第122話 参戦
リバークを出発してソイソスまでの道中、それなりの数の魔物を発見したので全て片付けながら進む。
ウルトの【解析鑑定】によるとこの辺りに現れる魔物よりも強いらしいのでおそらく魔王領から来た魔物だろうと思う。
「結構抜かれてるな……」
「いくら城塞都市とはいえ全ての魔物を引き付けるのは不可能よ。どうしても迂回して来る魔物は出てくるわ」
この辺の魔物ならいざ知らず魔王領から流れてきた魔物はこの辺の住民には対処のしようがないだろう。
襲われて村や町が壊滅……なんてことになったら夢見が悪くなりそうだから見つけた魔物はサーチアンドデストロイだ。
わざわざ周辺を探索してまでは狩らないが見つけた魔物を狩るだけでも違うだろう。
思いついたことを実験しながら進み数時間、遠目にソイソスが見えてきた。
「あれがソイソス……すごいな」
街を囲う巨大な外壁、そこから左右に伸びる長大な防壁。
王国領と魔王領を隔てる物理的な境界線が惹かれていた。
「さすがに向こう側の様子は見えないわね」
「とりあえず街に入ろうか」
混乱を避けるために少し離れた位置で降りようかとも思ったがそんな余裕は無いと判断して門の前までウルトで進んでから降りることにした。
「な、何者だ!?」
しかしさすがに門から10メートル程の距離は近すぎたのか門兵に槍を向けられ詰問される。
「オリハルコンランク冒険者チーム自由の翼だ。ソイソスが大軍勢に襲われていると聞いて駆けつけてきた」
首に提げた冒険者証を外して門兵に投げ渡す。
慌ててキャッチした門兵は俺の冒険者証を確認して「ほ、本物だ……」と呟いている。
「失礼致しました! どうぞお通りください」
「ありがとう。それで俺たちはどこに行けばいい?」
返却された冒険者証をつけ直しながら門兵に問いかける。
初めて来た街だからね、どこに何があるかも分からない。
「そうですね……ここから反対側の魔王領側の大門のすぐ近くに冒険者ギルドがありますので、そちらに行っていただければ……かなり距離もありますし馬車を御用意致しましょうか?」
ふむ、かなり巨大な街のようだし徒歩でとなるとかなりかかるのかな……
「ちなみに馬車でどれくらいかかるんだ?」
「半日ほど……」
「……え?」
はんにち? え?
「申し訳ありません、ここは王国領と魔王領を分つ城塞都市。例え魔王領側の門が破られたとしてもしばらくは都市内で戦えるようかなり複雑な地形になっておりまして……」
「あー……」
なんかで読んだことあるような……わざと迷いやすいようにしてるんだよね?
「自分たちのように道を知っている者でも半日、知らない者なら丸一日ではたどり着けないかと……」
「なるほど……」
半日は長いなと思いながら防壁を見上げる。
高さは10メートル無いくらいか? これなら【天駆(上)】で余裕で越えられるな。
「分かった、申し訳無いけど壁を越えさせてもらう」
「壁を……?」
門兵も釣られて街壁を見上げる。
街壁じゃなくて街壁から伸びる防壁だけどね。
「外の防壁には扉なんて無いだろ? なら飛び越えるのが一番早い」
「それはそうですが……」
「防壁の上に人は居るのか?」
「はい。防壁の上から攻撃を行う部隊が居るはずです」
ふむ、なら防壁で1回着地せずにそのまま超えた方がいいか? いやそれなら……
「了解した。その部隊の邪魔にならないよう気をつける」
それじゃと門兵と別れ再度ウルトに乗り込み壁沿いに数十分ほど走る。
「この辺でいいかな?」
「そうね、気をつけて」
「了解、ウルト頼む。でっかくなれ」
『かしこまりました』
よく考えたら【天駆(上)】を使わなくてもウルトの屋根に登ってでかくなってもらえば良かった。
俺がウルトの屋根に登るとウルトはぐんぐん大きくなる。
すぐに防壁と同じ高さになったので【変幻自在】を止めさせる。
防壁の方を見ると門兵が言っていた防壁の上から攻撃を行う部隊の人と目が合った。
あまりの意味不明さに硬直している。
「こんにちは。オリハルコンランク冒険者チーム自由の翼のリーダーでクリードって言います。ちょっとそちらにお邪魔しても?」
声を掛けると正気を取り戻したのか「どうぞ……」と答えてくれた。
「お邪魔します」
一言ことわってウルトから防壁に飛び移る。
すぐにウルトは元のサイズに戻っていった。
「あの……」
「ああすいません。すぐに降りますのでお構いなく」
挨拶をしながら魔王側の様子をのぞき込む。
ふむ……結構居るな。
【天翔閃】を放ってもいいのだがアレではここからじゃそんな広範囲の魔物を倒せない。なら魔法か。
【魔力極大ブースト】と【魔法威力上昇(極)】を発動して風魔法を使用する。
風の刃や竜巻ではなく純粋に強風を発生させる魔法で壁の下に居る魔物を吹き飛ばした。
「じゃあお邪魔しました」
防壁の上の兵士に別れの挨拶をして飛び降りる。
さすがにこの高さはちょっと怖いので【天駆(上)】を使いながら駆け下りた。
こちらに駆け寄ってくる魔物を今度こそ【天翔閃】で斬り飛ばして【トラック召喚】を使いウルトを喚び寄せる。
他の魔物が接接近してくる前に急いで飛び乗った。
「大丈夫だった? お疲れ様」
「もちろん大丈夫。ありがとう」
車内で待っていたリンに迎え入れられた。
これはソイソスに来るまでに行った実験「誰かが乗ってる時に【トラック召喚】したらどうなるの?」の結果だ。
何者かが乗っている状況で召喚できるのかできないのか、中にいる存在は着いて来るのか来ないのか、気になったので実験してみたのだ。
その結果中の存在も一緒に召喚されることが分かったので今回早速使ってみたというわけだ。
さて、見渡す限りかなりの数の魔物が居る。
中には教国の宰相に化けていたダークエルフのような魔族などの姿も散見される。
「さぁ行こうか。蹂躙だ」
「オーケーマイマスター」
俺たちは魔物を殲滅しソイソスを守るために走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます