第四話

 洋一の成績が飛躍的ひやくてきに伸びていく。信じられない。下手なじゅくに行くよりも成績がしっかりと伸びていく。そしてもう一つの重要な教科である国語。「そもそも問題文が読めてないのでは?」という天邪鬼あまのじゃく指示しじ的確てきかくだった。もちろん図書館としょかんにある本はなるべくりて読んだ。


 それだけではない。教科書の重要部分を空白にする呪文まで持っていた。その穴埋め部分を徹底的てっていてきに暗記していく。コピー用紙に書いておぼえるのだ。すると……さらっと頭に入っていく。学校図書館によく置いてある小学生用の新聞ではなく大人向けの新聞も読んでニュースもちゃんと理解出来るようにする。特に新聞の社説しゃせつは国語の論説文問題対策ろんせつぶんもんだいたいさくにもなる。だから我が家はひさしぶりに朝目新聞あさめしんぶん朝刊ちょうかん配達はいたつされるようになったのだ。それだけではない。洋一よういちはJHKの公共放送こうきょうほうそうから流れるニュースを理解出来るようになっていく。だから洋一の社会と理科と国語は満点を取れるようになっていったのだ!


 世間体せけんていも大事だった。おにはさらにフトッツ光を契約けいやくし中古PCと固定電話こていでんわを繋げた。これでインターネットが出来て電子メールまで受け取れるようになった。ということで、PTAの連絡網れんらくもう電話番号でんわばんごうがついにったのだ。すごい。そう、いえに置いてあるだけの固定電話機こていでんわき電話でんわとして復活ふっかつしたのだ。スマホはまだ持てる家計かけいではないが……。PCはプログラミング思考教育で重要になる機具。ありがたい。インクジェットであるがプリンターも中古の物を買ってPCにつなげた。宿題などの課題提出のためだ。宝石の売値が伸びた成果だった。は生活に多少の余裕が生まれて行ったのだ。


 ――なにせ、もう子ども食堂に行かなくていい


 そして天邪鬼あまのじゃく指摘してき強烈きょうれつだった。


 ――日本って言う国で行ってるのは「教育」じゃねえよ。ただの選別せんべつだ。実際……本当の勉強を行うの場はじゅく予備校よびこうだしな!


 でも僕たちはじゅく予備校よびこうに行くお金などない。だから僕たちは小学校一年からの遅れを取り戻すべく親がデイケアに行っている間に自習となった。


 そして……土日は令一れいいち国津神くにつかみの神社の巨木きょぼく綺麗きれいな宝石を埋め込む。すると樹木じゅもくきとなった。宝石はに埋め込まれるようにすっと消えていった。天邪鬼あまのじゃくは作業を終えると本殿ほんでんでお賽銭さいせんを投げてから二礼二拍手一礼にれいにはくしゅいちれいを行った。洋一はお寺と礼拝方法れいはいほうほうちがうんだなとびっくりする。


 「さ、洋一よういち。終わったぞ。鬼界きかいで遊ぶか!」


 大人に化けている時の声に洋一よういちはもう慣れていた。


 「うん!」



 ――ねえ、順調じゅんちょう? 現世げんせいの住む人の天邪鬼あまのじゃくの心をえ付ける計画?


 ――順調じゅんちょうだよ。徐々じょじょにだけどみんないい加減にこの世を疑問ぎもんに思い始めているさ


 同じ天邪鬼あまのじゃく中山智なかやまさとしに小声で会話する。先輩せんぱい十四歳じゅうよんさいにもなる。


 「あ、そうだ。洋一。ここ鬼界きかいって実は空の上にあるんだ。人間には見えないけどね。だから僕たちは『あま』の邪鬼じゃくと呼ばれるんだしね? 見てみる?」


 「見てみたい!」


 彼らが居た世界は本当に空の上にあった。天空てんくうの世界である。正式名称せいしきめいしょう空界くうかいと言う。「鬼界きかい」とは俗称ぞくしょうなのだそうな。


 「鬼族おにぞく地底ちていに住むおにだってるしね」


 本当に空の上にいるのか。信じられない。しかも天空てんくうにバリアみたいなものまで見える。洋一は自分が住んでいるまちを見下ろすという貴重きちょう体験たいけんをする事となった。


 

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