第九話、追放の真相

ろ。陛下へいかから話があるそうだ」

 そう言って、僕とカルロはようやく尋問じんもんから解放された。かなりキツイ尋問だったので僕もカルロもかなり疲弊ひへいしている。

 この世界はどうやら技術的ぎじゅつてきにかなりあやふやらしい。技術的にかなり発達している面もあれば、中世ヨーロッパにもおとる部分もある。尋問の方法を取っても、かなり前時代的で流石の僕も騎士道精神をうたがった。

 だが、そんな僕達もようやく尋問から解放かいほうされた。尋問をけていた一日だけでかなり疲弊させられたとおもう。

 だが、どうやらまだわりではないらしい。国王陛下から直接話があるというけど一体何の話だろうか?まさか、国王直々に詰問きつもんされるというのか?

 分からないけど、安易あんいに考えるのはした方が良いだろう。

 ……そして、僕とカルロは国王の前にれ出された。

 国王は玉座に泰然たいぜんと座している。かなりの威風いふうに包まれていた。

「私が、アロルド=グラン=アリシエル。アリシエル王国国王である。貴殿がガルシア卿の息子、カルロに相違そういないな?」

「……はい。俺がガルシアの息子、カルロです」

「……何か、私にく事があるか?」

「……………………」

「どうした?好きに聞いて良いと言っておるのだ」

「では、どうして陛下は俺の父を追放ついほうしたのでしょうか?どうして追放されるような事があったのでしょうか?」

「……ふむ、やはり父から聞かされてはいなかったようだな」

「……?」

 国王の言葉に、カルロは微かに怪訝けげんな表情をする。どうやら、本当に何も知らないらしい。当の僕も、この話には興味きょうみがある。

 いや、興味というと趣味が悪いだろう。けど、実際に僕はこの話には何かうらがあるとそう考えていた。だからこそ、この話の真相しんそうというものにはある種の興味を引かれていたのである。

 国王の様子から考えるに、やはり裏があったようだ。

「まず、我々が貴殿の父と貴殿らを追放したというのはある意味間違いだ。まずはそう理解した上で話を聞いて欲しい」

「…………………………」

「貴殿、カルロは生まれた時、女神アリシエルの加護かごを受けて生まれてきた。貴殿も知っているだろうが、それが貴殿の手の甲にも現れるつるぎの紋章だ」

「っ⁉」

「貴殿もっているだろうが、女神アリシエルには対立たいりつする神がいる。それが闇の神であり機械神でもあるグラヌスだ。そのグラヌスが加護を与えた者とアリシエルの加護を受けた貴殿とのいわば代理戦争。それが神々のえらんだ決着方法らしい」

 その言葉に、カルロも流石に絶句ぜっくした。どうやら、カルロは知らない間に神々の争いに巻き込まれていたらしい。それには流石のカルロも予想外だったのだろう。何も言えずに黙り込んでいた。

 だけど、その話に僕は疑問があった。

「……陛下、一つだけよろしいですかにゃ?」

「うむ、よろしい。直言をゆるす」

「どうして、神々は自分達の争いに一介の人間にんげんを巻き込むような方法を選んだのですかにゃ?」

「……やはり、其処は気になるようだな。よろしい、話そう」

 そうして、神々の対立に関する話がはじまった。

「まず、はじまりに二柱の神が人間世界のり方に関して。そして神として人間世界を管理する方法に関して意見いけんの不一致があった。それが全ての始まりだ」

 そして、神々はまずは言論げんろんを以って争うようになった。だが、言論による争いは何時までたっても平行線へいこうせんをたどるばかり。何時まで経とうと全く解決する事も変化する事も一切無かった。

 そして、続いて神々は知力と策謀さくぼうを以って争うようになった。だが、その争いはやがて泥沼の武力ぶりょくによる争いへと発展していき。やがてその武力による争いにより神界は一時火の海と化したという。

 そして、二つの失敗から神々はそれぞれ代理だいりを立ててその二人の争いがどう決着するかによってそれを答えとする事とした。

 だが、その代理戦争もある一つの失敗を以って予想外の方向へ暴走する事となるのだった。

 それこそが、闇の神グラヌスの代理の暴走だった。

 グラヌスの代理は生まれつき人のいとなみを理解出来ず、あいや情動を認識する事すら出来なかったという。そして、そんな彼の事を人はおそれた。まだ幼かった彼を人々は地下深くへと幽閉したのだという。

 そんな彼は、地下深くの牢獄で怨嗟えんさを募らせていった。

 だが、此処でも神々ですら予想外の事態が発生した。地下深くで怨嗟を募らせたグラヌスの代理は、その有り余る怨嗟の念と共に一つの歪んだ快楽かいらくを見出した。

 それこそが、自分自身をこのような目に会わせた人類じんるいを相手にした戦争遊戯。

 この世界をゲーム盤と見立て、人類全てを相手にしたゲームをしたい。そういつしか彼は思うようになったという。

 そして、牢をだっした彼はその怨嗟と快楽を以って世界全土を巻き込む戦争遊戯を始めたという。

 その後の彼の行方は国王ですらつかめず。そして、誰にも自身の尻尾しっぽをつかませないままに彼は今もなお自身のこまを率いて世界を制する為の策を弄している。

 …………と、国王の話は其処で締められた。

「さて、私の知っている限りは其処そこまでだが。話はあるか?」

 国王の問いに、カルロはやがて口を開いた。

「……父が追放された理由わけは。いえ、今まで俺が追放されたと思っていた事の根本的な理由は其処にあるのですか?」

「うむ、神アリシエルの神託しんたくにより神々の代理戦争は破綻はたんした事は我々も知っている話だった。だが、その話の中で一人だけ納得なっとく出来ない者が居た。それが貴殿の父であるガルシア卿だ」

「父さんが?」

「うむ、貴殿の父は神々の代理戦争というものに実の息子が巻き込まれる事を良しと出来なかったのだ。だからこそ、追放という形にして息子ともども身をかくす事にしたというのが事の真相しんそうだな」

「そ、そんな事が……」

「恐らく、息子むすこに真相を話そうとしなかったのは真実を知った貴殿が神の代理である勇者としての使命に目覚めぬようにという配慮はいりょであろうな」

「…………」

「……どうやら、もうきたい事も無いようだな。では、貴殿達には迷惑をかけた詫びとして謝礼を渡すので二人ともかえるがいい」

「一つだけ、良いですか……?」

「……うむ、言ってみるがよい」

「王女様は、アリサ姫は無事ぶじですか?」

「…………ああ、貴殿達の奮闘ふんとうのお陰でな。その件はたすかった。礼を言おう」

 そうして、僕達は王城おうじょうを二人して出たのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る