幼馴染はお嬢様
俺は涼音と一緒に校門に向かっていた。
「薫、また下向いてるよ」
「わ、悪い」
「謝らないの!奈々を振り向かせるって切り替えたんでしょう。なら下を向かず堂々、いい!」
「あ、ああ」
どうやら無意識の内にまた自分を卑下していたらしい。
本当、涼音には助けてもらってばっかりだな。
「あっ、来たみたい」
校門の前には高級そうなリムジンが一台止まっており、その前に一人の老紳士がいる。
「赤木」
「お嬢様様」
そう涼音は昔から続く財閥の娘で今は世界的に有名なゲーム会社の社長の娘でもある。
「赤木さん」
「これは、薫様、お久しぶりです。大きくなられましたね」
俺は赤木さんと面識がある。
小さい時涼音の家に遊び行っていた時何度か仕事を手伝った事があるからだ。
「覚えているんですか」
「ええ、勿論です。あの頃は私も貴方様に助けて貰った一人ですから」
「大袈裟ですよ」
「赤木」
「おっと、つい長話を、それではお嬢様、薫様お乗り下さい」
俺たちはリムジンに乗った。
「なんか前乗った時よりも何というか、高級感増してね?」
リムジンの中は黒一色だが艶や光沢そしてその計算し尽くされたデザインによりシンプルながら格が分かる作りになっている。
「当たり前よ、薫が乗ったのは何年も前のやつよ。技術は日々進歩するの前のより良くなってるのは当然じゃない」
俺ら一般市民からしたらリムジン買ったら一生買い替えないけどな。
「お嬢様、薫様、着きました」
赤木さんがリムジンのドアを開けるとそこにあったのはまるで貴族の豪邸と言ったぐらいの迫力を持つ屋敷だった。
「ただいま」
「「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」」
屋敷に入ると沢山のメイドさん達が一斉に涼音に挨拶する。
「おかえりなさい」
「お母様」
そこいるのはまさに絶世の美女。
輝く銀髪にルビーの様な瞳を持ち美女は涼音の母である、エレナさんだ。
「あら!薫君、久しぶり!」
ギューっとエレナさんが俺を抱きしめる。
「ちょっ!エレナさん離して下さい!」
「えー、いいじゃない」
「お願いします!」
「お母様!薫から離れて!」
涼音は俺の腕を掴んで俺をエレナさんから離した。
「もう、涼音は相変わらずね」
「当たり前です!」
涼音の睨みも軽く受け流すエレナさん。
流石は大手ゲーム会社の社長だ。
「とりあえず涼音、着替えてらっしゃい」
涼音は自分の部屋のある二階へ向かう。
俺を連れて。
「涼音、薫君は私とお話しがあるから」
「お断りします」
涼音はエレナさんの命令を速攻で断った。
「涼音」
エレナさんは笑顔でもう一度と涼音を呼ぶ。
これには涼音も少したじろぐ。
「涼音、俺もエレナさんと久しぶりに話したいから」
「薫」
涼音はようやっと俺を離してくれて、二階へ向かった。
「ごめんなさいね、涼音、貴方が家に来てくれた少し舞い上がってるのよ」
「いえ、涼音にはいつもお世話になってるのでこれくらいは」
「んふふ、こっちよ」
俺はエレナさんについて行く。
そこにはバカ広いリビングがあった。
リビングにはダーツにビリヤード、プロジェクターに大量の本棚とゲームなど様々なものが沢山ある。
「さぁ、座って」
俺はエレナさんに高級なソファーに座る様言われ、俺は言われるがままに座った。
「お、おぉ」
ソファーはとってもふかふかで俺にかかる重力さえ吸い込む程だ。
そしてメイドさんが二つのソファーを挟むテーブルに紅茶を置いてくれる。
「んふふ、気にいってくれたならあげるわよ」
「いっ!いえ!そんな訳には・・・」
「薫君、私たち家族は貴方に返し切れないほどの恩があります」
「そ、それは・・・」
「貴方にとって、大したことなくても私たちにとっては大恩なんですよ」
エレナさんに論され、場を濁す様に紅茶を飲む薫。
「そうね・・・なんらなら涼音をあげてもいいわよ」
「ぶーー!」
思わず口に入れた紅茶を吹き出してしまった。
「かは、こほ、な!何を言って!」
「あらどうしたのそんなに動揺して」
「動揺も何も涼音は物じゃありません!そ、それに彼女ならもっと素敵な人と出会えたます!それと俺には別に好きな人が」
「知ってるわよ。奈々ちゃんでしょ」
「なっ!知ってるなら」
「だからもし薫君が奈々ちゃんを諦めたら涼音を貰ってくれる?」
「クッ!」
ダメだ。エレナさんは世界的企業の社長だ交渉事は向こうに分がある。
「か、考えておきます」
「んふふ、いい返事を期待してるわ。それにしてもちゃんと言質を取られない様に良いところで引いたわね。流石だわ」
そう言いエレナさんは後ろに控えているメイドさんの一人を見、そのメイドさんは頷きとエレナさんはこっちを向く。
「涼音の着替えが終わったらしいから部屋に行ってあげて」
「分かりました」
俺は涼音の部屋へ向かう。
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