第二話、助けてくれてありがとうにゃ

「う、う~ん……?」

 目をますと、其処は何処か簡素かんそな部屋にある木製ベッドの上だった。僕はベッドの上にかされていた。

 と、いうか。此処は何処どこだ?そう思い、見回すがやはり見覚みおぼえのない部屋だ。

 ……えっと、確か僕は空腹の時に野生の猪におそわれて。

「……ああ、そうか。僕は意識をうしなっていたのにゃ」

 思い出した。そうだ、僕は空腹と猪にどつかれたダメージで意識を失ったんだ。

 うむ、何とも格好かっこうが付かない。

 しかし、此処は何処だろうか?やはり、意識を失う前に猪から僕をたすけてくれたあの青年の家か何かだろうか?そう思ったが、確証がられずうんうんと唸りながら首を小さくひねる。

 そんな時、ドアがひらいて一人の少女が入ってきた。

「あれ?目をましたの?」

「うん?誰かにゃ?」

 思わず、問いに問いで返してしまった。これは失礼しつれい

 しかし、少女は欠片も不快げな表情を浮かべずに笑った。どうやら、この少女はかなり人格が出来ているようだ。うん、い人なんだろう。

「失礼。私は貴方を助けた人の妹で、ミーナと言います。貴方の名前なまえは?」

「僕にゃ?僕の名前はダムにゃ」

「ダム。良い名前ね」

 僕とミーナは互いに笑い合う。少しだけ、空気がやわらいだ気がした。

 そんな中、僕を助けてくれた青年がひょっこりと部屋へ入ってきた。

「うん?目をましたか。よく眠っていたから少し心配しんぱいしていたんだが」

「うにゃ?そんなにねむっていたのかにゃ?」

「ああ、軽く一日半くらいは眠っていたぞ?」

 そんなに!すぎだろう、僕よ。

「こ、これは重ね重ね失礼したにゃ……」

「別に良いさ。気にする必要はない」

 そう言って、青年は笑った。うん、快活な笑みの似合う好青年こうせいねんだ。

 思わず僕も笑みを浮かべてしまう。

「ところで、どうしてあんな場所で猪にどつかれていたんだ?」

「にゃ、実は僕は故郷を飛び出してたびを始めたばかりなのにゃ」

「旅を?その割にはずいぶんと軽装けいそうだった気もするけど……」

 ミーナの言い分に、思わず僕はうにゃっとうなってしまう。そんな僕に僅かな苦笑を浮かべて青年が言った。

「まあ、それは今は良いだろう。俺の名前はカルロだ。よろしくたのむ」

「うにゃ、僕の名前はダムにゃ。こちらこそ、助けてくれてありがとうにゃ」

 そう言って、お互いに笑い合った。ミーナも、口元をさえて笑っている。心から楽しいとそう思った。この場所を居心地いごこちが良いと思った。

 ああ、僕と個の二人は出会であうべくして出会ったのだろう。そう、心の奥底で思ったのだった。

 それは、単なる勘違かんちがいかもしれないけど。でも、僕はこの時間違いなくそう思ったのだ。だから、きっとこれは出会うべくして出会ったのだろう。

 僕がそうおもったから、きっとそうなのだ……

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