Lektion03:弾丸の種類を選ぼう!

はーい皆の衆、えねこである。本日は吾まだ死せずの更新を予定していたが、急遽本講座を開く羽目になった。済まないとは思っているが、どうしても明日に回す必要性を感じたため本講座を穴埋めとして行う。……え? なぜ明日に回す必要があるかって? ……まあそれは、日付と史実の関連性を考慮して頂ければご理解戴けるんじゃ無いかと思う。どうしても判らない方のためにヒントを出すと、8/5は軍艦武蔵と、8/8は軍艦大和と深い関係性のある日付である、ということを述べておく。

それでは、早速始めよう。本日の内容は、題名の通り弾丸の種類、即ち物語の射程距離と射程範囲、そして射程角度を選択したいと思う。

と、言ってもこんなセミプロ未満のピコ手作家よりも、物語の書き方については余程詳しい方々が多いかも知れない。なので、本講座では仮想戦記に絞って、それぞれを解説していきたい。

まずは、射程範囲だが、仮想戦記の射程範囲とは根本的に、戦史に怨みを持つ人物である。ただ、それだけではあまりに漠然とし過ぎているのでより深く書くとしたら、仮想歴史の射程範囲は根本的にアメリカ合衆国をどうやって潰し、ルーズベルトをどうやって殺すかに興味関心のある方が射程範囲に入りやすいといえる。まあ無論、それだけではないのだが、仮想戦記がなぜ売れなくなったかを考えたら、主要射程距離に人が居なくなったから、というのが一番大きな理由である。つまりは、大東亜戦争の敵討ちという側面を持つ仮想戦記はその仇討ちに興味関心を持たない人間にはあまり売れにくいということだ。

では、その需要はどうやって回復もしくは開拓するか。……実際の処、戦国ものが比較的売れているのは、戦国時代まで遡った場合はあまりにも多くに射程範囲が細分化されうるのと、射程距離もそれなりに選べるから、というのが大きい。射程距離と射程角度については何を意味しているのか後程説明するが、ただでさえ距離、角度共に固定化されやすい仮想戦記、特に大東亜戦記の仮想戦記において、射程範囲まで固定化されてしまったのが、ブームが終わった最重要原因なのかもしれない。

無論、それを育てなかった編集や、粗製濫造を行って仮想戦記の信頼性を損なった者共にも責任はあるのだが、根本的にそれはアタリショックとほぼ原因が一緒なので、以下からは構造的になぜ仮想戦記ブームが一度途絶えたのかを記述したい。

と、いうわけで以後数回に分けて記述するとして、今回は仮想戦記のに限らずつきまとう、物語の3要素について述べていきたい。と、いうのも仮想戦記に限らず物語の成功には次の三つが要因として絡みついていると思っている。それは以下の通りだ。


射程距離……即ち、物語の長さ

射程角度……即ち、物語の方向性・属性

射程範囲……即ち、物語のターゲット層


つまりは、仮想戦記がなぜ射程距離と射程角度が固定化されやすいかと言えば、かつては皆が皆、射程角度については「山本五十六が大和とを率いてアメリカ合衆国太平洋艦隊をぶっ潰して、優位な講和条約を飲ませる」という内容を書いていたとおり、要するに読者世界のアメリカ合衆国に対する鬱憤を晴らさせるためのものであり、射程距離も概ね本1冊の単行本や文庫本、新書など持ち歩けるサイズ~長くても精々4,5冊程度であることが多いからだ。

つまりは、射程角度が概ね決まっており、更には射程距離も決まっている以上、パイの奪い合いになることが多い。さらに、パイ自体がそこまで広いものではない。故に、ブームは去った。

ではそれを取り戻すにはどうすれば良いか。パイを追加で焼くのはあまりにも面倒であるし、作家一人の能力ではあまりにも役が勝ちすぎるだろう。

では、射程距離を変えてみるのはどうだろうか。……無理である。なぜならば、仮想戦記とは先程述べた通り、極論を言ってしまえば日本人の深層心理に潜む「先の大戦には勝てても可笑しくなかった」という願望を一時的にでも叶えるためのものであり、射程距離は自ずと始点から決まってくる。1年を3冊に分割したとしても、10冊も行けば長い方だろう。……かつて、紺碧の艦隊という長期化の成功例があったが、あれはさすがに参考にしてはいけない。というか、普通の人間にはあそこまでキンパク(金箔でも緊迫でも、この場合は正しい)を引き延ばすことは出来ない。

故に、1年の描写を都合きちんと1年で書いたとして、年間に本を何冊書けるかにもよるが、概ねMCあくしずのように4冊出せたとしても原作史実通りのスケジュールで概ね20冊まで書ければ僥倖であろう。更に、ミッドウェーなどのド定番の部分からスタートした場合、さらに短くなる可能性が高い。

では、射程角度を変えてみてはどうか。かつて、それで成功を収め、今の艦これなどの基礎になっているものが存在する。……「軍艦越後の生涯」だ。仮想戦記に萌えをブッコむ要素として、あれ以上のものは今のところ存在し得ないだろう。

だが、これも諸刃の刃、というか精々ストレートをフォークやカーブにする程度だろう。或いはシュートをする際にオーバーヘッド程度にするようなものだ。常人では破綻するし、秀才であっても変化球で終わってしまう。

故に、射程範囲を多くする必要があるのだが……。それは大東亜戦争よりも戦国時代の方が遙かにやりやすい。何せ、おらが村の殿様は腐るほど存在するし、その中で一定数、或いは一定の割合で本物の子孫というものが存在するからだ。

故に、今書店に並ぶ仮想戦記は平成の人間が戦国時代に逆浦転生するものが多いのだろう。アレも一応、仮想の偶然を辿った、歴史を描いたものという定義であれば、仮想戦記であるし。

そして、仮想戦記の射程範囲が一作家が育てるには限度がある以上、どうやったら射程距離や射程角度を、大東亜戦争系の仮想戦記に限定して種類を多くすることが出来るのか。次回からはそれを考察していきたい。……「考察」と書いた以上、結論なき記述であるが、それはご容赦戴きたい。

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