第十二話、覚悟を決めるにゃ

 しばらくして、ようやくカルロも落ち着いてきたのか。何とか王女様からくわしい話を聞く事になった。此処まで、大体一時間半くらいだっただろうか?

 体感的たいかんてきにはもっと時間がかっていた気もするけど。

「えっと、つまりどういう事だ?王女様もすべてを話すつもりがあるから此処に来たんだろう?」

「アリサ」

「……えっと?」

「アリサとんで下さい。私も、これからは貴方あなたの事をカルロと呼びますので」

「…………ア、アリサ?えっと結局けっきょくどういう事なんだ?」

 カルロのミーナの視線がき刺さる。どうやら、この短時間でかなり距離が縮まっている事にいぶかしんでいるらしい。

 そんなミーナの視線しせんに、カルロはかなりや汗をかいている。

「ミーナ、王女様とカルロにも色々とあるにゃ。其処はさっしてやるにゃ」

「……そう言えば、ダムも兄さんと一緒にたのよね?王女様を助けに行った時に一体何があったの?たすけられたっていうだけじゃ説明せつめいが付かないわよ?」

「……あー、うん。まあ色々いろいろとあったにゃ。其処は流石さすがに直接的に表現するのもはばかられるにゃ」

「…………つまり、直接的にう事もはばかられるような事があったと?」

「……あー、うん。ギリギリはなせるラインで話せば、カルロが助けないと王女様は本格的に女性としての尊厳そんげんが危なかったにゃ」

「……………………」

 それでようやくさっしたらしいミーナは顔を蒼褪あおざめさせた。うん、僕も全てを見ていた訳じゃなかったけど。見ていたかぎりで言えば王女様は盗賊の一人に組み伏せられて貞操が危なかった。

 カルロがたすけなければ、本当に王女様は尊厳ごとみにじられて泥にまみれる事になっていただろう。

 其処そこはやっぱりカルロのファインプレーだと思う。まあ、その代わりにカルロは王女様の好意こういを一身に受ける事になったけれど。

 そして、当の王女様は表情を引き締め直すと一つ咳払せきばらいをして言った。

「……私が説明するのはかまいません。しかし、カルロ。貴方がこの話を聞けばきっと二度と後戻りは出来ないでしょう。貴方の父親がのぞんだ事は、カルロの父の想いは叶わなくなる」

「……………………分かっている。覚悟かくごは決めている」

 少し長い沈黙ちんもくの後、カルロは断言だんげんした。そう、カルロは覚悟を決めている。

 僕もだ。僕も、覚悟を決めるべきだ。

 そんなカルロの覚悟に、王女様は少しだけ微笑ほほえんで言った。

「分かりました。なら、私も覚悟を決めて言いましょう。全ての真実しんじつを。そして全ての裏で暗躍している黒幕くろまくの話を」

 そう言って、王女様は話し始めた。この世界のすべてを、世界そのものを手中に収めんと裏から暗躍する黒幕の話を。

 そして、王女様の想いのたけを。全てを話し始めた……

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