第六話、引き合わせるにゃ

「……此処ここがカルロ達のんでいる家にゃ」

「ふーん?何だか秘密基地ひみつきちっていう感じでかっこいいわね」

「わくわくしている所悪いけど、そういうのを本人達の前で言うのはめた方が良いと思うにゃ」

 カルロ達の家を見て目をかがやかせている王女様に、僕は忠告ちゅうこくしておいた。実際に秘密基地として住んでいるならともかく、実家じっかとして住んでいる人に対してそれは侮辱にしかならない筈だ。確実に喧嘩けんかになる。

 しかし、その意味を理解出来ていないのか王女様は首をかしげている。まあ、本人からしたらめているつもりなのだから分からないのも無理むりはないだろう。

 まあ、ともかくとして僕がやるべき事はカルロ達と王女様の仲介ちゅうかいをする事。そして王女様とカルロ達が喧嘩にならないよう上手うまく立ち回る事だ。

「まあ、ともかく入るにゃ」

「ええ、そうね。ようやく勇者様とえるのね」

「勇者様?」

 疑問に思いながら僕はドアをノックした。しばらくして、ドアがひらく。

 どうやらドアをけたのはミーナだったようだ。ドアを開けて、僕と一緒に立っていた王女様を見てぽかんと口を開いて呆然ぼうぜんとしている。どうやら、状況を上手く呑み込めず困惑こんわくしているようだ。

 まあ、それも当然そうだろう。いきなり目の前にきらびやかなドレスを身に纏った少女が立っていたらびっくりする以前に呆然とするだろうし。

「えっと、ダム?この人は誰?」

「えっと、この人はどうやらカルロのあの手の甲の紋様もんように詳しいようで。直接教えてくれると言っていたかられてきたにゃ」

「アリシエル王国第一王女、アリサ=グラン=アリシエルよ!」

「……へ?」

 はぁ、せっかく僕が不必要な混乱をける為に敢えて言わなかったのに。どうしてこうこの王女様はわざわざ言うのか。そう思ったが、僕は心の中に何とか留めておいて平静をたもったふりをする。

 だが、どうやらミーナはそうではないようで。かなり頭の中が混乱こんらんしているらしく咄嗟に言葉が出てこないようだった。

 うん、まあ気持ちは理解出来る。

「まあ、混乱こんらんする気持ちは理解できるにゃ。僕もそうにゃ。だけど、こうしてぼうっとしているだけじゃ話にならないからどうか此処はれて欲しいにゃ」

「え?ああ……はい」

「よろしくお願いするわ」

「え?ああ、えっと……はい?」

 うん、いきなり来訪らいほうしてきた王女様相手にこうして何とか応対出来るミーナはやっぱり良い人だと思う。

 ……カルロはおくの部屋に居た。どうやら今日もりをしていたらしく狩ってきたばかりの獣を捌いているようだった。あれは、くまか?

「……帰ってきたか。その人は、客人きゃくじんか?」

「そうにゃ。この人がカルロの紋様を知っているらしいにゃ」

「アリシエル王国第一王女のアリサ=グラン=アリシエルよ」

 ……はぁ、この王女様は。本当ほんとうに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る