東晋3  王恭決起

司馬德宗しばとくそうのもとで兗州刺史えんしゅうししとなっていた王恭おうきょうは、王國寶おうこくほう王緒おうしょ亂政を憎み、荊州刺史けいしゅうしし殷仲堪いんちゅうかんとともに同時に挙兵した。


王恭は司馬德宗に上表する。


「王國寶の犯した大罪の数々を申し上げる。奴は弟の王忱が荊州で死亡したとき、葬儀に駆けつけたいとか言いながら、結局行かなかった。そうした振る舞いを糾弾されると思い、城に戻ろうとする時には女装までしてこっそり城城入りし、司馬道子しばどうし様ににとりなしを頼み込んだ。また孝武帝こうぶていが死んだ時にはみなが嘆き悲しむなか平然とした面持ちを崩そうともせず、むしろ遺詔捏造などと言った姦計を企みさえした。二人の兄、王愷おうがい王愉おうゆを憎みそねみ、ひどく貶めようと企んだ。私兵を集め、軍府や軍資を私物化した。官位爵位を勝手に売買してその影響力を地方各地にまで伸ばし、そのネットワークで不逞の徒や亡命者を呼び寄せた。

 こうした企みにはいとこの王緖も一枚噛んでいた。その狙いはもはや国家転覆としか思えない。

 このため我々は、春秋しゅんじゅうの昔、趙鞅ちょうおう晉陽しんようにて晋侯しんこうの君側の惡となっていた知氏ちしを討ち滅ぼした例に倣いたく思っている。臣はのろまで拙劣なるものだが、そうした事実も今は忘れ、天下国家のため立ち上がらんとする所存である」




德宗兗州刺史王恭惡國寶、王緒之亂政也,乃要荊州刺史殷仲堪剋期同舉。王恭表德宗曰:「國寶身負莫大之罪,謹陳其狀。前荊州刺史王悅,國寶同產弟也。受任西藩,不幸致喪。國寶求假奔彼,遂不即路,慮臺糾察,懼於黜免,乃毀冠改服,變為婦人,與婢同載,入請相王。又先帝暴崩,莫不驚號,而國寶靦然,了無哀容,方犯閤叩扉,求行姦計,欲詐為遺詔,矯弄神器。彰暴于外,莫不聞知。讒疾二昆,過於讎敵;樹立私黨,遍於府朝。兵食資儲,斂為私積;販官鬻爵,威恣百城。收聚不逞,招集亡命。輔國將軍王緒頑凶狂狡,人理不齒,同惡相成,共竊名器。自知禍惡已盈,怨集人鬼,規為大逆,蕩覆天下。昔趙鞅興晉陽之甲,夷君側之惡,臣雖駑劣,敢忘斯義。」


(魏書96-3)




この場所は既に一度紹介済みですね。

https://kakuyomu.jp/works/16817139559045607356/episodes/16817330661410356096

ついでに趙鞅も貼っときましょう。

https://kakuyomu.jp/works/16816700428584992583/episodes/16816700429256384500


ほんと、何度見ても「オメー趙鞅はそのあと晋出公を亡命させてんだろ何いってんだ」感がやばくて素敵です。まぁその後別の晋公立ててますしセーフってことなんですかね! なら、ここでも「司馬徳宗廃して司馬徳文立てたい」みたいな含意も拾っておきたいところです。やっべえくらいに司馬徳宗への不敬がぶちかまされててベネですの。



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