、カルロ達の友情が素直にうれしかった。とても、嬉しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る