Lektion09-02:仮想戦記の紡ぎ方・戦国編ノ二
さて、大東亜編と戦国編を交互に提出する趣になったわけだが、戦国ものを書く際には、大東亜ものに比べ、そこまで史料を必要としない。と、いうのも、我々が書くのは仮想戦記であり、その叙述世界では史実であっても、別に読者世界の史実に則る必要は無いからだ。それこそ、逆浦転生者あるいは転移者を出すのならば核兵器を作ったって良いし、それをヨーロッパにばらまいたっていい。というか事実、ノベルアッププラス版の輝鑑では「アメリカ合衆国を封殺するため」とか称して主人公はヨーロッパを核の炎でウェルダンどころか炭化するまで焦がしてしまったわけで、そこまで行くとかなりやり過ぎ感はあるものの、そこまでのことをせずとも黒田官兵衛の如く薬売りから成り上がったって良い。事実、ペニシリン系の抗生物質は非常に簡単に作ることが可能であるし、電気さえどうにか調達できればサルファ剤を製造することも可能であるのは某作品が示すとおりだ。もし、専門知識の描写が面倒ないしは不可能であるならば、薬草の見分け方事典とツムラの漢方辞典でも持たせれば良い。それだけでも、十二分に活躍できる。要は転生転移系の戦国ものであれば、実際の所能力系幻想譚(いわゆる、「セイゲルフとかいう能力はクゼイルンチとかいう制約があるが、使い勝手さえギョームルであればホンソメワケベラ」的なやつ)とさして変わらんわけである。極論、とんでもなくマイナーだったり、オリジナル武将だったとしても、芸は身を助くではないが医学薬学の知識や経済の知識、あるいは農作業の知識などで濡れ手に粟を行うことだって、割と容易いのだ。
問題は、そこに至る過程の描写である。大抵の「ご都合主義」非難は、ぶっちゃけここで失敗していることが多い。と、いうのも、流石に「戦国時代に核兵器作ってヨーロッパを焼き尽くそう!」というのは暴走後の所業であるが、それでも説得力を若干感じさせることができるのは、主人公にそこに至るまでの技術力の暴走をさせ続けたことによるところが大きく、さらに言えばその暴走に至るまでの、つまりは初動から二段目、三段目あたりまでの描写で失敗させたり、あるいは精密に、正確に、そして事細かに描写することに成功すれば、あとは説得力は勝手に着いてくる。何せ、輝鑑の主人公こと富良東大権現はペニシリンとかはきちんと描写したし、蒸気機関などもそれなりに説得力のある(と、私は思っている)発想の手順を導き出し、発明させることに成功しているが、核兵器だのといったあとの方の発明品になると怨念が暴走した結果、かなりの我田引水ないしは牽強付会のまま見切り発車でGO!!した箇所も多い。……今だから話すが(汗)
では、主人公に何を得意分野にさせるか。実は、これが割と悩ましい上に、物語の根幹にある程度左右される分野であると言えよう。うちの主人公こと富良東大権現の場合、自然科学に特化させることにより先駆と殲滅を成し遂げたが、こればっかりは物語をどこまで正確に方向を定めて、発射距離を考えるかによる。例えば「輝鑑(ノベルアッププラス版)」の場合は、実はモンゴル皇帝と愉快な騎馬軍団がヨーロッパを蹂躙しました、というのでも実はある程度同じ結果になるわけだが、それでは主人公の設定である「怨霊」という概念が生かせない、と思った結果、「やはりここは、白人共の頭上で核兵器を炸裂させれば彼も成仏できるだろう」という観点の基物語の設計を始めた結果であろう。
裏を返せば、主人公の選定と設定の構築、そして得意分野を何にするかというのは作者のセンスとロジックの見せ所であり、また同時にどういう着地点を想定すればそこに繋がるか、というのは重要である。ゴールのない物語は、いかに優れていても一定の層からは誹りの対象となる。それは、故「「佐藤大輔」」氏のことを例に出せば、充分過ぎるほどに充分であろう。
……さて、実際ここまで話したことは戦国ものであろうが大東亜ものであろうが、さしてあまり違いは存在しない。では、大東亜ものと戦国もので最大の差違である「史料集めの臨界点」はだいたいどの当たりであるか。……それはまあ、次回ないしは次々回のお楽しみということで(オイィッ!?)。
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