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何度も殴られる。腕で顔を守っているのだが、我が恋人は俺に馬乗りになったまま腕の上から何度も殴った。
彼女は所謂DV彼女だ。それを苦に思わないわけではないが、彼女は疲れているから仕方がないのだ。お世辞にも器用とは言えない性格だから、きっと疲れてこうなっているだけだ。
行為中でも乱れてしまうくらいには疲れているのだろう。性器は繋がったまま、俺は暴行受ける。
突如、彼女は俺の首を絞めた。
急なものでも呼吸は死に、視界が弾ける。
それでも俺の下半身からは快感が昇ってきた。彼女は腰を振っているらしく、苦痛と快感という二つが頭をバグらせる。
「ほら逝けよ! 私で逝け!」
響く言葉は、どちらの意味で捉えればいいのか。
そして首絞めから解放された瞬間、空気と現実が俺を犯す。絶叫しながら俺は逝く。
長い、絶頂。
それが緩やかになり、咳き込みながら、何度も呼吸をしたにも関わらず視界はまだ眩んでいた。不明瞭のまま、目を凝らして彼女を探す。
「…………ぁ」
彼女自身も理性が戻ってきたのか、動揺が聞こえる。慰めなきゃ、という使命感で手探りで恋人の手を見つける。それが余計に彼女の心を乱したらしく、彼女は叫ぶ。
「なんで、なんでもっと抵抗しないのよ! 死んじゃうかも知れなかったのに、なんで何もしないのよ!」
出来なかったからとは言えず、繋いだ手を引いて抱き締めた。
「しないよ、そんなの。君の手で死ねるならそれもいいよ」
「そんなのっ」
「岬」
愛しい恋人の名を呼んだ。
「反論があるなら、君が僕を守ってね」
ある種の呪いを彼女にかけて、抱き締めた。どこにも行かないでという意味も込めて。
人を呪わば穴二つ、なのだ。
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