第15話『スーパーカブ』

叶って居たのであれば、大学へ行きたかった。

自分の可能性を広げる場所へ。

だがそれは叶わなかった。

自分で見つけれなかったのかもしれないし、大学へ行った者が大半は頭が固くなると言うのを、心做しか知っていたからかもしれない。

だが今の私には大学へ行った方が自分の楽しみが増えていた気がする。

だがしかし今の生活で昔の私に望めなかった物があるのも事実。

上京や結婚、そしてカブ。

昔の私ならカブに憧れはあれど、自分で手に入れる事はしなかったろう。

だが今の私はカブに一度乗りそして事故をし、そしてまたカブに乗っている。

一度目に乗ったカブと型式番号は一緒にしながらも少し古いキャブレターのカブ。

一度目のフューエルインジェクションと違うカブは、私にとって何処か喧嘩相手であり、それでいて仲間の様な感覚を覚えている。

一緒に生きていきたいと思った一度目のカブには申し訳ないが、私の好きになっているトネ・コーケン氏の書いたスーパーカブに出てくる物と同型だが少し違う、プレスカブと言われるその名の通りプレス、つまり報道に使われる新聞配達の青い前カゴ付きの物。

それは私にとってスーパーカブの登場人物である小熊ちゃんが手にしたHA02と似た感覚なのかもしれない。

私の今の生きる意味だ。

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