7.Shot.
憂鬱な雨が過ぎ去った翌日。
空気はしっとりと涼しく、指で伸ばしたような灰色の雲間からは青空が見えていた。昨夜から今朝にかけ、どうにも気まずいハルトに対し、未春はいつもと何ら変わりなく――否、いつも以上にせかせかとよく働く。
十条が居なくなるのを待っていたように、早朝から彼の布団を洗い始め、山積した書類を片付け、掃除機を掛け始める。
さららが言っていた「よく出来たハウスメイドさん」の形容に納得しつつ、隙の無い手際は違う意味で声を掛けづらい。
「……なんか、手伝う……?」
ここ一番の勇気を振り絞ったハルトに、未春はハンド・クリーナー片手に首を振った。
「平気。ハルちゃんは朝飯を――」
いつも通りのトーンで未春は言い掛けて、口をつぐんだ。
その視線の先を振り返ると、一体いつの間にそこに居たのか、部屋の主がにこにこと微笑んで立っていた。
「あれ……十条さん。早いですね?」
「うん。おはよーう」
珍しく午前中に姿を現した男は、己が部屋を覗いて「うわあ」と感嘆とも悲鳴ともつかない声を発した。
「これまた派手にやってくれてるねえ……」
「――十条さん、さららさんは?」
十条のセリフを無視した問い掛けは、どこか棘があった。昨日、ハルトに襟首掴まれても出てこなかった咎める口調に、問われた方はにっこり笑って頷いた。
「大丈夫。よく寝てるから」
「早く帰ってください」
「朝御飯食べたら帰るよ。お腹空いちゃってさあ……さらちゃん起こすの悪いし」
腹をさすって呻く男は、自分でどうにかする発想は無いらしい。
「ハルちゃん、とっとと食わして追い出して」
平素より仏頂面に見える未春の指示に、十条は肩をすくめて苦笑いだ。
「はーい。とっとと出て行きまーす」
行こ行こ、と肩を押さえられて従うと、彼は当然のように新聞を持ってきて、椅子に腰掛けて溜息を吐いた。
「……さららさん、本当に大丈夫なんですか?」
今朝は和食らしく、既に作られていた味噌汁を温めながらハルトは尋ねた。十条は同じく食事にやって来たスズとビビに笑いかけながら頷いた。
「大丈夫だよ。一週間程度は掛かるけど、ゆっくり休めば元気になるから。それよりハルちゃん、目玉焼き食べたい」
「はいはい」
じゅわっと浮く油の香りと、掃除機のモーター音は、妙に健全な朝を思わせる。振り返ると、上司はくつろいだ姿勢で大量の新聞を捲っていた。
「どうしてこう、嫌なニュースばっかり大きく載せるのかなあ」
紙面にでかでかと載ったトップニュースは、不景気と政治不信の話題だ。閣僚の不正問題を取り上げ、いじめ問題、災害、国家間の揉め事、芸能人のスキャンダル――悪い報道は言い出したらキリが無い。
「良い話も多いのにさ。ああ、このフェアトレードの記事いいよね――こっちの、高校生が地元の特産品PRとか……写真もいいじゃない。平和な国の若い子は、こういう顔してなくっちゃねえ」
「十条さんは、よく……殺し屋っぽくないこと言いますよね」
「そうかい?」
リクエストの目玉焼きを置くと、彼は子供みたいに喜んだ。湯気を立てる米、味噌汁が揃うと、リビングには豊かな香りが広がった。気が付くと掃除機音は聴こえなくなっていた。敏腕主夫は書類整理か、それとも拭き掃除か――ともかく、静かな朝が戻って来ていた。
「女子高生にナイフかあ」
災難だったねえ、と十条は目尻の下がる笑顔で言った。昨日の話だ。別に告げ口するわけではないという前置きに、彼はにこにこと黄身を崩して頷いた。
「気にすることないよ。未春はキラー・マシーンなんだからさ」
キラー・マシーンという言葉に、ハルトは少し委縮した。殺し屋という点では同じ穴の貉であり、ハルトもキラー・マシーンと呼ばれても致し方ない。それなのに、自分はそうではないと感じるし、未春がそう呼ばれることには何やら抵抗があった。
「あいつは……貴方が教育したんですよね?」
ハルトが知る限り、日本にBGMの教育施設は存在しない。銃刀法があることもそうだが、軍隊ではなく自衛隊を持つことも含め、武力を持つのは非常に目立つ。第一、いくらカモフラージュしても、十代以下の子供を集めて戦闘教育などしていたら悪目立ちするに決まっている。故に、日本人でBGM入りしている人間とは、幅広いネットワークに引っ掛かるだけの素質がある者と、ハルトの様に偶発的に接点を持った人間に限られる。
「そうだよ。未春は十歳の時から、僕が育てた」
「……なんで貴方が育てて、あいつがああなるんです?」
「さあ……どうしてかなあ」
お椀片手の男は、どう邪悪に見繕っても殺す前に殺されそうなタイプだ。少なくとも、殺す前に仏の道でも説き始めそうな顔に見える。ハルトが把握しているTOP13の数名は、現役或いは元・殺し屋で、腕前の如何は伝説級のトップクラス――ということは、十条もクレイジー・ボーイとあだ名される実力者の筈なのだが。
「十条さんは……現役なんですよね?」
「一応ね。君みたいな若い人に比べたら恥ずかしいもんだよ」
「未春がナイフってことは、貴方もそうなんですか」
グロックとベレッタを所持する辺り、拳銃も扱えるようだが、十条は頷いた。
「ナイフは……今は未春の方が
「俺も見たことはありませんが、そう聞いています」
ハルトを手元に抜擢した頃、既にアマデウスは直接的な殺しからは手を引いていた。当人は歳を理由にしていたが、「何かある」と噂が立つ程度には意外な引退だったらしい。今でこそ、羽振りのいい
「今は君の方が凄いのかな?」
「あの人と比べてどうかは知りませんが……凄くはありませんよ。十条さんこそ、未春よりヤバいんじゃないですか?」
当初から、気配が無いことには度々驚かされている。足音も含めて、一種の職業病だろうが、同業者の目から見ても並の実力ではない。
「イヤイヤ――僕はセコい人間だからね。うまいこと誤魔化してるんだ」
軽く笑い飛ばすと、彼は箸を置きながら、日向に目を細めながら言った。
「ハルちゃんはさ……BGMをどう思う?」
「……どう思う……ですか?」
急な質問をおうむ返しにした青年に、世界で指折りの悪党である筈の男はにっこり笑いかけた。
「このまま、僕たちが殺し続けた先に、何があると思う?」
「…………」
何故、そんなことを殺し屋に聞くのだろう?
考えたことが無いわけではない。だが、考えたところでわからない。
いつか未春も言った通り、BGMが関わらなくても人は死ぬし、不慮の事故や自然災害でも命は失われる。紛争、戦争、テロ。殺すことを目的にした組織なんてものが、ひどく下らない程度には、人は殺し、殺されている。
「……俺にはわかりません」
「あれ、そう? ……ハルちゃんは“殺し”の本質に気付いていそうだけど」
何か思い出そうとするように、十条はゆったりと指を回して首を捻った。
「そうだなあ……『ジェノサイド』って言葉があるじゃない?あれってさ、大量殺戮の意味で使われているけど、特定の人種や国家、宗教なんかの抹消行為を意味するんだよね」
一般的なイメージは、かつて行われたアルメニア人虐殺や、ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺などの人命を奪う殺戮行為だが、特定の民族に国外への強制退去を命じたり、独自の文化を持つ集団にそれを禁じて同化政策を強要したりするのもジェノサイド行為に当たる。中国によるウィグル族政策などがそうだ。日本では、現在の沖縄である琉球王国や、アイヌ民族が暮らした北海道などで似た様な強制政策が取られて今に至る。現在の日本で全国的に日本語が話されているということは、彼らに「日本人なんだから同じ言葉を話せ」と強要したに他ならない。
「これらは、国連のジェノサイド条約によって禁止されていて、当然、集団殺害は国際法上の犯罪として禁じられてる……僕らは堂々と破っているけれど」
「BGMの殺しが……ジェノサイドだって言うんですか? 個人を無作為に殺してるわけじゃないと?」
「TOP13の多くはそう思っている。僕の見解では――BGMが行う殺人って、つまるところ、ジェノサイドなんだ」
「でも……特定の集団に限ってはいませんよね?」
「勿論さ。殺される人間達に共通するのは、文化や信仰じゃない」
そういうものは大切にしなくっちゃ、と殺し屋は微笑んだ。
「BGMに抹消されているのは『死んでほしいと思われた人間』さ。同時に、TOP13が『死んでも差し支えない』と判断した人間てこと」
「……それは……確かに」
「正義の味方を名乗るつもりは毛頭ないけど、くたばってるのが殆ど悪党なのはハルちゃんも知ってるよね。さて……この調子でさくさくと悪党が死んでいくと、何か変わると思うかい?」
「……俺には大きな話ですけど……」
想像もつかないなどと言ったら嘘になる。かといって、その未来を予感していたとも言い難い。物語では、悪役が死ぬと平和が訪れるものだが――――
「変わらない、と……思います」
十条の唇がニヤっと笑った。ふと、元上司が悪巧みをする顔と重なるが、目の前の男はすぐにほんわかした笑顔になっている。
「僕も同感」
手元のカサカサ鳴る灰色の新聞記事――親の虐待によって死亡した子供の悲報を見つめながら、十条はどこか侘し気に呟いた。
「結局さあ……僕たちの行動は、ゴミをひと時、ゴミ箱に捨てるのと同じなんだ。ゴミ箱に捨てただけじゃ、要らないものが溜まるだけでしょ……それと同じ。そもそも出さない方法が必要なんだよね……」
独り言のように述べて、十条は皮肉な笑みを浮かべた。
「BGMは殺しをビジネスにしているから、ゴミを増やさない方法は考えない。現行、荒っぽいところまでしかやらない……“やれない”と言ってもいいかもね。殺して、焼いて埋めるか海に流してオワリってとこ。この方法は、そろそろ行き詰まるだろうなあ……イタチごっこだもの」
現在の悪党が根こそぎ死んだとしても、次の悪党は自然と現れる。光と闇の関係ほど明瞭でもなければ対等でもない。一の悪が千も万も増殖することや、おびただしい群衆になることは珍しくも何ともないし、物語のように対抗し得る正義の味方が現れる保証はない。昨今は姿の見えない悪党も多く、ネットの向こうに潜んだり、家庭内や職場のみ本性を現す奴もいる。日頃、なに食わぬ顔でまともな仕事をしている人間が、だ。
「十条さんは、世界平和でも成し遂げるつもりですか?」
ハルトの問い掛けに、十条は日向のように笑った。――まさか、本当にそうなのかと思わせる顔だったが、彼は一笑に伏して首を振った。
「一人の英雄が立つ時代は終わったよ。そして僕は、只の悪党だ」
「どうも、そう見えないんですよね」
探るような視線から逃れるように、十条の笑顔は新聞に向いている。
「ハルちゃんにも、そのうちわかるさ。僕は紛れも無く、未春の育ての親だよ」
「……じゃあ、仮に悪党だとしても、貴方が居るこの国は良くなると思います?」
唐突だなあと笑いながら、十条は首を捻った。
「僕は只の悪党に過ぎない。良くしたいと思う、賢い人が多ければいいんじゃないかな。できれば、同じ思想を持つ人たちが良いね。民主主義なんだし」
安直な回答にハルトは少し笑った。良し悪しで決められるなら、世界はとても楽だ。
『良いこと』は人それぞれであり、『正しい』の形は日々揺らぐ。疑問も抱かず、戦争に突っ走ったり、淘汰される人々が後を絶たないのは、誰かの『正しい』が暴走しているか、誰かの『正しい』が弱いかだ。良し悪しの線引きを持たず、互いが同居していることの方が余程多く、そこに利益や他国、自然の脅威が関わると、ますます善悪は混乱していく。
「結局のところ……教育だと思うな」
義務教育の国でありながら、十条は切なそうに呟いた。
「正しい方へ導くのは、正しい知識だからね。でも……悲しいことに、今の日本の教育は、リッキーを教室から追い出し、ラッコちゃんみたいな子を悲しませる大人を量産する。学校や教師がどうとかじゃあないんだ。些細で小さな綻びを無視して進むから、良くならないと僕は思う」
「政治家か教師になれるんじゃないですか」
「無理だよ」
「何故です?」
「政治家や教師が、朝起きられないのはまずいでしょ?」
これにはハルトも苦笑いを返した。
「徹夜をやめればいいんですよ」
十条は朗らかに笑って首を振った。
「そう簡単にいかないのが夜型人間の辛いところさ。静かだから集中できるんだ。伝統工芸家に深夜働く人が多いのと同じ」
「そんなに集中して何をしてるんですか?」
「色々と」
にこ、と笑って、悪党を名乗る男は新聞をきちんと折り畳んだ。
「美味しかったよハルちゃん。ごちそうさま」
よっこいしょ、とおっさん臭く椅子から立ち上がると、小脇に新聞をいくつか手挟んで片手を挙げた。
「さあて……うるさい甥っ子が戻る前に退散しよう。午後にまた来るよ。宜しくね」
さららが居ないDOUBLE・CROSSは、何となくがらんとしていた。
もともと未春は愛想が無いし、ハルトも十条ほど笑顔を振りまいてはいられない。知らなかったが、その静寂は学校の放課後を思わせるそうだ。日差しは明るく差し込み、生きた人間が居るにも関わらず、室内は役目を終えたように沈黙している。
ハルトがカウンターを拭いていると、おずおずと近付いてくる足音があった。
振り向くと、両手を前で重ね合わせた倉子が、呼びつけられた生徒みたいな顔をしていた。そういえば、もともと出勤日だったが、さららの不在によってカフェが閉じた為、急きょ休みになっていた筈だ。
第一、こんな思い詰めた顔でやって来たことは無い。
「ラッコちゃん?」
どうしたの、と尋ねるや否や、赤いタータンチェックのマフラーを巻いた倉子は神妙に頭を下げた。
「ハルちゃん、ごめんね」
唐突な謝罪にハルトは面食らった。謝るようなことをされた覚えは無い。
「えーと……何のこと?」
「瑠々子が来たって、みーちゃんに聞いたの」
「そうだけど……なんでラッコちゃんが謝るんだ?」
「私がうまく説得できなかったから、かな……」
歯切れの悪い口調で言うと、倉子は申し訳なさそうに眉をひそめた。
「前に話した友達のこと、覚えてる? それがあの子なの」
「ああ、そうだと思った」
頷くと、倉子はますます申し訳ない顔になる。
「リッキーも怒らないであげて。イジメ受けてる子の気持ちがわかるから、つい意気込んじゃうだけなの」
「怒らないよ。リッキーの意外な過去は俺も聞いたし、良い奴だってのはよくわかる」
「……ハルちゃんはそう言ってくれると思った」
ほっとしたように言うと、倉子は足元に挨拶にやって来たスズとビビを撫で、ようやく彼女らしい笑顔になった。
「……あの子、結構ひどい状態なのか?」
「そだねー……暴力はあんまりないみたいだけど、無視されたり、援助交際してるとか、万引きしてるとか、根も葉もない噂をするの。……それはさ、あの子にも、変わらなくちゃいけないところはあるよ? でも、どんな時だって、やっぱいじめる方が悪いよね」
「殺し屋は偉そうに言えないけど……イエスと答えておく」
「なあにそれ」
倉子は年頃の子っぽくケラケラと笑った。
「……今の子って、大変だよな。何処に居たって、見られてる感じで」
「だよね。瑠々子にも言ったんだー。SNSなんてやめちゃいなよって。あたしも連絡くらいしか使わないし。でも、あの子カワイイでしょ? やめらんないんだよね……ディスられても、目立つ化粧とかファッションとかさ。直接、取り囲んでいじめてたらあたしは止めるけど、スマホの中身はどうにもならないよ。先生に言ったって、限界あるじゃん? しかも、あの子がああいう格好してると、具合が悪いの」
昨日の瑠々子の化粧や、異様に短いスカートを思い出して、ハルトは頷いた。
「あれがアイデンティティーとかバイタリティーとかならいいんだけどさあ……非難されると、落ち込んで泣いちゃう派なの。みーちゃんにお熱なとこも含めて、すっごく不安よ、あの子」
「ラッコちゃんは大人だな。最初はメチャクチャやばい子だと思ったけど」
「ちょっと、どういう意味ー?」
ほっぺを膨らませる彼女に、ハルトは笑った。
「殺し屋向いてないよ、ラッコちゃん。悪徳業者なら警察が取り締まればいいだろ」
「もぉーハルちゃんまで十条さんみたいなこと言うー!」
軽口叩いて笑い合っていると、カラカラと店の引き戸が開かれた。
いらっしゃいませ、と、こなれてきた声を出すと、またもや女子高生だった。
だが、倉子とは制服が異なる。上下が青みの強い紺の制服は地味で、化粧っけのない顔をしているが、瑠々子よりも垢ぬけた感じの子だった。外国人のように四肢が長く、鼻筋の通った顔は可愛らしかったが、きつい印象にも見えた。
ふと、誰かに似ていると思った。
「何か、お探しでした?」
きょろきょろと周囲を見渡したところからして、また未春目当てだろうか。今日は倉子と入れ替えである青年は、今頃きっかりの時間に現れるために仕度をしている筈だった。
「――アナタ、野々ハルトさん?」
「はい、そうで――――」
言い掛けた瞬間、ハルトの頭の中はストン!と殺し屋の方に切り替わっていた。
少女がスクールバッグから無造作に取り出した黒い拳銃を見るよりも前――ややおぼつかない日本語の段階で働いていた勘が、考えるより早く体を動かしていた。
近くに居た倉子をカウンターの後ろに突き飛ばし、驚いた猫たちが風のようにキッチンへ走り抜けるのを見届けると、自身は逆方向に飛び退いた。
少女はそれらしい格好で構えていたが、どう見ても手の押さえ方が不都合に見えた。照準を合わせているのかも怪しい発砲は、続けざまに鋭い爆竹めいた音を響かせたが、獲物には掠りもしない。業を煮やした様子で唇を噛むと、ソファーの後ろに入った青年に怒号を響かせた。
「出て来い! Son of a bitch!!」
日本語とネイティブな発音の『最低なヤツ』という
しかも、既視感のある顔立ち――――
「もしかして……Wait a moment!」
両手を上げて制止を発した青年に、少女が応じる気配は無かった。怒りに燃える瞳で銃口を掲げている。
「Screw you!!」
くたばれと叫んで撃とうとしたときだった。いつから其処に居たものか、すぐ近くの椅子の陰から、ツバメのように飛び出した影がある。
未春だ。彼の手には、開き切った状態で持ったハサミが有った。
わずか刃渡り6センチ程度――紙を切るのがやっとのそれを凶器にできるらしい男は、少女が握った拳銃など意に介さぬようで、真っ向から突っ込んでいる。
「殺すな!」
ハルトの鋭い声に、未春は返事をしなかった。引き金を引こうとしていた少女の口から短い悲鳴が上がる。ガチャン!と重たげに落ちたのは拳銃だ。
「ッ……!」
慌てて拾い上げようとするが、長い足が部屋の隅に蹴飛ばしてしまう。その細い両手の親指にはスッと赤線を引いたような切傷が刻まれていた。みるみるうちに赤を零れさせる傷は、仮に拳銃を掴んでも撃てないだろう。咄嗟の制止だった為、少女の指が千切れていないことに安堵しながら、ハルトは立ち尽くしていた未春の肩を叩いた。
「……Thank you……お前が居て助かった」
「……」
未春は答えなかったが、ハサミを片手に、カウンターの端から青い顔を覗かせた少女を振り返った。
「ラッコちゃん、ケガない?」
「う……うん……」
床にぺたんと座って放心気味に頷いた倉子を見てから、未春は、発砲した少女の傍に片膝つくハルトに向き直った。
「ハルちゃん、警察呼ぶ?」
青年はちらと顔を上げて表を見た。都合が悪いことに、騒ぎと銃声を聞き付けた多くのギャラリーが居た。警察が来れば、この少女は最低でも、罰金と退学処分を受け、前科持ちになる……――
「……黙ってても、すぐに来そうだ。少し待ってくれ」
未春にそう言うと、戦意は喪失していないらしい少女を覗き込んだ。よく見ると、日本人よりも目鼻立ちが深く、特に鼻筋は、見たことのある人物によく似ていた。
「君……ソフィア・タチバナさんじゃないか?」
少女は暗い顔を上げた。
「ハルちゃん、知り合いなの?」
「……俺がクビになった仕事の、依頼人の娘だ」
わずかに目を瞠る青年に頷いてから、ハルトは睨みつけてくる目を見つめ、はっきりした口調で尋ねた。
「日本語、わかるんだろ。落ち着いて、俺の話を聞いてくれないか。わからなかったら英語で話す。この間……基地内で俺を狙ったのは君?」
「……」
不服そうに頷く。日本語が通じるのを確認し、ハルトは続けて尋ねた。
「アメリカで、ミスター・アマデウスの部下を殺ったのは?」
「Who is the person?(誰のこと?)私が殺したいのはオマエだけよ……!」
嘘を吐いている顔ではない。にわかに外が騒がしくなってくる。時間がない。ハルトはできるだけ声を潜めると、いつかの倉子のように怒りに燃える瞳を見つめた。
「信じられないと思うけど、聞いてくれ。……あの時、君の父親が依頼した標的は……」
一瞬、言葉を呑むべきか迷ったが、彼女だけに届く声ではっきり言った。
「――君なんだ」
少女の目が、怒りの他のショックで渦を巻いた。
「You’re a liar……!!(ウソ!)何、バカなこと……パパが私を殺したいわけない……!」
「……俺もそうだったと思いたい」
大勢の視線を感じる。サイレンの音が遠くから聴こえてきた。
「彼は事業に失敗して、大金を欲しがってた。向こうで出来た金づるの女が出した条件が、君の死だ。自分の子供のために、認知済みの君を邪魔だと考えた」
「I don’t believe this!!(信じられないわ!)……パパは……私を裏切らない……!」
それ以上、ハルトは伝える言葉を持たなかった。
この依頼は、BGMでは珍しいタイプのものだった。
悪党ばかり相手にする中、罪も無いティーンエイジャーを標的にした依頼は異色であり、ハルトも思わず上司に確認を取った。
しかし、アマデウスはゴー・サインを変えなかった。故にハルトは大人しく従い、いつもそうであるように、この少女はもしかしたら麻薬中毒者で、周囲にドラッグをばら撒いている元凶なのかもしれないと思うようにした。
ところが事態は全く逆行した結果を生む。
『死人に口無し』――皮肉にも、あの日、彼女の父親イサオ・タチバナは、わざわざ見物に来たが為に、“結果的に ”娘を裏切らずに済んだのである。
「自分の目で確かめないことには、信じられない……」
帰ってくれと告げるハルトに対し、彼は痩せて神経質そうな顔で首を振った。
日本人には多いタイプだが、そんなに信じられないなら自分でやればいい、と当時のハルトは思った。何かと頼めば済むと思っているくせに、信用も薄ければ、求める基準もやたらと高いのは、こうした人間の特徴だった。しかも、気に入らなければ全額返せなどとふっかける始末だ。
蒸し暑い夕暮れのことで、標的が迫る時刻になっても隣でうろうろしている男に、ハルトの苛立ちも募っていた。子供を殺すだけでも嫌で堪らないのに、その父親に殺害の瞬間を見せるなど、悪趣味な殺人鬼にでもなり下がった気分だった。
「いよいよか……これで俺は助かるのか……」
ぶつぶつと唱える男を殴って気絶させたい衝動に駆られつつ、ハルトはつい言ってしまった。
「……貴方は日本人でしょう? 平和な国に生まれたのに、どうしてこんな依頼をするんですか?」
いっそ辞めると言ってくれたら、どんなにか良いだろう。
そう思いながら告げたが、男はハルト以上に苛立ちに血走った目で言った。
「……お前みたいな若造にわかるものか……!」
タチバナ氏はそう言うと、寒くも無いのに歯をカチカチ鳴らしながら、呪うように呟いた。
「上司の指示で……好きでもない女と結婚させられて、そいつのバカ親共の借金背負わされたんだぞ!! 汗水垂らして働くのは俺なのに、どいつもこいつも学費出せだの介護費出せだの……のらりくらり暮らしやがって……!!」
散々、どこかで喋っていたのだろう。流暢な文句を並べ立てられ、ハルトは心底呆れた様子で男を見やった。
「……だからって、お子さんには関係ありませんよね? 親に死を求められるほど、あの子が何かしたんですか?」
「黙れ……!! 人殺しでメシ食う屑野郎め! 家族を作ったこともないくせに……偉そうな口を利くんじゃない!!」
自分こそ、偉そうに言い放つ『作った家族』とやらは、果たして本当に家族だったのだろうか。それ以上の議論は諦めて、ハルトは標的が現れる方を振り返った。ちょうど、ターゲットは建物の角を曲がったところだった。いかにもアメリカのティーンといった風の少女は学校帰りらしく、カジュアルな私服にスクールバッグを背負って一人歩いていた。ハルトには悲しい程、普通の少女であり、どちらかといえば清純で賢そうな娘だった。標的が細いため当て辛いが、胴一発でも終わってしまうだろう。
胸焼けの様な嫌悪感に駆られながら引き金を引こうとしたとき、やにわに伸びてきた手が小銃をかっさらった。
「いつまで見てる! 貸せ!」
「おい、やめろ!」
何を焦ったのか、まるで戦闘ストレスに晒された兵士のように、息の上がった状態でタチバナは銃を構えた。恐ろしいことに、その照準方向は目的の娘にさえ向かっていない。
手近な別方向から歩いてきた、更に若い子供のグループに向いている。
「あんたいい加減に……!」
銃を奪おうとしたが、男の目はイカれ、引きつった笑いを浮かべている。その顔には見覚えがあった。ミスター・アマデウスが大嫌いな――
ヤク中の引き金が引かれるより早く、説得ができないことを悟った青年は、結論を下すと共に流れるように拳銃を引き抜き、スライドを引いてトリガーに指をかけた。
夕闇迫る静けさに、断末魔の悲鳴にしては軽い銃声が響いた。
近距離射撃で頭部を撃ち抜かれた男は、黄ばんだ歯を晒した笑みを浮かべたまま、赤をぶちまけて絶命した。
――動けない状態にすれば良かったのに、何故殺してしまったのか、ハルト自身もわからなかった。
「……確かに俺は、君のお父さんを殺した」
「…………」
ソフィアは黙って、憎い相手を睨んだ。血が滲みそうな赤い目尻に、涙が浮かぶ。
「俺が憎くて仕方ないなら、また狙いにくればいい。でも……、一つ教えてくれないか」
クビの原因になったとはいえ、ミスター・アマデウスはこの件の事後処理を非常にうまく行った。タチバナ氏への情報漏れと、覚醒剤が関わったことによる恩赦のようなもので、ハルトが彼を殺した証拠は残っておらず、この情報はBGMの記録にも残されていない。
「君は、誰に俺のことを聞いた? それと、拳銃は何処で手に入れたんだ?」
「……Letter……差出人不明の手紙。拳銃も一緒に入ってた……」
隠しても無意味と思ってか素直に答えると、少女は胸に下げていた十字架を血濡れた手で握り締めた。
「クリスマスプレゼントみたいに……綺麗に包装されてたわ。天国のパパからの贈り物だと思った……」
話を聞いても、少女の目に宿る怒りは変わらなかった。微かに、何かに揺らいだようにも見えたが、それは店の前に停まった警察車両の赤いライトのせいかもしれない。
慌ただしく入ってくる警察の靴音を聞きながら、ハルトは少女を見つめた。
殺しの犠牲者という点では、同類である相手。
もしかしたら、自分がなっていたかもしれない、復讐者という魔物。殺し屋と、どちらが魔物だろうと思って、笑えない冗談に可笑しさがこみ上げた。
「どうも、えらい騒ぎですなあ」
背後から掛けられた声に振り向くと、一人の警察官が立っていた。
五十路も半ばとみられる小柄な男は、警帽をちょっと持ち上げて、猿のようにくしゃっとした笑みを浮かべた。
「山岸さん、御苦労様です」
機械的に頭を下げたのは未春だ。顔見知りの警官らしい。その警官に、未春はいつ拾ってきたのか、布巾に包んだベレッタと、自分が持っていたハサミを手渡した。山岸と呼ばれた警官は、何気なくそれを受け取り、近所の親父さんめいた顔つきで未春に笑い掛けた。
「店内で警察沙汰は珍しいねえ」
「すみません。十条さんには連絡しておくので宜しくお願いします」
「あ、十条さん知らないの? どうする? 待った方がいいかい?」
――この警官、さては。
気付いたハルトの手前、ソフィアの肩を若い警官がそっと叩いた。
少女は大人しく立ち上がったが、きりりとした眼差しでハルトを睨んだままだった。ハルトも、静かな双眸を向けたまま、抱えられるように立ち去る少女を見送った。
徐々にざわめきが明快な実況見分になりつつある中、ぼんやりするハルトを余所に、未春は仕事と同じようにてきぱきしていた。呆けていた倉子に怪我が無いか確かめて奥の椅子に座らせ、十条に電話を掛けた。ハルトが切り替えの早い様子に感心していると、短い応答で済んだらしい電話を切った未春は、やって来るなりそっと耳打ちした。
「――山岸さんとその同僚は、うちの関係者」
呼吸程の小声にハルトは頷いた。やはり、BGMの息が掛かった警察か。件の山岸は部下に指示を出す傍ら、既にハルトを知っているらしく、温厚な笑顔で二人の青年の前に改めてやって来た。
「どうもはじめまして、横田交番に勤める山岸と申します。野々くん、だったかな?」
「はじめまして。ハルトでいいです」
「いやあ、君もハンサムだねえ。この店は美男美女揃いだ。おっと、セクハラになるな」
わかりやすいリップサービスにハルトが曖昧な苦笑いを返すと、山岸は穏やかな皺に老獪な笑みを刻んで未春に向いた。
「十条さんは、なんて?」
「すぐにこっちに来ますが、犯人の身柄はそちらで送検して良いそうです。標的の如何だけ、内々に頼むと。それと――」
未春は店内の奥に所在なく座った倉子を示した。
「あの子は本件と無関係ですから、今のうちに自宅に帰したいのですが」
今のうち、とは恐らく、刑事やマスコミに捉まる前に、ということだ。現場に居合わせた目撃者を帰そうとはどえらい申し入れだったが、山岸はあっさり頷いた。
「わかった。うちのもんに送らせよう。詳しいことは十条さんを交えてからで」
お辞儀をして現場に戻って行く山岸に一礼して、ハルトと未春は一旦、倉子の傍に引っ込んだ。二人が近くに来ると、倉子は心細そうな顔を少しだけ緩めた。その足元には見張りのようなスズが寝そべり、膝には甘え顔のビビが居た。
「ハルちゃん、だいじょぶ……?」
何とはなしに尋ねた倉子に、ハルトは頷いた。
「俺は平気だよ。それより悪かった、ラッコちゃん。怖かったろ?」
頭を下げたハルトに、倉子は膝の上のビビを撫でながらゆるゆると首を振った。
「……あたしもヘーキ……でも、よくわかんないや。怖かったのか……びっくりしただけなのか……」
小さく出た感想は、倉子にしては慎重な声だった。猫を抱く表情は強張り、騒然とする店内を見つめる目は落ち着かない色をしつつも硬直していた。驚愕と恐怖の両方なのかもしれない。
「……拳銃の音、どうだった?」
「……すごい音だね。音だけで、死んじゃうかなと思った。耳よりお腹がずっしり重い感じがする」
「そうだな。あの子がヘタクソじゃなかったら、俺が死ぬか、ヘタクソなりに運が悪いと、どっかが吹っ飛んだ」
倉子は黙って頷いた。日本に居たら、ほぼ味わうことのない――死を招く轟音。
「ラッコちゃん、今回のことは、“見てない”で通して」
未春の無感動な指示に、倉子はちらっとその顔を見て頷いた。十条の指示なのだろう。犯人のソフィアが女子高生だった辺りや、狙われたのが同僚のハルトという点からして、マスコミが下世話な見解を倉子に被せる可能性は明らかだった。彼女の為には、あらかじめ現場に居なかったぐらいの知らぬ存ぜぬを決め込むのが最も良い。
「……ね、ハルちゃんは何回くらい使った事あるの?」
銃を、と言わないのは周囲を見回る警察を憚っているらしい。「数えるのやめてから、わからない」と自嘲の笑みを浮かべたハルトに、倉子は笑わなかった。数え切れない回数、何が起きたかわかっている目だった。
力也が口にした百発百中は言い過ぎだが、ほぼ撃った数だけ、鳥ではなく、人間の体が、命が、弾け飛んでいる。
「……そっか」
小さく呟くと、警察に伴われて帰って行った。山岸が気を利かせたのか、一般車で裏口から送られた倉子は、最後まで思案顔だった。
その後はひたすら検証と聴取が続いた。もはや自分は被害者ではなく加害者なのでは?と思うほどみっちり続く聴取に、日本警察はご苦労なもんだとハルトは内に溜息を吐き続けた。標的にされたハルトと、正当防衛とはいえ外傷を負わせた未春が、揃って事情聴取から戻る頃、陽はとっぷり暮れていた。二人とも未成年ではないが、身元保証人として迎えに来ていた十条は、車に乗るなり最も疲れたといった調子で溜息を吐いた。
「どーも、おっかしいんだよねえ……」
「何がです?」
尋ねたのはハルトだが、隣で窓の外を向いている未春も聞いているようだった。十条は片手にハンドルを握り、整っていないぼさぼさの黒髪を弄りながら、首を傾げた。
「ソフィアさんが来日したのは、基地関係者だったお母さん側の親戚が、母子共に呼び寄せたからで……ハルちゃんを狙ってきたわけじゃあなかったんだよ」
つまり、手紙と拳銃が届けられたのはその後ということになる。
「ああ、君のことを殺人者だから捕まえろって随分騒いでいたようだけど、証拠は無いから安心してね。日本警察にアメリカでの活動記録は開示されないし、警察内部にもBGM関係者は大勢いるから」
「その辺は別にいいんですけど……本人の証言を信じるなら、ミスター・アマデウスのスタッフが殺された件とは、無関係ですよね?」
「うん。拳銃は、あらかじめ日本国内にあった物と考えるのが自然だよねー……」
もちろん、登録されている拳銃ではない。出所不明のベレッタを所持し、秘匿されているハルトの前歴を知る上、いきなり女子高生に送りつける人間が国内に存在することになる。
「郵便の方は……どうです?」
「残念だけど、郵送じゃなかった。直接、彼女の家に届けられたみたいだよ。ソフィアさんが君に言った通り、クリスマスプレゼントみたいな綺麗な包装だったって。死のサンタクロースとか言われてたよ」
十条はあくびをして目を擦った。
「アマデウスさんには伝えたから……まあ、彼とっくに知ってたけどさ――とりあえず君の情報流出の方は調べてくれるって。僕はベレッタの方を当たるから、念のため身辺には気を付けてくれるかい?」
ハルトが頷くと、それまで置物のように黙していた未春が口を開いた。
「十条さん、店はどうします?」
「いやあ……こっちは無理そう。マスコミ向けのポーズなんだけどさ、現場検証に警察入るから。さすがにこの騒ぎじゃあ、ラッコちゃんとリッキーも来られないでしょ」
当然、学生たちはそれぞれの親から出禁を食らうだろう。もちろん、娘と息子を心配しての、ごく健全な親心である。立派な子供には、まともな親が居るもんだとハルトは思ったし、十条も同じことを言っていた。きっと今夜から、店の周囲をマスコミが小蠅のようにウロウロする。どうせ、顔を合わせれば無遠慮で失礼な質問攻めに遭うだろうから、二人が来ないのはかえって良かった。どのみち、さららが復帰できなければカフェも運営できないし、十条は店は趣味だからと気楽に流していた。
「十条さん、この後は戻りますか?」
未春の問いに、十条は首を振った。
「いや、僕は車置いてそのまま、さらちゃんのとこに帰るから。何かあったら電話して」
「わかりました」
「じゃ、宜しくね」
店の裏手に滑っていく黒のセダンを見送って、二人の青年はいつかのようにしばし立っていた。黄色いバリケードテープが貼られた店を振り返り、未春はぽつりと言った。
「腹減ったね」
「だな。アマデウスさんが、日本の警察ではカツ丼とかいうメシが出るって言ってたけど、やっぱデマだったか」
「ハルちゃん、それはドラマだけ。あと、カツ丼は犯人に出すんだよ」
「なんで犯人に出すんだよ?」
「情に訴えて自白させるため」
「なんだそりゃ。それが日本の平和的解決法か?」
だったらカツ丼とやらは、犯罪が起きる前に振る舞った方がいい。
わけもなく可笑しくなりながら、ハルトが猫たちが待ち受ける家の戸へ向かうと、未春が背後で「あ」と呟いた。
「どうした?」
「ハルちゃん、リッキーに電話しないと」
そう言って差し出した電話には、十を越える着信が残っていた上、メールが届いている。
ハルトも自分の電話を確認して苦笑した。力也の慌てぶりが見えるような脱字と誤字に溢れた文面に、どこか気持ちが和らいだ。
〈センパイ、大丈夫でか? 毛がしてませんか? 俺で切ることあれば何でもするので、心配だから連絡くさい!〉
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