Lektion10-03:仮想戦記の紡ぎ方・大東亜編ノ三

前回は、ノウハウないしはコペルニクス的転換点を八つほど羅列したが、一つずつ見ていこうと思う。

と言っても、所詮私は素人なので(素人を免罪符に使うんじゃ無い)、正しい意見かどうかはわからないが、あくまでも作品としての整合性を考えた場合、こういう解決策があるよ、ということを提示したいと思う。

というわけで、まずは敗凶原因一、「空虚な精神論」から。

まず、前提として知っておいて欲しいのは、国家神道の中の人は一向宗であると言うことである。今風に言うと浄土真宗というらしいが、奴儕にそんな尊称は勿体ないので、以後も一向宗と記述させて頂く。

時宗の一向俊聖主義者の方々には申し訳ないが、浄土真宗というものを浄土真宗としてのさばらせていては次の戦争にも勝てそうにないので、奴儕を「一向宗」として定義させて頂く。

と、いうのも、空虚な精神論が国家神道から出るのも道理で、国家神道の中の人は一向宗だからだ。

では、なぜ一向宗を主軸にすると空虚な精神論が発生するのか。考えてみれば自然に理解できるとは思うので、答えを言うのは最後の方にしておくが、「一向一揆」のドクトリンを考えれば、だいたいは把握できると思う。

次に、敗凶原因の二として、「軍人蔑視」が戦前にも存在したというと、非常に怪訝な顔をする者もいるかもしれないが、これは事実である。実は大正デモクラシー時代には、軍人蔑視が平成や昭和戦後時代とかなり近いような感じで行われていたのだ。では、なぜ戦に負けたわけでも無いのに軍人蔑視が起きたのか。それは言ってしまえば、軍人とは血を見る仕事だからである。何を当たり前な、と言われそうだが、日本人はなぜか、いやまあ理由は明白なのだが、血を見ることを厭う傾向にあり、それどころかそういったことをせざるを得ない、社会的に必要な仕事をも蔑視する傾向がある。実に嘆かわしいことだ。では、それはなぜであるか。ある考察結果があるのだが、名を出すとなぜか信憑性が落ちそうなので一部に留めておくが、つまるところ死ぬことや血を見ることというのは、穢れになるからしたくない、というのが日本人の本音なのである。穢れということは、つまりは汚れ仕事という名前が今でも存在し、「汚い」が最大の侮蔑用語になるのは、日本の宗教観点からして、「穢れ」が最大の負の要素だからであり、その「穢れ」というものから無意識に遠ざかろうとするからこそ、血や死などと隣り合わせにある軍人や官憲、そしてゴミなどを処理する人間を「穢れ」に接するとして嫌うのである。まあはっきり言って卑怯未練の類いの行動なのだが、宗教心に基づく行為というものはそれだけ人間の意識を左右するものなのである。

つまりは、軍人蔑視が戦前でも起きたのは、穢れへの忌避感から来るものなのであるが、問題はその「穢れ」が実力を持った場合である。その結果は、まあ言う必要も無いが、そういうことである。つまりは、軍人独裁という強硬策に出たのも、その辺りがあるのではなかろうか。まあ尤も、軍人独裁というのはGHQが有りもしない濡れ衣を着せた結果であるが、一応便宜上そういうことを記述させて頂く。

さて、そろそろ巻末に迫ってきたので、一向宗が中の人である国家神道で空虚な精神論が蔓延った理由を記述しよう。……一向一揆のドクトリンというのは、「進めば極楽、退けば地獄」である。この時点で察した方も多いかも知れないが、つまりは敵に向かって死ねば極楽に往けるというのが宗教教理として取り入れられてしまった一向宗という宗教を主軸に思考をおいてしまったが最後、死ぬことを目的としてしまうため、リソースを考えずに突っ走ってしまうのだ。

一見して、「そんなばかな」と思うかも知れないが、ではなぜ信長は一向一揆相手に10年以上もの戦役を行わざるを得なかったのか。前火薬時代や、黒色火薬全盛期では、その戦法がわりかし強かったからである。

つまりは、「精神論」が蔓延ったのは、国家神道が原因であるという意見は多いものの、その国家神道の中身まで解析した方は多くなさそうなので、記述させて頂いた。一向一揆と戦い方が同じなら、そりゃ負けるよな、と。

だからこそ、私は戦国時代の主人公に固く厳命するわけだ、「一向一揆を根から滅ぼせ」、と。怨恨だけではないのだよ、一向一揆を潰す訳とは。

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