第7話【鉄砲鍛冶探し】

「さあ大殿、いよいよですな」

 光秀はギルドを出るなり声を弾ませていった。

「ああ、ワシの銃を探しに行こうではないか。ついて参れ光秀!」

「どこまでもついて行きますぞ、大殿!」

「では行くぞ!光秀!」

「はい!大殿!」

「ノリノリね、あなた達・・・・・・。ちょっと落ち着きなさい。そもそもノッブは行く当てはあるの?」

「むっ、確かに。どこに行ったらよいだろうか、ヨシモト殿」

 ワシの発言に、「まったく仕方がないわね」とヨシモト殿は肩をすくめる。

「まずは職人を選ぶところからね。チケットの裏にギルドと協賛してる職人が載ってるはずよ。その中から鉄砲鍛冶を選びましょ」

「チケットの裏とな?」

 モトナリ殿にもらったチケットを裏返すとチケットの使用条件の他に、ヨシモト殿のいうとおり協賛団体が載っていた。

 光秀もチケットをまじまじと見る。

「どれどれ、鉄砲鍛冶は・・・・・・、ここの行からが鉄砲鍛冶の団体みたいですね」

「種子島、根来、国友・・・・・・見覚えのある名前ばかりじゃな」

「いいじゃないですか、分かりやすくて」

「いや、そうなのじゃが。なにかこう、違和感があるの」

「まぁ世界観には合ってないわよね」

「世界観とな?」

「なんでもないわ。・・・・・・それでどこの鉄砲鍛冶にするのよ」

「ううむ、なかなか」

 鉄砲鍛冶の名前を一つ一つ見ていると、一つの名前が目がとまった。

「お?橘屋じゃ」

「橘屋?・・・・・・ああ!鉄砲又ですな、大殿」

「あら、ノッブの知り合い?」

「知り合いというか、堺で鉄砲の製造販売をしておった商人じゃ。こやつのおかげでワシも堺で鉄砲を買い付けられたのじゃ」

「へえ、いいじゃない。橘屋にしましょ」

「そうじゃな、橘屋はどこじゃろうか」

「職人街に行かなきゃダメね。職人街はここから西に行った所よ。雪斎、出てらっしゃい」

「はい、姫」

 再び現れた雪斎殿は早速姿を九尾の狐の姿に変える。

「雪斎殿は神出鬼没じゃな。うちの光秀も雪斎殿のように普段は隠しておけないじゃろうか」

「大殿!?」

「ミッチーは力が強いから難しいでしょうね。諦めなさい」

「むむ、そうか」

「なんで残念そうなんですか大殿、やめてくださいよ」

「というか光秀は力が強いのか?初耳じゃぞ」

「この光秀、魔法生物としても優秀なのです」とふふんと自慢げに鼻を鳴らしていった。

「私のような強力な魔法生物を従えられるのは大殿くらいですぞ」

「調子に乗るでない、追放したくなるじゃろうが」

「すみません、佐久間の二の舞は勘弁してください」

 光秀は即座に地面に埋まるほどの土下座を披露する。

 ちょっとした冗談のつもりだったのじゃが・・・・・・。

「もう茶番はいいかしら?ミッチー」

「私にとっては死活問題なんですけど!?大殿といい私への当たり強くないですか!?」

「さっさとノッブ乗せて職人街に来なさいよね」

 そういい残すとヨシモト殿は雪斎殿に飛び乗り西の方角へ飛んでいった。

「ヨシモト殿!?行ってしまわれた・・・・・・」

 光秀は落胆し、地に手をつく。

 そんな光秀の肩にワシはそっと手を置いた。

「大殿・・・・・・!」

「光秀、ワシらも職人街へ向かうぞ。ほら変化せい」

「ううっ、大殿手厳しい・・・・・・」

 そういいつつも光秀は麒麟に姿を変えた。

 なんだかんだ素直なやつじゃな。

「乗りましたね?じゃあ行きますよ、大殿」

「うむ!・・・・・・って、あ」

 刹那、この町に来たときの惨劇がフラッシュバックした。

「待て光秀。このまま行くとまた――」

 ワシがいいかけた時にはすでに光秀は西の空をかけていた。

「うおおおおお!揺らすな光秀!ひぃ高い!光秀、光秀ーッ!」

 そこからは記憶がおぼろげじゃった。

 気づいた頃にはワシは地面に寝かされておった。

「この調子じゃ先が思いやられるわね、ノッブ」

 まっさきに目に入ったのは呆れた様子のヨシモト殿じゃった。

 ワシ、ヨシモト殿に呆れ顔しかさせてないかもしれん。

「・・・・・・すまない、ヨシモト殿」

「べっ、別に謝らなくてもいいわよ!それより早く体調治しなさいよね!」

 ヨシモト殿は頬を赤らめて顔をそらした。

「しかし移動ごとにこの様子では魔王討伐など夢のまた夢。ノッブ殿の酔い癖は克服しなくてはなりませぬな」

 雪斎殿は水に浸した布を絞るとワシの額に乗せていった。

 雪斎殿の意見はもっともじゃ。

 移動は迅速にできなくてはならん。行軍速度は戦略に影響する。

「むぅ、この酔いを止められる薬でもあればよいのじゃが」

 ワシがいうとヨシモト殿がおもむろに口を開く。

「そういえば前になっちゃんが――


『この町にはなぁ伝説のお医者様がいてはるんやでぇ』


――っていってた気がするわ」

 ヨシモト殿の言葉に光秀も思い出したように発言する。

「あ、それ私もシンゲン殿から似た話を聞きました」

「伝説の医者か、そやつなら酔い薬くらい持っているじゃろうな」

 ワシが顎に手を当て思案すると光秀がいった。

「それなら大殿の武器を調達したらその医者を探しましょう!」

「名案ですな光秀殿」と雪斎殿も続いた。

 ヨシモト殿も深く頷いて同意する。

「そうね。その医者が徒歩圏内にいればいいのだけれどね」

「「「あっ・・・・・・」」」

 ヨシモト殿の指摘にその他三人の声は見事に重なった。


【次回】『鍛冶場動乱』

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