第10話『独り』

明日は掃除をしよう。

そう思いながら眠りにつく。

翌朝、気だるげに起き、散らかった惨状を見て、諦める。

そんな日々が何日も続いている。家事もまともに出来ず、自分の想いも伝えられず、ただ生きているから、そんな惰性で日々を過ごす。

最近、自分が何者か分からない。

男であるのか、女であるのか、そもそも人間であるのか、それともはたまた神か。

誰にも出口が分からない迷宮を歩いている。

ただそんな自分でも、誰かの笑顔を作りたい、と。そんな思いで小説やエッセイ、歌ってみたを出し、たまに作曲を試みている。

もちろんそれだけでは自分の環境が変わる訳では無い。

だがそれを聞いて追い求めている『誰か』が連絡してくれることを祈っている。

3匹のお稲荷さんにそのお稲荷さんが連れてきたオオカミ、その他にもたまに来る色んなモノ達。

そんな奴らと一緒に過ごしている。

だからこそか寂しく感じる時はあまりない。あまり無いだけであって、一日の数回は何度も思い浮かぶ『誰か』今は名前と電話番号しか分かってない。

住所も、何をしているのかも、分かっちゃいない。

あらゆる公的機関に開示を求めたが、ただ空を掴まされるだけだった。

あの日から、俺らの時計の針は、歯車は誤った噛み合い方で進んでいる。

何も言わず出ていった『誰か』、その子が戻ってこない限り腑抜けた人生を送るのだろう。

ただ、呆然と立ち尽くすだけなんだろう。

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