第95話 イージーモード
リバーク迷宮第1階層、ここはまだ年端のいかない子供たちが多くいて角ウサギを追いかけていた。
「おそらく就職の儀を終えて冒険者になったばかりの子たちでしょう」
ソフィアの見立てだが正しいと思う。
この国というか世界では13歳になると就職の儀を行うそうだ。
近くの教会に行って識別の水晶という特殊な道具を用いて職業を判別するらしい。
就職の儀を受けるまではステータスを開くことが出来ないと言う。
短剣を持っているのは戦士系、それっぽいローブを来ているのは魔法使い系かな?
まぁ1階層なら危険もない。
角ウサギはそこそこ需要のある魔物だし食いっぱぐれることは無いだろう。
いくら倒してもレベルが上がらないのは可哀想だがそれはごめん。
それなりに人が居るのでウルトに乗っていくのは危険と判断して徒歩で1階層を進んでいく。
角ウサギは遭遇しても無視、駆け出し冒険者の獲物を奪うのはちょっとね……
ボス部屋も数秒で片付けて2階層へ、ここはウルフしか出現しないしウルフには需要がほぼ無いので冒険者の姿は見えない。
なのでウルトに乗って一気に駆け抜けた。
3階層、以前は結構中級冒険者の狩場として賑わっていたのだが今は閑古鳥が鳴いている。
一応ラッシュボアも出現するのだが数が少ない。
他に現れるのはゴブリンやコボルトなのでこの階層も旨味がないのだ。
なのでウルトで一気に通過、人が少ない階層はこれで行こう。
ボス部屋の前は数組の冒険者が並んでいた。
さっさと3階層を抜けて4階層で狩りをするためにボスの順番待ちをしているのだろう。
俺たちも大人しく並ぼうと最後尾に着いたのだが先に待っていた冒険者に気付かれた。
「ここは並んでる全員で通過しますんで一緒に入ってください」
本来ボス部屋はパーティ単位で挑戦するものだが今は時間短縮の為に纏まって挑むとのこと。
挑むとはいえほぼ棒立ちのボスを倒すだけの簡単なお仕事なのでまぁ問題は無いだろう。
4階層、ディムたちの話ではおそらく一番冒険者の多い階層とのことだ。
一緒にボス部屋を抜けた冒険者もここで狩りをするらしいので別れて俺たちはボス部屋を目指す。
時折現れる魔物をスルーしてどんどん進みボス部屋に到着。
ここには並んでいる冒険者も居なかったのですんなりとボス部屋に入ることが出来た。
前回来た時には4階層のボス部屋はゴブリンキングにホブゴブリン、通常ゴブリンが大量に待ち構えていたのだが今回はゴブリンキングにホブゴブリンが2匹、通常ゴブリンも数匹しか居なかった。
あっさりとリンの魔法で焼き尽くしてボス部屋を通過、5階層へと降りた。
5階層にはゴールドの冒険者証を身に付けた冒険者がそれなりに居た。
オークやハイオークを狩っているパーティやミスリルを採掘しているパーティ、オーガを囲んでフルボッコにしているパーティも居た。
それでも4階層に比べると人は少ない。
十分にウルトで移動しても大丈夫だと判断してウルトで駆け抜けた。
ついでとばかりにウルトに出会った魔物を鑑定解析してもらうと、ラッシュボアは【疾風】を、オーガは【剛腕】のスキルを持っていることが分かった。
おそらく強欲の剣で倒せばそのスキルを得られるのだろうが既に習得済みのスキルのため無視だ。
一応オークハイオークは俺たちの非常食として数体倒して【無限積載】に積み込んでおく。
ミノタウロスも確保しておきたいな……
5階層のボス、オークキングも持っているスキルは【剛腕】、必要無いのでサクッと倒して安全地帯へと抜けた。
「もういい時間だしここで1泊しよう。この先の魔物はウルトの解析鑑定でスキルの有無調べながら進みたいしね」
「そうですね。では夕食の支度をしますね」
みんなの同意を得て今日はここで終了、他の冒険者がここでキャンプしている風でも無いのでゆったりと過ごせそうだ。
「クリードさん、自分と訓練して欲しいッス!」
「いいよ、やろうか」
訓練しようと剣を取り出しているとアンナに誘われた。
取り出していた剣を【無限積載】に戻して改めてグリエル迷宮で手に入れた【不殺】の効果を持つ剣を取り出してアンナと対峙する。
「いくぞ!」
「来いッス!」
若干気が抜けそうになったが堪えて斬り掛かる。
アンナは的確に俺の攻撃を見切ってその盾で防いでくる。
なんとかこの防御を突破しないとな……
「隙ありッスよ!」
どう突破しようか一瞬思考を巡らせた隙にアンナからの反撃、危ねぇ!
身を捩ってアンナからのカウンターを回避、バックステップで距離を取る。
やはり強い。
スキルをフル活用して攻めれば力押しで倒すことは出来るだろう。
もしくは魔法を駆使して戦えば勝つことは可能だと思う。
しかしそれはこの場でふさわしくない。
なんとか、なんとか剣技だけでアンナの防御を突破したい。
それから1時間ほど打ち合いなんとか一本とることには成功した。
だが次の打ち合いでは攻撃を意識しすぎてカウンターで一本取られてしまった。
うーむ、やはり技術の点では俺は劣るな……
積み重ねてきたものというのは大きい。
俺の技術ではケイト、ソフィア、アンナ誰にも敵わない。
もう少し訓練時間を増やそうか。
「食事の準備出来たわよー」
リンの呼びかけで訓練は一時中断、全員汗だくだったので浄化魔法を使い綺麗になってから夕食を食べる。
食休みを挟んで軽く訓練をして就寝となった。
夜中、みんなが寝静まった頃に俺は1人で起きて訓練を再開する。
しばらく無心で剣を振っていたがふと思いついて安全地帯から5階層フロアに戻って1人でボス部屋に挑む。
オークキング共はあまり動かないので戦闘訓練としては物足りないがミスリルの剣の使い心地や普段あまり使わないスキルの実践練習には役に立つ。
数回ボス戦をやってから俺は改めて眠りについた。
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