Lektion08:仮想戦記の紡ぎ方・概論

皆様、本枠としてはお久しぶりである。Lektion08からはいよいよ仮想戦記の紡ぎ方、すなわち書き方についてのノウハウあるいはハウツーを記述していきたいと思う。とはいえ、ノベルアッププラスとは違い、ここでは「怨念を持て」とか「智謀を使え」などといった観念論的なものは記述しない予定である。というか、そういう限られた資質(「智謀あたまのよさ」はさておき「怨念うらみにくしみ」を保ち続けるのは日本人としては割と限られる資質だと思う(資質かどうかは、さておいて))を持っている人間は限られるだろうし、ここでは「仮想戦記は難しくない!」という題名の枠なので、手っ取り早い、インスタント的なものでも良いから、物語を作ったことのない方が何らかの形で一本、作品を作れるようになるまでの手助けを行うという形で記述したいと思う。かくいう私も、20年近く前の原稿を読み直してみたが、よくこんな代物で同人誌ないしは自費出版になど挑んだと自嘲したい程度には酷いものであった。とはいえ、その「酷い」の内訳が物語を書くための筋、すなわちプロットの問題や、あるいは知識の誤認などではなく、文章力が拙いという反省が過半を占めていることを考慮した場合、技術を上げれば巧くいったのではないかと思える程度にはまだまだうぬぼれが強いわけであるが。

さて、そんなもはや版元すら見捨てて活版の現物すら無いであろうものはさておいて、仮想戦記を書くために最も重要なのは怨念であるが、それは誰しもが蓄積できるものではないかもしれないので、脇に置く。次に、文章力についてだが、これは仮想戦記に限定されない、どんな物語を書く際にでも重要な要素なので、これも脇に置く。というか、その手の技量はだいたい書き続ければ一定レベルまでは身につくものである。では、大東亜戦記系仮想戦記を叙述するにおいて誰にでも可能で、なおかつ重要な要素とは何であるか。それはある種の論理力である。とはいえ、論文を書くような論理力は必要ではない。むしろ、仮想戦記を書く際に必要な論理力は論文を書いたりするには適さないものである。なぜなら、彼等が云うところの「歴史に仮想なし」というものは歴史を学問として研究論文を作るために必要なものであって、我々が挑もうとする仮想戦記とは歴史学とは相反するものだからだ。

生物学で喩えるならば、仮想戦記とは「ろくろ首考」などに近い存在である。無論、「ろくろ首考」などを記述している作家は本職の生物学者なのだが、本職の研究者と我々素人が「フィクション」を語るのに差が生じるのはディティールの巧拙に過ぎないし、そのディティールの巧拙を決めるのは専門知識と論理力、そして文章の巧拙であり、発想自体は割と対等なはずである。

……そろそろ、見えてきた頃だとは思うが、仮想戦記を記述するのに大事な要素は、概ね以下の通りに分かれると思われる。

・「仮想史」を構成するための史料の多寡

・「仮想史」を構築するための論理力

・「仮想史」を想定するための知識量

・「仮想史」を執筆するための文章能力

・「仮想史」を発明するだけの発想力

……とはいえ、一つ一つは些細なものであり、習得は容易なものである。それは、昔むか~しにある書を自費出版して見事大爆死した私が言うのだから間違いない。特に、文章能力など書けばいずれ身につくものである。特に秘訣などはない。そして、知識量や史料の多寡なんかも、今日日インターネットに行けば山ほど転がっている上に、専門家でも大東亜戦争の史料の過不足には悩むものなのだ、特に支障は無い。問題は、論理力と発想力である。そして極論、この二つは才能ではなく、一定以上の、つまりは論理を作れるだけの知能と疑問に思う能力さえあれば、容易に身につく代物である。よって、次回からは例題と解法、つまりはハウツーを通じて仮想戦記を記述していきたいと思う。戦国か大東亜かは、まあその都度決定したいと思う。

特に、大東亜にせよ戦国にせよ、どちらも鉱脈は山ほど眠っている。それは、私が保証する。問題は、その鉱脈を掘り起こすだけのコスパ、つまりは執筆の労力と読者という成果が釣り合うかどうかだけに過ぎない。まあ、それが一番厄介ではあるのだが。

特に、戦国もので信長をほぼ出さずにノベルアッププラスで6万PVを大きく超え、7万PVに迫ろうとしている私がいうのだから、それは間違いない。信長どころか、信秀すら少ししか出ていないわけで、それは言うまでも無く眠っている鉱脈をたたき起こした成果といえようて。

少し、自慢も混じったけど、まあ舞勇伝だと思って聞き流して頂ければ幸いである。

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