第130話 毒持ち

 1階層でジャイアントワームを撃破して【捕食】、2階層で巨大ワニを打ち倒して【水中呼吸】を獲得して3階層、ここに居た、というか生えていたのは5メートルはありそうなサボテンだった。


「これは……」

『マスター、魔物です。名称は邪ボテン、【状態異常攻撃】を有しています』


【状態異常攻撃】か、ということはあの棘での攻撃を受けるとダメってことかな?


「クリード、持ってるわよね?」

「【状態異常攻撃】? 持ってるよ」

「じゃあ……」


 リンは助手席の窓を開けて杖を邪ボテンに向ける。


「燃やすわよ」


 杖の先に巨大な火球を生成。

 さらに魔力を込めていくのが見える。


 火球は大量の空気を巻き込みさらに燃え上がり放たれた。


 火球は寸分違わずサボ……邪ボテンに命中、巨大な火柱となって邪ボテンを包み込んだ。


 あっという間に邪ボテンは燃え尽きて邪ボテンの生えていた場所に魔法陣と階段が出現した。


「さぁサクサク行くわよ!」

「あ、はい」


 リンに促されて俺たちは4階層へと足を進めた。


「ヘビか」

「ヘビね」


 4階層で現れたのはとぐろを巻いた巨大なヘビだった。

 もはや小さな山のようになっているので体長はわからない。


 保有するスキルは【毒攻撃】、既に【状態異常攻撃】を持っているので魅力は感じない。


「リン、やる?」

「あたし虫とニョロニョロした生き物は苦手なのよね……」

「そっか、ならウルトよろしく」

『かしこまりました』


 自分で戦ってもいいのだが時短ということでウルトに任せる。


 ウルトは10分も掛けずに超巨大ヘビを撃破、5階層へと歩を進める。


 5階層で待ち受けていた魔物はこれまた超巨大なカエルだった。

 砂漠の真ん中に悠然と存在してるけどカエルって砂漠で生きていけるのか?


 有するスキルは【毒攻撃】……


「ウルト」

『かしこまりました』


 ウルトの体当たりが決まると、カエルの背中は爆散、一撃で勝負が決まってしまった。

 防御力は低かったのかな?


 6階層で出会った魔物は10トントラックよりも大きなトカゲ、こいつもスキルは【毒攻撃】と毒持ちしか居ないのだろうか?


 そんな疑問も持ちながらもウルトに任せる。


 数回の体当たりを食らわせると瀕死状態で痙攣し始めたのでトドメだけ俺が刺しておいた。


 《【毒攻撃】を獲得》


「わざわざ取ったの?」

「まぁ……【状態異常攻撃】の下位互換ではあるけど一応持ってなかったしね」


 とはいえ取るつもりもあまり無かったのだがあんなおあつらえ向きな状態になると……ね。


「まぁいいわ、さっさと7階層に進みましょう」

「うい」


 ウルトに乗り込み先を急ぐ。

 階段を下りるとそこには大量のクモが待ち構えていた。


「ひぃぃ……」

「うわぁ……」


 手のひらサイズの小グモが床一面にびっしりと、部屋の奥に4トントラックサイズの大グモが1匹……


 これは別に昆虫が苦手という訳では無い俺でも鳥肌が……


「ウルト……スキル持ってる?」

『【毒攻撃】です』

「またかよ……」


 ほんと【毒攻撃】ばっかり……


「ね、ねぇクリード? 早く、早くなんとかして?」


 珍しくリンがあわあわしている。


「燃やす?」

「嫌よ! 外になんか出たくない! 窓開けたら入って来ちゃいそうだからそれも嫌!」


 だろうね。


「じゃあウルト頼む」

『かしこまりました』


 ウルトは走った。

 ウルトが走った後には潰れた小蜘蛛の死体が道路のように続いている。


 ウルトは部屋の隅々まで舐めるようにタイヤを動かして全ての小蜘蛛を踏み潰した。


 全ての小蜘蛛を踏み潰したウルトが大蜘蛛に向き直る。


「え」

「キモ……」


 堂々と鎮座する大蜘蛛の足元からワサワサと小蜘蛛が這い出してくる。

 それは数え切れるような数ではなく瞬く間に先程と同じ光景が戻ってきた。


 ただ1つ違うのは、最初に見た時は俺たちは一歩離れた位置に居た。しかし今回はど真ん中に停車している。


 つまり……ウルトに張り付いて登ってきている小蜘蛛もたくさん居るのだ。


「いやぁぁぁ……」


 リンはついに涙目で震えながら俺の腕に抱きついてきた。

 なのでいつもしてもらってるように抱き寄せて外の光景が目に入らないようにしてやる。


「ウルト、終わらせて」

『かしこまりました。魔法を使用します』


 ゴウっと張り付いていた小蜘蛛が燃えて落ちる、炎を纏ったのだろう。


 今度は小蜘蛛を無視して大蜘蛛に向けて突進、触れるまでもなく燃え上がった。


 あっという間に大蜘蛛は燃え尽き、小蜘蛛たちも炎に包まれている。

 そんな部屋の中心に佇むウルト、凄い絵面だな。


 しばらく待つと大蜘蛛の鎮座していた場所に階段と魔法陣が出現、未だ燃えている部屋を放置して8階層へと進んでいく。


 8階層に降りた俺たちの目の前に広がったのは部屋中にびっしりと詰まっている蟻の姿。


「みっちり……これ何匹居るんだ?」

『感知の結果、2317匹です』


 多いな……


『名称ジャイアントアーミーアント、【思考共有】のスキルを保有しています』


【思考共有】か、便利そうだな。


「欲しいけどちょっと降りれそうに無いな、数を減らしてもらえる?」

『かしこまりました』


 ウルトが動き出すのと同時、蟻たちの視線が一斉にこちらを向いた。

 そして津波のように襲いかかってくる。


 今回ウルトは風属性の魔法を纏っているのか近付いた蟻はバラバラに砕けていく。


 3分の2ほどをウルトが粉砕してくれたので降りて強欲の剣を構える。

 炎の魔力を剣に流し込み【天翔閃】を乱れ打ち。


 炎の剣閃は蟻を斬り裂き燃やしていく。


「ウルト、スキル獲得しないんだけど」

『それでしたらおそらく奥のクイーンを倒さないと手に入らないものかと思われます』


 クイーン……一番奥のでかいヤツか。


「試してみようかな」


 練習してた時よりレベルは上がっている。

 毎日練習も欠かしてないし、多分出来る!


 全身に空間属性の魔力を纏ってイメージを固定……目標はクイーンの背後!


 瞬間、視界がブレる。


「ちょっとズレてるな」


 目の前数歩の距離にはクイーンの背中、転移自体は成功した。


「ほいっと」


 ジャイアントワームを倒した時と同じように剣に炎と風の魔力を流し込んで【闘気剣】を用いて攻撃力を上げてクイーンを貫く。

 少し魔力が多かったのかボンッとクイーンは頭を破裂させてその場に倒れ伏した。


 《【思考共有】を獲得》


「よし!」


 スキルを獲得したことでその概要が頭に思い浮かぶ。



 ◇◆


【思考共有】


 対象に指定した相手に自分のイメージを伝えることが出来る


 ◇◆


「これは……会話は無理な感じ?」


 なんか一方通行っぽい、あとでリンと試そう。

 そう決めてウルトに乗り込むとすぐに階段と魔法陣が出現したのでとりあえず9階層へと進むことにした。

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