第129話 魔王領の不思議なダンジョン
『マスター、迷宮と思われる反応を発見致しました』
魔王領侵攻2日目の午前中、ウルトから迷宮発見の報告が入った。
「どこだ?」
『ここから北東の方向におよそ3キロの場所です』
ふむ、ほぼ通り道だし昨日考えていた2つの迷宮のうち1つを発見、行かないわけにはいかないな。
『どうしますか?』
「行こう。リン、いいよね?」
「ええ、攻略したらどんな力が手に入るのか興味もあるしね」
リンの賛成も得たので迷宮に向かう。
「ここか」
迷宮に到着、どうやら
「よし、最速で攻略しようか……可能なら【解析鑑定】で俺の持ってないスキルを持つ魔物が居ないか確認してくれ」
『お任せ下さい。では出発します』
迷宮に突入した瞬間、景色が変わった。
「え? あたしたち迷宮に入ったのよね?」
「砂漠?」
辺りを見渡しても何も無い。
俺たちが入ってきたはずの入口さえ見当たらない。
「どういうことだ?」
「出口は……」
『感知出来ません。消失しています』
もしかして閉じ込められた?
魔王の仕掛けた罠だったり……?
「とにかく進もう……迷宮であるにしてもないにしてもどこかに出口はあるはずだ」
『かしこまりました』
このまま手をこまねいていても仕方ない、とにかく進もう。
迷宮であるなら最奥の悪魔を倒しさえすれば地上まで転移出来るはずだし……
それから2時間程走り回って分かったのは地平線まで続いていそうな景色ではあるが四方を壁に囲われていること、1辺の長さがおよそ20キロの正方形であることだ。
この中を走り回ったが次のフロアに続く階段や出入口は発見出来ず……これな真剣に閉じ込められたのかもしれない……
「どうしよう?」
「クリード……落ち着いてるわね……」
イレギュラーな事が発生した時ほど冷静に……俺が数年の運転手生活で得た教訓だ。
一旦停車してどうするか考えているとウルトが何かを感知した。
『微かな揺れを感知しました……何かが地面の下から近付いています』
次の瞬間、ウルトが後退。
目の前の砂が巻き上げられ何かが地面の下から姿を現した。
「うわぁ……」
「気持ち悪いわね……」
砂煙が晴れてはっきりとその姿が見えた。デカいミミズのような魔物だ。
「ジャイアントワームとかサンドワームとかそんな感じかな?」
「例によって見たことあるのね……それも日本の創作物なの?」
「そうだよ。ウルト【解析鑑定】よろしく」
『名称ジャイアントワーム、保有スキルは【捕食】です』
【捕食】か、どんなスキルだろう?
「リン、聞いたことある?」
「無いわね、初耳よ」
なら取っておいて損は無いかな。
それに……実戦で試してみたい技もあるしな。
「よしウルト、潜られたら厄介だし空中にアイツを飛ばせるか?」
『もちろん可能ですが提案してもよろしいでしょうか?』
「なんだ?」
ウルトからの提案か……なんだろう?
『私がジャイアントワームの下に潜り込んで巨大化しますので私の上で戦うのはどうでしょうか?』
それならジャイアントワームは潜れないし空中で勝負を決める必要も無くなるか……
「そうだな、やってくれ」
『かしこまりました』
ウルトは走り出す。
ジャイアントワームもそれに気付いたのか砂の中に潜ろうと動くがウルトの方が遥かに早い。
ジャイアントワームの下に潜り込み【変幻自在】を発動、背中(?)にジャイアントワームを乗せて巨大化した。
『成功しました』
「ナイス!」
車内にウルトが作った階段が出現したのでそれを上ってジャイアントワームと相対する。
「じゃあ実験に付き合ってもらおうかな……」
まずは【合成魔法】を使って炎と風の魔力を合成、そしてその合成した魔力を【魔力撃】を使って剣に流し込む。
さらに【闘気剣】を発動、剣での攻撃力を上昇させて準備は完了。
「よし……!」
【疾風迅雷】を使用して素早さを引き上げて突撃、ジャイアントワームも大きな口を開いて噛み付こうとしてくるが一歩横にズレて回避、その頭に剣を突き刺す。
ボンッと大きな音がジャイアントワームの体内から聞こえるとジャイアントワームは口から黒い煙を吐き出しながら暴れだした。
「あぶね!」
【瞬間加速】でジャイアントワームをケリつけてその反作用で離脱、大人しくなるまで見守っていると数分でジャイアントワームは動かなくなった。
《【捕食】を獲得》
スキル獲得アナウンスが聞こえたということはジャイアントワームを一撃で倒すことに成功したのか。
「お疲れ様」
俺が構えを解いたのを見てかリンが声をかけてきた。
「一撃で倒すなんて、何をしたの?」
「ああ、今のは【魔力撃】と【合成魔法】の合わせ技で炎と風の魔力を剣に込めてジャイアントワームの体内で爆発させたんだよ」
「体内で爆発……えげつない技ね……」
リンは若干引いたような顔をしているが爆発は外からダメージを与えるより内部爆発させた方が圧倒的に威力があると思うんだ。
懸念してたのは体ごと爆発して肉片塗れになることだったけど、最悪浄化魔法を使えばいいやと割り切って使ってみたのだ。
結果は成功、爆発の威力はある程度コントロール出来そうだしこれは使える技だ。
『マスター、前方に階段と魔法陣が出現しました』
前を見ると確かに下り階段と魔法陣が出現していた。
これは魔法陣に乗れば脱出出来るということなのだろうか?
「どうする?」
「進もう」
リンの問いかけに短く返して車内に戻る。砂漠だけあって暑かったのだ。
階段を下り2階層へ降りるとそこはオアシスだった。
ウルトの【万能感知】によると水の中にそれなりの大きさの反応が1つあるそうだ。【水中呼吸】のスキルを持っているらしい。
後ろを見れば当然の如く降りてきた階段は無くなっている、その水の中の魔物を倒せば帰りの転移魔法陣と先へ続く階段が現れると予想できる。
「水の中か……」
「あたしが引きずり出しましょうか?」
「そうだね、でも手加減してよ? 一応持ってないスキルだから取っときたいから」
「任せなさい!」
ウルトから降りるとリンは杖を取りだしてオアシスにその先端を向けた。
パリッと音がして巨大な雷撃がオアシスの中心、魔物が潜んでいる場所に向けてに向けて放たれた。
直撃して感電したのかすぐにオアシス真ん中に10メートルはありそうな巨大なワニが浮かんでくる。
デカい……
「はい、あとはお願いね」
「了解、ありがとね」
リンにお礼を言ってなら剣に魔力を流し込む。
弱点になりそうでかつ飛ばすなら雷属性だな。
雷属性の魔力を込めた剣で【天翔閃】を放ちワニにトドメを刺す。
《【水中呼吸】を獲得しました》
「よし、次行こう」
「えらくあっさりだったわね……まぁサクサク進めるならいい事ね」
それで階段はどこに? と見渡しているとオアシスの水が消えて底に転移魔法陣と階段が出現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます