高允6  国記詰問 上

崔浩さいこうが収監された際、高允こういん中書省ちゅうしょしょうに宿直していた。そこに拓跋晃たくばつこう東宮侍郎とうぐうじろう吳延ごえんを派遣、宮廷内にて待機するよう命じる。


翌朝、拓跋晃は拓跋燾たくばつとうに謁見。またそこには高允も同行するよう命じられる。宮門にまで至ったところで、高允に言う。

「これより至尊と見える。私がそなたを導く心積もりだ。万が一至尊よりの問いが降り掛かった際には、私の言葉にのみ沿うようにせよ」


「なにが起こったのでございますか?」

「……嫌でも、すぐに分かる」


拓跋燾の前に出ると、拓跋晃が言う。

中書侍郎ちゅうしょじろうの高允は、臣の宮に共にあり、同じき時を重ねております。何事にも慎重に慎重を重ねるその振る舞いを頼り、臣はことごとくをこの者に委ねております。崔浩と同じ職務に携わってこそございますが、もとより高允は微賤なる立場、その主導権は常に崔浩にございました。

 ……どうか、その命だけは」


拓跋燾は高允を招き寄せ、問う。

國書こくしょは、みな崔浩が書いたのであったかな?」


高允は答える。

拓跋珪たくばつけい様の時代につきましては、先の著作郎ちょさくろうであった鄧淵とうえんが撰じてございます。拓跋嗣たくばつし様、及び陛下の御代のことについては、臣と崔浩とで取り組みましてございます。なれど崔浩は多くのことを総督せねばならぬ立場、故に二代の内容はほぼ最終確認、に過ぎませぬ。注疏そのものにつきましては、臣の領分のほうが多くございます」


拓跋燾は怒り、言う。

「ならば、貴様の罪は崔浩に勝るわけだな! よもや生き延びられるなどとは思うまいな!」


拓跋晃が割り込み、言う。

「天威の嚴重なるは、重に存じてございます! 高允は小臣なれば、錯乱のあまり順列を誤ったのでございます! 臣は陛下の御下問に対し、みな崔浩がものした、と答えるべく伝えておりましたに!」




初,浩之被收也,允直中書省。恭宗使東宮侍郎吳延召允,仍留宿宮內。翌日,恭宗入奏世祖,命允驂乘。至宮門,謂曰:「入當見至尊,吾自導卿。脫至尊有問,但依吾語。」允請曰:「為何等事也?」恭宗曰:「入自知之。」既入見帝。恭宗曰:「中書侍郎高允自在臣宮,同處累年,小心密慎,臣所委悉。雖與浩同事,然允微賤,制由於浩。請赦其命。」世祖召允,謂曰:「國書皆崔浩作不?」允對曰:「太祖記,前著作郎鄧淵所撰。先帝記及今記,臣與浩同作。然浩綜務處多,總裁而已。至於注疏,臣多於浩。」世祖大怒曰:「此甚於浩,安有生路!」恭宗曰:「天威嚴重,允是小臣,迷亂失次耳。臣向備問,皆云浩作。」


(魏書48-6)





「愛人を殺す」決意をした拓跋燾のこの時の迫力、たぶん最悪のプレッシャーでしたよね……これを言い切っちゃうんだ、高允さん。さすがにかっこよすぎませんかね?


このやり取りは中、下の三部作に分けてお伝えします。なのでいまは高允に対する萌え&燃えだけを垂れ流しておくのです。

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