第117話 ドラゴンゾンビ

 9階層、ここは異様なフロアだった。


 今までは1つの階層に出現した魔物は多くて数種類、階層によっては1種類のみだったのがこの階層には多種多様なアンデッドが出現した。


 ゾンビ系やスケルトン系、さらには死霊系、物理攻撃だけでなく魔法を使うアンデッドも現れ混沌としていた。


「これは……」

「凄いわね……」


 ウルトのおかげで進めているが大量のアンデッドに道を塞がれその後列から魔法が飛んでくる様はやはり下層は攻略させるつもりが無いのだと感じる。


「ウルト、スキル持ちは?」


 居たとして降りて戦えるかと言われると難しいとしか答えられないが一応聞いてみる。


『何体かはスキルを保有していますが肉体強化系の下位スキルです』

「なら必要無いか」


 この階層でのスキル集めは不要、そもそも不可能と結論付けて先を急ぐ。


「今までのボスはその階層に出現する魔物の上位種だったけど、これはどうなるのかしら?」

「どうだろうな……大群が待ち構えてるとか?」

「それならフロアと変わらないじゃない。なんか凄いのが居そうね」

「リバークもグリエルも凄かったさ」


 リバークはサイクロプス、グリエルは巨大ムカデ、どちらも普通に戦っても絶対勝てない気しかしない魔物だった。


『ボス部屋を発見しました』


 9階層に降りて2時間足らず、早くもボス部屋を発見した。


 俺の能力が向上したことでウルトの能力も向上、【万能感知】で感知できる範囲もかなり広がり半径5キロ圏内であれば感知可能となっているらしい。

 味方で良かったよ。


「……」


 ボス部屋入口の扉を開き中を見て俺とリンは言葉を失った。


『名称ドラゴンゾンビ、保有スキルは【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【炎ブレス】【状態異常無効】です』


「ドラゴンか」

「ドラゴンね」


 目の前には巨大なドラゴン。

 全体的に腐っていて所々骨が見えているがドラゴンだ。


「ウルト、殺さず無力化出来るか? スキルが欲しい」

『しかしマスター、相手はアンデッド。殺さずとは言いますが既に死んでいるのでは?』


 そこは突っ込むなよ……


「滅びないように……頼む」

『かしこまりました』


 ウルトは指示に従いドラゴンゾンビに突っ込んでいく。

 ドラゴンゾンビも迎撃の為その巨体を回転させて尻尾を薙ぎ払ってくる。


 ウルトと尻尾が接触、グリエル迷宮最深部での大悪魔との戦闘では中にも衝撃が届いたので身構えるが必要無かった。


 ウルトと触れた尻尾は触れた部分からちぎれ飛んでしまったのだ。


「え?」


 思わず気の抜けた声が出た。

 その声を拾ったウルトから説明が入る。


『マスターが強くなったため新たな能力【衝撃反射】を獲得しております。【衝撃力倍加】と合わせて使用すれば私に攻撃わ仕掛けた相手の方が一方的にダメージを負います』


 それはずるい。


『さらに私の突進の衝撃はそのまま相手につたわりその衝撃も倍加、さらに【一点集中】の効果もありますので私に触れた部分には本来の衝撃の何十倍もの負荷がかかりますね』


 これもうウルトに勝てる存在って居ないのでは無かろうか?


 魔法攻撃は【魔力霧散】で無効化、物理攻撃は【衝撃反射】【衝撃力倍加】【一点集中】で攻撃した方が多大なダメージを受ける……

 魔王にも勝てそうだな。


 よし、魔王はウルトに任せて俺は勇者たちに集中しようか。


 考えている間にウルトはドラゴンゾンビを簡単に追い込みあとは俺がトドメを刺すだけの状態に追い込んでいた。


『マスター』

「了解」


 ウルトから降りて強欲の剣に光属性魔力を込めて【天翔閃】を放つ。


 光と化した斬撃は狙い違わずドラゴンゾンビの首を消滅させた。


 《【状態異常攻撃】を獲得しました。【腐食攻撃】を獲得しました。【魔法適正(火)】を獲得しました》


 順調に獲得したな。


 《【状態異常耐性】を獲得、統合進化【状態異常耐性(強)】を獲得しました》


 統合進化か……同じ名称のスキルを得ることで上位スキルに進化するのだろう。


 剣を収めてウルトに戻る。


「スキルは得られた?」

「うん、【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【魔法適正(火)】を新しく獲得したのと【状態異常耐性】が【状態異常耐性(強)】に進化したよ」

「さすがドラゴンと言うべきか強欲の剣と言うべきか悩むところね」


 確かにね。


 ボス部屋を後にして安全地帯に入ったところでウルトから声を掛けられた。


『マスター、リン様、間もなく昼食時ですが如何されますか?』


 この後はおそらく大悪魔が待ち構えている。

 通路も短いので食べながら移動するほどの距離は無い。


「終わってから食べるよ。もし自我がある悪魔なら食事を共にしてもいいし……リンはそれでいい?」

「ええ、構わないわよ」

「そういうことで進んでくれ」

『かしこまりました』

「あ、でもその前に……」


 リンが何かに気付いたように声を上げた。


「どうしたの?」

「ステータスを確認しておきましょう。レベルもだけど、クリードのスキルがどれだけ増えてるか確認しておきたいの」


 なるほど、リンが寝ている間のことは口頭では伝えてるけど見た方がいいな。


「分かった。ステータスオープン」



 ◇◆


 名前……レオ・クリイド レベル77

 職業……(本業)トラック運転手(副業)剣鬼

 年齢……21

 生命力……A+ 魔力……A 筋力………S 素早さ……A 耐久力……S 魔攻……C 魔防……B


 スキル


(身体能力系)

【身体強化(特)】【タイタン】【疾風迅雷】【要塞】【瞬間加速・停止】【絶倫】【生命力強化】


(魔法系)

【魔法適正(雷、氷、水、風、光、音、闇、火)】【魔力吸収】


(感覚系)

【気配察知(特)】【直感強化(特)】【知覚強化(大)】【魔力視】【弱点看破(特)】【見切り(上)】


(耐性)

【痛覚鈍化】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】【状態異常耐性(強)】【毒無効】


(特殊)

【トラック召喚】【トラック完全支配】【無限積載】

【剣術(神)】【魔力撃(極)】【乾坤一擲】【天駆(上)】【アイテムボックス】【糸生成】【闘気剣】【精神攻撃】【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【自己再生】


「レベルも結構上がってるし、スキルも増えてるわね……」

「あぁ、戦闘中に上手く使えるか少し不安なくらいだよ」


 パッシブスキルなら気にしなくてもいいけどアクティブスキルは使用するタイミングやらなんやらで使い慣れていないスキルはやはり使いづらい。


「それは慣れるしか無いわね……ん?」


 リンは何かに気付いたようだ。


「さぁ行こうか」

『かしこまりました』


 喋らせる間を与えずステータス表示を消してウルトに指示を出す。

 リンは何か言いたそうな顔をしていたが今は無視しよう、時間が解決してくれるはずだ。


 9階層の安全地帯を抜けるとやはりほかの迷宮と同じで長い下り階段となっていた。

 この階段も3度目、流石に慣れたので緊張も無く進んでいく。


 10階層に到着しやはり見覚えのある長く真っ直ぐな通路を進み俺たちは迷宮の最終地点、大悪魔の部屋へとたどり着いた。

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