封懿・魏 微妙な関係

封懿ふうい、字は處德しょとく勃海郡ぼっかいぐん蓨県しゅうけんの人だ。曾祖父は封釋ふうしゃくしん東夷校尉とういこうい。父は封放ふうほう前燕ぜんえん慕容暐ぼよういの時代に吏部尚書りぶしょうしょとなった。兄は封孚ふうふ南燕なんえん慕容超ぼようちょうのもとで太尉たいいとなった。封懿は秀俊魁偉、才気に溢れ、文章を得意とした。兄とともにいろいろお茶目(要検討)なふるまいも多かったが、ともあれ両名とも同じくらいの高名を博していた。


封懿は後燕こうえん慕容寶ぼようほうに仕えると中書令ちゅうしょれい民部尚書みんぶしょうしょとなった。慕容寶が敗走すると北魏ほくぎに帰属。給事黃門侍郎きゅうじこうもんじろう都坐大官とざたいかん寧朔將軍ねいさくしょうぐん章安子しょうあんしとされた。拓跋珪たくばつけいはしばしば封懿を引見、慕容にまつわる昔の話を聞き出そうとする。このときの受け答えが粗雑緩慢なものであったため、拓跋珪は封懿の官位を廃し、家に帰した。拓跋嗣たくばつしが即位すると再び召喚を受け都坐大官とされ、侯に進爵となった。417 年に死亡。封懿は『燕書えんしょ』を撰じており、この本は人々に広く読まれた。


息子は封玄之ふうげんし司馬國璠しばこくはん溫楷おんかいらが乱を目論んだ件に連座となり、処刑された。処刑に臨み、拓跋嗣が封玄之に問う。

「貴様の家門を絶やすわけにもゆかぬ、ならばひとりの子だけは助けねばなるまい」

封玄之は請う。

「弟の封虔之ふうけんしの子の封磨奴ふうまど、字君明くんめいは早くに父を失いました。どうか、その子だけは助けてやってください」

こうして封玄之とその四子は殺され、封磨奴は赦免となった。ただし後に宦官とされた。封磨奴は 483 年に死亡。平東將軍へいとうしょうぐん冀州刺史きしゅうしし勃海公ぼっかいこうが追贈され、ていと諡された。養子も得たようである。



封懿のいとこの子、封愷ふうがい。字は思悌してい封弈ふうげいの孫だ。父は封勸ふうかん後燕こうえん慕容垂ぼようすい侍中じちゅう太常卿たいじょうきょうとなった。封愷は給事黃門侍郎きゅうじこうもんじろう散騎常侍さんきじょうじとなった。後に平城へいじょう入りし、その名は封玄之に並んだが、やはり司馬氏の引き起こした事件に連座となり、処刑された。なお封愷の妻は盧玄ろげんの姉である。




封懿,字處德,勃海蓨人也。曾祖釋,晉東夷校尉。父放,慕容暐吏部尚書。兄孚,慕容超太尉。懿儁偉有才氣,能屬文,與孚雖器行有長短,然名位略齊。仕慕容寶,位至中書令、民部尚書。寶敗,歸闕,除給事黃門侍郎、都坐大官、寧朔將軍、章安子。太祖數引見,問以慕容舊事。懿應對疏慢,廢還家。太宗初,復徵拜都坐大官,進爵為侯。泰常二年卒。懿撰燕書,頗行於世。

子玄之,坐與司馬國璠、溫楷等謀亂,伏誅。臨刑,太宗謂之曰:「終不令絕汝種也,將宥爾一子。」玄之請曰:「弟虔之子磨奴,字君明,早孤,乞全其命。」乃殺玄之四子,而赦磨奴。被刑為宦人。太和七年卒。贈平東將軍、冀州刺史、勃海公,諡曰定。

懿從兄子愷,字思悌,弈之孫也。父勸,慕容垂侍中、太常卿。愷,給事黃門侍郎、散騎常侍。後入代都,名出懿子玄之右,俱坐司馬氏事死。愷妻,盧玄姊也。


(魏書32-5)




封懿は十六国春秋で紹介してます。https://kakuyomu.jp/works/1177354055365070928/episodes/16816700428744068075

あと兄貴、封孚も。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055365070928/episodes/16816927860362978864

兄貴は慕容超ぼようちょうに正面切って「お前は桀紂けっちゅうだ」とか言い切っちゃうやべーお方。慕容の重鎮として支えた漢人としての矜恃があったんでしょうね。

この家門って慕容廆以来の親藩なんですよね。なので封懿も慕容に関する様々なことを把握していたんだとは思われますが、拓跋珪に対する受け答えからしても、やっぱり拓跋珪、旧燕系貴族に対するファーストコンタクトとちってたくさいよなあ。この辺り、北魏平城時代になにか詳しいこと書いてないかな。買うだけ買ってしっかり読めてないんですよね。

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