第十五話、ミーナ視点

 兄さんと王女様が外でき合っていた。その姿を見た瞬間、私は何故か胸の奥が痛んだ気がした。どうして?からないけど、兄さんと王女様がしあわせそうに抱き合っている姿を見ると、何故か胸の奥がいたむ。

 胸の奥が、痛くて痛くてきそうになる。

「兄さん……」

「にゃ、ミーナはカルロの事がきなのかにゃ?」

 気付けば、すぐとなりにダムが居た。ダムは私の顔をじっと見上げている。どうやら私の胸の痛みをさっしたらしい。

 私、そんなに分かりやすい表情かおをしていたのだろうか?

 しかし、私が兄さんの事を好き?私が?兄さんの事を?

「どう、して……」

「だって、ミーナがカルロと王女様の様子を見ている時の表情はとてもつらそうだったからにゃ。別段其処まで大した推理すいりでもないにゃ」

「……そう。私、其処そこまで分かりやすかったんだ」

「うにゃ、それでミーナはカルロの事が好きなのかにゃ?」

 言われて、かんがえてみる。

 確かに、思えば私は何時も兄さんの背中せなかばかりを追いかけていた気がする。何時も何時も兄さんばかりを見ていた。きっと、兄さんは私の理想りそうそのものだったのだろうと思うから。ずっと、兄さんだけを見ていたから。

 確かに、私は兄さんの事を……

「私は、兄さんの事が大好だいすきだった。兄さんしか見えていなかったんだと思う」

「うにゃ、カルロもつみな男にゃ」

「ふふっ、そうかも知れないわね」

「でも、きっとミーナの不安も杞憂きゆうだと思うにゃ」

「……そう、かな?」

 そうなのかな?分からないけど、きっとダムには何か私に見えていない何かが見えているのだろう。だからだろうか?私は、ダムの話に耳をかたむける気になった。

 ダムの目をじっと見詰め、私はダムの話をつ。

「うにゃ、カルロは確かに王女様が好きなようにゃ。それは間違まちがいないにゃ」

「……うん」

 その言葉で、胸の奥がいたくなる。

 やっぱり、私は兄さんの事が大好きなのだろう。だから、こんなに胸が痛むのだろうと思うから。

「でも、同時にカルロにとってミーナはこのにたった一人きりの妹にゃ。かけがえのない存在にゃ。だから、カルロはミーナを大事だいじにしているにゃ」

「私が、かけがえのない存在……?」

「うにゃ」

 その言葉で、私の心が幾分かやわらいだような気がした。ああ、きっとダムはずっと私達兄妹の事を見ていたのだろう。だから、こうして私達の事を分かってくれているのだろうと思う。

 私は、兄さんの事が大好きだ。兄妹としてではなく、きっと一人の男として兄さんの事をあいしてしまったんだと思う。

 けど、兄さんが好きなのは私ではない。だからこそ、私は胸の奥がいたむのだろうと思うから。きっと、私の願いはかなわない。

 でも、きっとそれでいのだろう。私が兄さんをあいしているように兄さんだって私の事を大切に思ってくれている。かけがえのない存在ゆいいつとして見てくれている。

 だったら、今はそれで良いのだろう。

「ダム、ありがとう」

「うにゃ、もしまた不安ふあんになるようならいっそカルロに直接聞けば良いにゃ」

「ふふっ、分かったわ。でも、きっとその時が来たら私は我慢がかなくなる気がするから。きっと、兄さんの事をおそっちゃうかも知れないわね」

「うにゃ、それは大変たいへんにゃ」

 私とダムは、互いに笑い合う。

 今夜は満月がとても綺麗きれいだった……

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