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友人から「だ、大丈夫だって! 諦めるなよ!」と檄を飛ばされたが、流石に九千ピースのジグソーパズルがようやく完成に近づいたのにうっかり机を蹴飛ばして全部床に落ちたのだからもう諦めていいのではないだろうか。五体を床に投げ捨てて、俺は一言天井を見つめながら呆然と呟いた。
「あーあ、世界滅びねーかなー!」
「ジグソーパズルに対する熱意が凄いな」
七時間以上かけて作り上げたパズルが一瞬で死んだのだから熱意があったというよりも心が複雑骨折している。
「ま、まあそういうこともあるよ。とりあえずご飯にしようぜ! 宅配ピザとかでいいか?」
「ピザ……ドミノ……長時間の労力……ジグソーパズル……死んだ九千ピース…………あーあー!」
「どう足掻いてもパズルの失敗に帰結するんだな……」
「でもピザ食いてえ……カロリー欲しい……」
「お! やる気のためのカロリーだな! 任せとけ!」
「違う……世界を滅ぼすカロリーが欲しい……」
「お前の世界滅亡へのカロリー低くねえか?」
とりあえず友人がピザを頼むのを聞きつつ、そこら辺にあったピザのチラシを見てトッピングをしこたま付けてやった。あとサイドメニューも十品くらい付けておこう。人の金だからどうでもいい。むしろ人の金なので大量に頼んでやろうという意気込みで注文を上乗せしていった。
「お前、鬼かよ」
「うるせー、俺は今愛しのパズルに愛想を付かされて傷心中なんだ」
「はいはい。とりあえず拾おうぜ」
九千ピースを拾い集めて、また作り直すという作業が始まる。
宅配ピザは美味しかった。ジグソーパズルと別れてピザと結婚しようと思う。
……十時間後の俺から一言。
『これ一ピースが足りなくね……?』
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