第115話 迷宮へ
ウルトで飛ばして移動すれば徒歩1日なんて20分も掛からない。
ウルトから降りることもせず俺たちはそのまま迷宮に突入した。
『魔物のスキルは確認しますか?』
「ボスだけ頼む。雑魚は必要無い」
『かしこまりました』
短くウルトとやり取りして迷宮内を進む。
地図は5階層部分までは手に入れている、そこまでは出現する魔物も分かっているので最速で移動する。
「クリード、今のうちにステータスを確認しましょう」
「あぁ……うん、そうだね」
必要なことだ。
出来ればケイトのことを思い出してしまうので控えたかったが確認しないわけにもいかないか……
「ステータスオープン」
◇◆
名前……レオ・クリイド レベル73
職業……(本業)トラック運転手(副業)剣鬼
年齢……21
生命力……A+ 魔力……A 筋力………S 素早さ……A 耐久力……S 魔攻……B 魔防……B
スキル
(身体能力系)
【身体強化(特)】【タイタン】【疾風迅雷】【要塞】【俊敏】【絶倫】【生命力強化】
(魔法系)
【魔法適性(雷、氷、水、風、光、音、闇)】【魔力吸収】
(感覚系)
【気配察知(特)】【直感強化(特)】【知覚強化(大)】【魔力視】【弱点看破(特)】【見切り(上)】
(耐性)
【毒無効】
(その他)
【トラック召喚】【トラック完全支配】【無限積載】【瞬間加速・停止】【自己再生】【剣術(神)】【乾坤一擲】【魔力撃(極)】【天駆(上)】【魔剣召喚】【闘気剣】【糸生成】
◇◆
「なんじゃこれ……」
「えぇ……」
2人揃って言葉にならない。
あの魔族を斬った時に【魔法適性(闇)】を獲得したことは覚えている。
他のスキルや職業は強欲の剣を手にした時に獲得したスキルだろう。
おそらくケイトのスキルと、ケイトが斬った剣聖のスキルだろう。
統合進化と言っていたのは流石に覚えている。
「タイタン?」
「多分だけど、筋力アップのスキルだと思うわよ。【剛力無双】が消えてるしね」
【タイタン】は【剛力無双】の上位スキルか、となると……
【要塞】は【鉄壁】の、【疾風迅雷】は【疾風加速】の上位と見て間違いないか?
【疾風迅雷】は有難い。俺には【瞬間加速】もあるがあれは1歩で最高速を出せるスキルだが【疾風】系はその最高速度を引き上げるスキルだからだ。
地味に【俊敏】も役に立つ。
【疾風】が50メートル走のタイムを上げるスキルなら【俊敏】は反復横跳びの回数を増やすスキル。似ているようで違うのだ。
それよりも【絶倫】……
これはゴブリンから得たスキルだろう。
これは確かに恥ずかしくて言えないよな……
でもこんな形で知りたくなかった、ケイトの口から聞かせて欲しかった。
「これがウルトにも反映されてると考えると……」
「えぇ、クリードのスキル、ステータスが上がってウルトの能力が上がったとは聞いたけどこれは予想以上ね……」
【絶倫】も反映されるのだろうか?
それは置いておいて強くなることに文句は無い。
力の源泉がケイトというのだけは受け入れ難いのだが……
1階層、2階層と順調に進み早くも3階層に到着。
聖都を出たのが15時頃だったのでもう夕食時だ。
「リン、悪いけど出来合いのもので我慢して欲しい。止まる間も惜しい」
「大丈夫よ、それでいいわ」
走りながら適当な料理を取り出して食す。
今回は睡眠も走りながら取る予定だ。
ちなみにこの迷宮はアンデッドが中心に現れる。
素材にもならないし魔石も持ってはいるがアンデッドから回収するのも嫌なので全てを無視する。
3階層を駆け抜けボスのトロールゾンビを撥ね飛ばして安全地帯を通って4階層へ。
安全地帯には騎士が数名居て唖然とこちらを見ていたが気にしない。
「リン、寝てて構わないよ。睡眠も走りながらだから交互に取ろう」
「それならクリードが先に寝なさい。有用なスキルはまだ先だと思うわよ。それに……昨日寝れてないでしょ?」
リンの言うことは尤もだ。
それに確かに昨日は一睡もしていない。
「じゃあお言葉に甘えて」
リンに任せて先に休ませてもらう。
一部を隔離するように変形してもらいそこに布団を敷いて横になる。
一睡もしていなかったのと今日はずっと気を張っていたためかあっさりと眠りに落ちた。
しかし……
「うわぁぁぁあああ!」
飛び起きた。
「はぁ、はぁ……」
息が整わない。心臓の鼓動も激しい。
慌ててコップを取りだして水魔法で満たして一息で飲み干す。
呼吸も鼓動もまだまだ荒いがほんの少しだけ落ち着いた気分だ。
スマホの時計を見ると布団に入ってから僅か5分しか経っていない。
「くそ……」
悪夢だった。
女剣聖にケイトが貫かれる姿。強欲の剣に貫かれる姿……
それがひたすらループしていた。
「はは……」
コップを【無限積載】に戻し力なく布団に倒れ込む。
その後何度か睡眠と覚醒を繰り返す。
長くても10分程度しか寝れないことに諦めを感じてきた。
「クリード……」
「リン?」
寝ることを諦めようかと思った時、リンが寝室にやってきた。
「どうしたんだ? もしかして俺の持ってないスキルを持った魔物が現れたのか?」
それなら、と立ち上がろうとするとリンに止められた、
「ウルトに頼まれたのよ。マスターが壊れそうだから助けてあげてくださいってね」
「ウルトが? 壊れる?」
「クリード、眠れないんでしょ?」
ドキリと心臓が跳ねる。
いや、車内で起きたことを把握出来るウルトなら俺が眠れていないことに気付くだろう。
それにしても何故?
「怖いんでしょ?」
「怖い……」
そうなのかもしれない。
あの夢を見るのが怖い、自分の無力さを見せ付けられるのが怖い……誰かを失うことが怖い。
適当な理由は付けたがソフィアとアンナを置いてきたのも対勇者、対魔王戦で俺が2人を守れないかもしれないことを恐れたからだ。
「大丈夫よ。貴方は1人じゃない」
リンは俺の隣に座り背中をポンポン叩いてくる。
「あたしが居るから、ゆっくり休みなさい」
頭を押され横になる。
俺の背中を叩いていた手は頭を撫でるように移動している。
「子供かよ……」
「似たようなものよ。あたしの方がお姉さんだからね」
ふふ、と笑うリンの瞳は優しげだった。
頭を撫でられ安心したのか俺は吸い込まれるように眠りに落ちた。
悪夢にうなされることも無く、しっかりと眠ることが出来た。
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