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「何を焦っている」
夜の研究室。薬品室や実験室とは違い、パソコンやプリンターなどの電子機器が置かれたそこは青白い明かりで満ちていた。
俺は助手が慌てた様子で机の中身や資料を引っくり返しているのを見て、一言。
助手は真面目を絵に描いたような存在であり、また仕事中に笑った様子を見たことがないから、冷たい印象もある。そんな冷静沈着の体現者の彼が額に汗をにじませて、汚れもシワも見当たらない白衣を放り出して慌てている。その様子があまりにも珍しくて、俺は思わず数秒間、呆然としていた。光景から見て、何かを探しているようだったがそれが何かはわからなかった。
「教授!?」
帰ったと思っていた俺が現れて驚いたのか、助手は狼狽えた表情を見せた。何を言おうかと迷って空中に視線を彷徨わせていたが、それだけであまり察して欲しくないものを探していることがわかっ。
しかし研究室に失くして困るようなものはなかったはずだ。とまで考えて、不意にある物を思い出した。俺の机に入っている『テラエネルギーシステム計画概要』のメモリだ。
危険極まりない計画であるため、凍結して机の奥で眠らせていたことを思い出す。
まさか。まさか……!?
ーーテラエネルギーシステムは、エネルギー増幅装置のことであり、例えば消しゴムを指で弾いた程度のエネルギーを大規模レールガンと同等の威力にまで増幅させるものだ。それはどのエネルギーにも適応可能なのだ。
つまり、レールガンの威力も増幅すれば、その規模は計り知れない。
そんなものを助手は探していたのか……!?
くそ、机の奥に入れていたのは失策だったか!
その時だった。
「あったあ!」
助手が、ついに見つけた。
探し物を、見つけたのだ。
「焼肉の無料券あったあああ!」
…………その後、詫びを込めて高級焼肉を奢った。
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