第94話 リバークの新しい日常
宿を出て買い物をしながらギルドへ向かう。
結構食料品はあっちでばらまいたから補充しておかないとね。
「クリード様、もう少し野菜が欲しいです」
「了解、この辺に売ってるとこあるかな?」
サーシャは職業柄なのか好みなのかあまり肉は食べない。
全く食べない訳では無いが野菜メインの食事をしている。
旅の途中はよくサーシャが料理してくれるのだが自分の分とは別に俺たちには肉料理も作ってくれるので本当に頭の下がる思いだ。美味いし。
色々と食材を買い込み昼前にようやくギルドにたどり着いた。
受付に声を掛けるとすぐに面会できるようで奥へと案内された。
「クリード戻ったか、グリエルはどうだった?」
「酷いものだったよ、大勢の人が亡くなってた。出来る限り遺体は回収して遺族の元に届けたけど悲惨だったな」
思い出すと悲しい気持ちになる。
というかあんな光景見ておいてのんびり休める勇者たちってホント図太いというかなんと言うか……
それからグリエル周辺での出来事をギルドマスターに報告するとギルドマスターは大きくため息を吐いた。
「まさかグリエル迷宮まで攻略するとは……」
呆れたような顔をしているが頼まれたんだから全力で行動した結果だよ。
「そうだ、お前らにこれが届いている」
ギルドマスターが箱を取りだし机の上に置く。
「これは?」
「冒険者ギルド本部からだ。開けてみろ」
ギルドマスターに勧められたので早速箱を開けてみると……中には6つの冒険者証が入っていた。
黄金とは少し違った輝きをする金属、オリハルコンだろう。
「全員分?」
「そうだ。
そうやって事実だけを並べるとそれはもう大層なことやってるな……
全部ウルトの功績だけど。
「もしグリエル救援に失敗してたら?」
「その時はクリードにだけオリハルコンの冒険者証を渡してたな」
ふーん……また面倒なことを……
この世界では情報伝達の速度が早くないからこうやってどっちでも対応出来るようにしてるだけか……
「あたしたちも……」
「オリハルコン……」
「ッスか……」
全員驚愕、それは当然だろう。
元々俺、ケイト、サーシャの3人をオリハルコンランクにという話だったのに全員とは……
「これ……受け取ったらなんか義務とかあるのか?」
「いや、義務なんかは無いが……ギルドや国からの依頼は増えると思うぞ」
冒険者ランクイコール信用な部分があることは分かってるからそれは想像出来る。
まぁ他に義務とか無いなら……
俺は首から提げているミスリルの冒険者証をギルドマスターに返却、それを見た仲間たちも次々と返却してオリハルコンの冒険者証を首から提げた。
「おめでとう、これで自由の翼は名実ともに最高ランクだ」
「ありがとう」
ギルドマスターの差し出してきた右手を握る。
なんかこいつのキャラがよく分からなくなってきたな。
「これからどうするんだ?」
「その前に聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「アンタの名前は?」
俺の質問にギルドマスターは鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情を浮かべる。
「名乗ってなかったか?」
「聞いた記憶は無いな」
もしかして名乗ってた? 名乗ってたとしても俺が覚えてないからノーカンだ。
「ふむ、では改めて……冒険者ギルドリバーク支部マスターのガレットだ、よろしく」
「ガレットね、うん多分覚えたよ」
「お前なぁ……」
ギルドマスターはまたもや呆れたようにつぶやく。
嫌がってはいなさそうだしやっぱりこの対応で間違ってないよな?
「それで……この後だっけ? とりあえず1回ここの迷宮に潜ってみようかとは思ってるよ」
ケイトのスキル集めのために。
「そうか、なら掲示板の依頼を確認してから行くといい、結構出てるはずだぞ」
「分かった、そうするよ……それとガレットさん、武器買わない?」
「絶対呼び捨てにしてくると思っていたが一応さん付けしてくれるのか……武器?」
こいつ変なところ引っかかったな、やっぱり呼び捨てで良かったかもしれない。
「こっちでも拾ったけどグリエル迷宮でも大量に手に入れたんだ、買う?」
「なるほど、なら魔法の武器だな? いくつかギルドで買わせてもらおう」
ガレットさんは【魔力撃】や【剛力】が自動発動する武器や【火属性付与】や【光属性付与】など属性が付与された武器を10本ほどと【魔力強化】など魔法威力を上げる杖を2本お買い上げしてくれた。
金額は1本金貨3枚均一で売ってやった。
ガーシュは緊急事態だったしディムたちは友達だから安くしておいたけどここは景気もいいらしいしそれくらい取ってもいいだろうと思い値段を告げたら安いと言われてしまった。
もうちょい相場とか勉強しないとな……
ギルドでの用事を終えたので迷宮に向かう。
いつもの様に街を出てウルトに乗り込んでの移動だが話が広まっているのか道行く冒険者はみんな道を開けてこちらを見ながらなにやら話している。
有名人になった気分だ。
「気分じゃなくて実際有名人よ」
「やっぱり?」
俺たちが迷宮を攻略したことは知られている。
なんせウルトなんていうめちゃくちゃ目立つ乗り物に乗って移動してるんだからね、隠そうとする方が無理だろう。
囲まれず遠巻きに見られるくらいなら気にしない。
今まで見たことない店が出来ていたり道の端で商品を売っている人も居る。
色々な店を覗いたり攻略前から店を開いている店主に挨拶してみたりしながら進んでいると腰の辺りに小さな衝撃を感じた。
「お兄ちゃん!」
「ん? おぉ、元気にしてたかー?」
腰に目にやると子供が抱きついてきていた。
俺が攻略前からご飯を食べさせてきた子供たちの中の1人だ。
せっかくなので抱き上げてやると首に腕を回してしっかりと抱きついてくる。可愛い。
よく見てみると栄養状態は良さそうで血色もいい。
肌や髪の毛、服も綺麗になっている。おそらく浄化魔法の使える冒険者に綺麗にしてもらったのだろう。
「お兄さんだ!」
「お姉ちゃんたちもいる!」
ワラワラと子供たちが集まってきた。
抱いていた子を下ろして1人ずつ頭を撫でてやると気持ちよさそうな表情を浮かべてくれた。
少しの間子供たちと戯れていたが仕事の時間のようで次々と近寄ってくる冒険者パーティに着いて迷宮に入っていってしまった。
仕事もあるようで何よりだ。
「さて、俺たちも行こうか」
子供たちもみんな仕事に戻って行ったので俺たちも出発することにした。
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