第4話 百合night
目の前で私を見つめてくるユノちゃんに、私はついドキドキしてしまう。今までそんなシチュエーションがなかったからだろうか。
「ツバキちゃん、顔赤いよ?体調悪いの?」
ユノちゃんはそう言いながら私のおでこに手を当ててきた。私を気遣ってくれているけど、今の私はむしろ逆だ。元気すぎて、興奮しすぎて顔が赤いんだ。
「ユ、ユノちゃんって着痩せするタイプだったんだね。なんか今日は普段に増して胸が大きいような気がするんだけど…」
どうしよう。話題を逸らそうとしてもジャンルがイケナイ方向に傾きそう。まさか、私ったら襲われちゃうなんて考えてたけど襲っちゃう!?
「もしかして、ツバキちゃんもドキドキしてる?奇遇だけど、わたしもドキドキしてるんだよ。わたしたち、何考えてるんだろう」
照れ気味にユノちゃんは言う。可愛い、可愛すぎる…。もしも男だったらもう迷わず襲ってたな、これは。
「別に襲ってきてもいいよ?むしろ望むところだよ」
ユノちゃんが今度は挑発的に言った。ちょっと、私に襲わせたらアヤさんの思う壺だよ?決めた、絶対に私
からは襲わない。
…そう、私からは襲わない。ユノちゃんから襲ってくれるんならバッチコイだ。
*
私は気づくと寝てしまっていたらしい。顔面に柔らかくていい匂いのする何かが押し付けられていた。
「ツバキちゃん、大好きだよ~。わたしから離れたりしたらダメだからね。ツバキちゃんはわたしのものなんだから。他の誰かに取られたりしたら怒っちゃうんだからね。何があってもわたしが守るからね」
どうやら、私はユノちゃんの胸に顔を押さえられているようだ。寝言かと思ったけど、ユノちゃんが手で私の髪を梳いているあたり起きてるし、多分本気で言ってるんだろう。
あと、嬉しいけど独占欲強くない!?無いと思うけどもしも私がどっかの王子様にでも恋したら無理やりにでも取り返しにくるんだろうか。もしかしたら、ユノちゃんはヤンデレなのかもしれない…。
とりあえず、私はこの後の展開に期待して寝たふりを続けることにした。
すると、ユノちゃんは私を抱きしめたと思うと…、唇にキスをしてきた。しかも、何十秒も吸うようにして。
ユノちゃん、本当は私とこんなにイチャイチャしたかったんだ…。普段はそんなにでもない。これが正しく“ツンデレ”というヤツか?
…いや、ツンの要素がない。多分、普段デレのユノちゃんがデレデレになったって考えるべきか。
「ユノちゃん、そんなに私のことが好きなの?」
「うん、大大大好きだよ。…って!?ツ、ツバキちゃん、いつから起きてたの?まさか、今のキスで?」
「え?ユノちゃんが私を撫でながら『大好きだよ~』って言ってた辺りからかな。そ、その…、なんかゴメンね」
「~~~!?!?!?」
私に知られていない前提でやってたのか、ユノちゃんは顔を真っ赤にして視線を逸らした。うん、可愛い。
「それで、私のどういうところが好きなの?教えてよ。じゃないと、私もやり返しちゃうよ?」
「そ、それは嬉しいけど…。わたしのツバキちゃんの好きなところは、言えない。正直言うと、分かんないかも」
「え?どういうこと?」
「いや、その、わたしもよく分かんないんだけど、友達としてツバキちゃんと関わってたら気づいた時にはもう好きになってたかな。友達の範疇を超えちゃったくらいだけど」
「私もユノちゃんが私を好きなのに負けないくらいユノちゃんのことが大好きだよ」
そんなことを言い合っていると、何だか頭がぼんやりするような感覚に襲われた。きっと、これが本当の“恋”っていうものなのかな?
「ツバキちゃん、もう限界…」
そう言いながら、ユノちゃんは私の唇にむしゃぶりついてきた。ああ、このあたりは表現するのも難しいから自主規制を言い訳に省かさせてもらうよ…。これってメタ発言?
*
しばらく経ってユノちゃんがハァハァと息を切らせながらも落ち着いた頃、多分既に日は回っているだろうか。ゲームをやっているはずのアヤさんはすっかり寝ていて、何か寝言を言っているのが聞こえた。
「ダメ…、死なないで…。 君には、うちが、いるでしょ…。最強の、お姉ちゃんが、守って…、あげる、から…」
何か夢でも見てるんだろうか。でも、表情が苦しそうだし悪夢なんだろうか。もしもこの寝言が過去のトラウマとかを悪夢で見て言ってるものだったら深堀りするのはやめてあげよう。
…でも、少し気になるような気もするし何も考えなかったことにして明日質問してみよう。自称最強のお姉ちゃんだ、ってからかってみようか。いや、もしかしたら夢の中でもゲームをやってるのかもしれない。
そんなことを考えながら、私は視界がまどろんでいくのを感じた。
魔女狩りのち聖戦、時々百合 クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ @monohoshiP
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