第五話

 洋一よういちたちの生活はこうして変わっていった。そしてついにその時は来た。


 「洋一君よういちくん?」


 「順一君じゅんいちくん?」


 「洋一君よういちくん、今度一緒に僕の家に遊びに行かないか?」


 そう、洋一よういちの学力も性格も明るくなっていった。洋一よういちはやっと学校で友達を作れるようになっていったのだ。つまりあこがれていた『普通の生活』を取りもどしつつあった。


 僕の人生は変化したんだ!


 チャイムがる。自分の席に着く洋一。次の授業は算数だ。困ったなあ。


 「じゃ……算数の……授業を……始める……」


 ――バタン!


 「「先生!」」


 担任たんにん田中信二たなかしんじ先生はチョークをってそのまま倒れ込んだ。


 「誰か! 保健室に先生を!!」


 渡辺順一わたなべじゅんいちが指示する。中村佳織なかむらかおりが保健室と職員室両方に慌てて行く。


 救急車きゅうきゅうしゃのサイレンがひびく。担任たんにんはこの自分の家にもたまに来る先生だ。なんてことだ……。


 教頭が急いで四年二組に入った。


 「代理の先生が来るまで私が授業します」


 教頭も疲れ切っていた。


洋一君よういちくん? 大丈夫?」


 教室に戻った佳織かおりは心配していた。渡されたのは直方体の概念だった。書かれていたのは「直方体の紙を積み上げた図」が書かれていた。


 「これは?」


 「算数だけなぜか洋一君よういちくんは伸びないからもしかしたらって思って」



 今日の出来事できごと天邪鬼あまのじゃく令一れいいちに話す。


 「やっぱりな」


 「やっぱり!?」


 「この記事を見て見ろ」


 今日の朝刊の社会面しゃかいめんに書いてあったのは教職きょうしょくのブラック勤務きんむについてだ。そして残業代ざんぎょうだい法律ほうりつによりほとんど出ないという内容だった。


 「きっと……過労かろうだろうな。たぶんな。君のお父さんのような被害者ひがいしゃがまた一名出た。仮に生きていたとしても……精神せいしんもやられてるだろうな。 最近の担任たんにん異変いへんはあったか?」


 「あった。二週間前からもう声にりが無かった」


 「もう時間はねえな。樹木じゅもくに埋め込んだ宝石をつうじてアマノサグメ様に結界呪文けっかいじゅもん発動はつどうしよう。それでも……この辺の地域しかかないと思うが」


 「結界呪文けっかいじゅもん!?」


 「ああ、そうだ。人間の心を天邪鬼あまのじゃくの心にめる」

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