私の薫

私は薫が屋上に走っていくのを見て彼をつけた。


そこで私は薫が泣いてるを見てすぐにでも抱きしめたかったでも我慢した。


だって


「我慢よ涼音こんなチャンスもう二度と来ないわ」


私はこれをチャンスだと思った。


心が傷ついた薫を私が救って薫の中に私という存在をもっと、もっと深く濃く刻み込むと。


だから行かない。


人は傷ついた時、時間が経つ程過去を辿るそして、ひげして自分を悪役にする。


それがどんどん大きくなり関係ない思い出にまで派生する。


そして自己嫌悪に陥る。


30分くらい経ったけどそろそろね


私はゆっくりと扉を開けて薫の前にハンカチを出す。


「え、」


薫ったらすっとんきょな顔してる。


「す、涼音」


薫ものすごく複雑な顔してる。


「ど、どうしてここに・・・」


「うん、実わね。見ちゃったのさっきの」


薫はそれを聞いてまたしたを向く。


「ど、どこから・・・」


「奈々に彼氏が出来たってところから」


そして私は悲しそうに下を向く薫に抱きつく。


「す、涼音!」


薫は驚くけど、私は優しく声をかける。


「頑張ったね。薫はよく頑張ったよ」


「す、涼音」


優しく、心に染み渡る様に。


「私は知ってるよ。薫が奈々のことものすごく好きなこと」


なんで私じゃなくてあの女なのか理解出来ないし、したくないけど


「少しでも一緒にいたくて勉強頑張って奈々に勉強を教えていたこと」


そんなに一緒にいたいなら私がいてあげるのに。


なんならもっと楽しくて幸せな事を教えてあげるから。


勿論、私でね。


「バイトを掛け持ちして沢山プレゼントを買ったこと」


一緒に頑張ったよね。


学校終わりにほぼ毎日5時間以上も働いてお金を稼いであの女に貢いで大好きだったアニメやラノベすら売って!あの泥棒猫に執心してたことも!


「私といっぱいデートの下見に行ったことも」


あの時は本当に幸せだった!


あの時は私が薫の彼女。


薫の女。


あの時の高揚は今でも忘れられない。


「愛を意味したプレゼントを沢山送ったことも」


下見の帰りに泥棒猫に贈るプレゼントを買いに行ったとき私はとてもイライラしていた。


なんせ、薫が特定の品を見たら即決で買ったから。


そして私にはその理由がわかる。


私も薫と同じだから。


それは愛してると恋人に贈る為の意味を持ちものばかりだったから。


本当ならあれら全部私が薫から貰うはずだった・・・


それを全部!あの泥棒猫にかっさわれた!


「私は知ってよ」


とうとう薫は我慢出来なくなったのか私を抱き返してくれて、私の胸の中で泣いてる。


私は思わずさらに力を入れて


ギュっ


としてしまった。


幸せ。


今私の中に彼がいる。


このまま離さなければ彼はずっと私のものになる。


私の中にあるドス黒い何かがそう訴えかけてくる。


でも、私は耐える耐えてみせる。


そう思っていた。


「ありがとう、涼音」


薫は泣き止んで私にお礼をいう。


「俺、決めたよ」


薫、とうとうあの泥棒猫を捨てる覚悟を!!


「もっと努力して今度こそ奈々に振り向いてもらうって!」


パキンッ!!


無理だった私の中で何かが壊れた音がした。


「ねぇ、薫、なら私の家で作戦会議しよ」


「い、いいのか?」


「勿論だよ、薫はもう家族同然だもん」


「そ、そうかなら甘えるな」


「うん!」




「だってこれから本当の家族になるんだから」


「何か言ったか?」


「うん?何にも」


「そうか」


涼音の最後の言葉誰にも聞こえなかった。

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