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 絶対に好きになるもんか、と思ったときにはもう好きになっていたことに気付いて頭を抱えたくなったのは言うまでもない。

 会えば口喧嘩で罵り合う奴に恋愛感情を抱いた俺は、まともにアイツを見れなくなった。それどころかアイツの名前を聞くだけで心臓は大変だし、しばらく頭から離れない。これほどまで人間の脳に『NGワード除外機能』が欲しいと思ったことはなかった。

 しかし不運にも(いや好きな人物と一緒の部活なのだから幸運と言うべきなのだろうが)顔を会わせなければいけないのでもはや精神崩壊寸前である。常にアイツを目で追ってしまうし、アイツの仕草に一々心が掻き乱されるし、果てにはアイツを美しいとすら感じてしまう。

 一緒の空間にいることが耐えられない。好きすぎて。

 部活を抜けてわざと戻る時間を稼ぐべく校舎のトイレを使おうと校舎に入ったときだった。

「おい!」

 ……今一番聞きたくない声なのに、追いかけてきたことが嬉しくて口角が緩む。

 振り返ればやはりアイツだった。不機嫌そうな顔も綺麗で、それが何だかムカついた。

「なに」

 あえてぶっきらぼうに答えないと、好きなことがバレそうだ。

 アイツはバツの悪そうな顔をしながら、

「調子悪いならさっさと帰れよ。……お前がそんなだと、あー……なんつーか、その……調子狂うんだよ! さっさと帰って治せバーカ!」

 途中は言いにくそうにしていたのに、その後は早口で捲し立てて部活へと戻っていく。

 ……嗚呼、嬉しい。アイツがそう思ってくれたのが、嬉しくてたまらない。

 顔の火照りが消えなくて、緩む口角を手で隠さなきゃ人に見られそうだった。

「お前のせいだ」

 吐き捨てた言葉は、アイツへの恋慕を感じさせた。

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