第十話、はい?

 国王から謝礼しゃれいという名の褒美の品を貰い、僕達は家にかえる事になった。

 その道中、僕はカルロにい掛ける。

「カルロ、本当にいのかにゃ?」

「……何がだ?」

「王女様、たぶんこれからもねらわれ続ける事になると思うにゃ。たぶん、カルロだって狙われると思うにゃ」

「……ああ、そうだな」

 カルロはおそらく分かっていると思う。そして、かっているからこそ判断出来ずにいるのだろう。当の僕も、実際じっさいの所どうすれば良いのか分からないくらいだ。だからこれはあくまでカルロにい掛けているに過ぎない。

 あくまで、決断けつだんするのはカルロだから。

「あんな話をいて、カルロはどう思っているにゃ?これから、カルロはどうするつもりにゃ?」

「……分からねえよ、そんな事」

 やはり、カルロはげやりに答えた。父親の真意しんいに気付き、そしてその想いに触れた結果どうすれば良いのか分からなくなっているのだろう。

 女神の加護を受けた勇者ゆうしゃとして、戦うのも確かにわるくはないだろう。けど、それを父親はのぞんでいなかった。そもそも、そんな事を望んでいなかったからこそ父親は自ら息子達と身を隠す事をえらんだのだから。

 カルロとしては、どうすれば良いのか分からないのが本音ほんねだろう。

 ……だけど。

「それでも、きっと決断するのはカルロの役目にゃ。カルロの人生じんせいはカルロが決めるべきだと僕は思うのにゃ。もちろん、カルロが望むなら僕だって協力するにゃ」

「……ダム」

「カルロ、こんな僕だけどカルロの役に立ちたいと思っているにゃ。命をすくって貰った恩も返したいと思っているし。それがくても僕自身カルロの役に立ちたいとそう考える筈にゃ」

 そう言った僕に、カルロは苦笑混じりにき出した。

 どうやら、幾分か気がまぎれたらしい。まあ、本音だけども。

「筈って、其処そこは確信がある訳じゃないんだな?」

「僕だって、別にすべて理解している訳じゃないにゃ。でも、それでも僕は僕でしかないと思っているにゃ。だからきっと、確信がなくてもこれはたっているにゃ」

「ああ、そうかよ」

 結局、カルロは僕の問いにこたえなかった。けど、きっとカルロは既に答えを得ているのだと思う。既に、カルロの表情にまよいは無かった。

 そんなカルロの横顔を見て、僕は僅かにみを浮かべた。

 ……そうして、しばらく歩いてゆきやがてカルロの家が見えてきた。家の前にはカルロの妹、ミーナがっていた。

 だけど、何処か様子がおかしい気がする?何処か、困惑こんわくしているような?

 そんなミーナに、カルロは不審ふしんに思いながら言った。

「ただいま、ミーナ」

「に、にいさん?ついさっき王女様がて……」

「「……はい?」」

 思わず、僕とカルロの声がハモった瞬間しゅんかんだった。え?どういう事にゃ?

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