15
「キビキビ働けー、メイドたちー!」
「なんで俺が女装を……!」
と言いながらもちゃんと接客をする辺り赤山優也は真面目なのである。不機嫌そうな顔をしているものの、客前に立つと不器用な笑顔で接客だ。
「い、いらっしゃいませえ」
「似合ってるじゃないか、優也」
「ば、アンタまじで来たのか!?」
女装メイド喫茶の世界観ガン無視のにやにやと笑う和服女は、赤山の隣に住む霊能力者の葵マツリだった。片目を錦織りの布で隠す葵は何かと(主にセクハラ的な意味合いで)赤山に構っていた。
知り合いに接客するという気まずさを感じながら接客を続行する赤山は無愛想に問う。
「で、注文は?」
「……態度についてはまあいいだろう。ケーキセットを頂けるかな?」
「あいよ」
返事をしてバックヤードに注文を通そうと歩き出したときだった。
不意に風によって、メイド服のスカートが捲れ上がる。スパッツを履かなかった赤山はあからさまにパンツを見せびらかすことになった。余りにも突然のことに声すらなく数秒間の呆然を生む。
その間はもちろん視線は赤山に集中したし、沈黙が張っていた。
数秒たってようやく我に返った赤山はスカートを押さえて後ろの葵を睨む。
葵は慌てながら「(莫迦、やめろって言ったろ!)」などと小声で何かに言っている。
叫び怒りたい気持ちを必死に堪えてまた戻っていく。のだが、今度は転んでテーブルにあった珈琲用ミルクを自分自身にぶちまけた。
もうそういう行為で出されたようにしか見えない。というわけで今度は葵も言い逃れできなかった。
「すまない……」
そして赤山は顔を真っ赤にして葵に叫んだ。
「変態霊能力者あああああ!!」
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