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「もっかい!」
先輩にゲームで負け続けて早三時間が経過している。その間に行われた試合数は四十七戦であり、試合結果は言うまでもなく僕のスコアボードはバツ印が四十七個綺麗に並んでいた。
先輩はげっそりとうんざりを混ぜた顔をこちらに向けて唸り声のように低い声で一言。
「もう勘弁してくれ……」
「駄目です! 僕が勝つまで止めません!」
パワフルに駄々をこねてゲームスタートである。
「この後予定があるんですけど……」
「そうやって集中乱そうとしても無駄ですよ!」
「そう言いながら自爆すんのやめない?」
即死である。先輩の狡猾な罠にはまって四十八戦目も黒星を付けられた。くやしい。
「わかりました……」
「やっと解放された!? じゃあ俺は、」
「明日はスポーツで勝負です!」
「正気じゃねえ」
まずはサッカー。
「ハンド!」
「何でボールを手で触っちゃいけないんですか!」
「そういうルールだからだよ」
次は野球。
「アウト!」
「はあ!? 今のセーフでしょ!」
「思いっきりアウトだ」
次は水泳。
「がばごぼぼぼぼぼぼ」
「お前カナヅチなのかよ!」
料理、勉強、じゃんけん……もはや全て負けているので相性が刻まれている気がする。
しかし先輩も今日で卒業だ。故に、最終決戦。
今日こそは何としてでも勝つという気合いを入れて、先輩の前に立つ。
「卒業おめでとうございます、先輩……。最終決戦です!」
「感傷に浸らせろよ……、けどその前に言いたいことがある」
首をかしげて先輩を見ると、居心地悪そうに頭の後ろを掻いて、深呼吸。
「お前が好きだ、俺と付き合ってくれ」
最終決戦でも負けた僕は、この後も先輩に挑んで負け続けるのだが、一つだけ勝ったことがある。
秘密だけど。
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