三 街の外

 次の日、首都の城壁の外の、少なくなったとはいえまだ魔獣の出現する森の中。数人がその森の奥に踏み入っていた。

 老師と、少女と、大司教と、屈強そうな冒険者が二人。

 少女は白を基調とした司祭見習いの服に、錫杖を携えていた。大司教は普段の厳かな装飾のある服ではなく、やや軽装だが少女と同じく白を基調とした、大司教の威厳が保たれる程度の着込みをしていた。

 冒険者の一人は、革鎧を主として、部分的に鉄甲などを着けた、やや身軽そうな姿で、ロングソードを携えていた。

 もう一人は、全身を重厚な鋼の鎧で身を包み、身の丈ほどの両手剣を担いでいた。いずれも装備の上にマントを着用していた。

 老師は黒っぽく分厚い布でできた、袖や裾が大きく広がった、少し変わった服をベルトで留めていた。ベルトにはロングソードよりもやや短く、やや弓形に反った形の得物が黒い鞘に収められていた。

「老師様、その獲物は何なのでしょう?初めて見る物です」

 少女をはじめ、二人の冒険者も老師の珍しい武器に興味を示した。

「ああ、これはかつて私の師から頂いた物で、師の故郷でカタナ、と呼ばれる武器です。我々の国では作られておりません。とても熟練した職人だけが打つことができるものとされています」

 老師はカタナと呼ばれたそれをベルトから外し、鞘からゆっくり抜いて一行にそっと差し出して見せた。

 それは片刃の刃物で、刀身には美しい波模様が切先から縦に走っていた。一同はその刃物に、何か吸い込まれるような美しさを感じ、息を呑んだ。

「かつてドラゴンを撃ち倒した聖剣ほどではありませんが、使いこなせればなかなか頼りになる武器です」

 そう言って老師はゆっくりと、かつ無駄が削ぎ落とされた所作でカタナを鞘に納めた。

「さあ、そろそろ魔獣も出てくるところでしょうか。みなさん、気を引き締めて参りましょう」

 老師が言うと、はい、と少女はキッと顔を引き締めた。

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