第22話 ランクアップ

 ギルドに到着して暇そうにしている受付嬢の1人に声を掛ける。

 まだ昼だしこの時間に戻る冒険者は少ないのかな。


「すみません。至急ギルドマスターにお取次ぎ願います。私はシルバーランク冒険者のリン、例の依頼の件と伝えていただければすぐにわかると思います」

「リン様ですね、かしこまりました。すぐにギルドマスターに確認して参りますので少々お待ち頂けますか?」

「えぇ、お願いします」


 受付嬢は立ち上がり裏に向かっていった。


「さて……ここに居ても仕方ないしあっちの椅子で座って待ちましょうか」

「そうですね、なにか頼みますか?」

「うーん……そこまでかからないとは思うけど……飲み物くらいなら大丈夫かしらね?」


 確かに少し喉が渇いたな。

 アンナが代表して全員分の飲み物を注文しに行きすぐに戻ってきた。


 それから10分ほどだろうか、他愛もない話をしながら過ごしているとさっきの受付嬢が戻ってきた。


「おまたせしました。こちらへお願いします」


 まだ少しコップに残っていたので一気に飲み干して立ち上がり全員で受付嬢の案内に従って奥へと移動した。


 昨日案内された応接室を通り過ぎ、受付嬢は別の部屋をノックする。

 中からどうぞと声がかかり受付嬢が扉を開けて入室を促してくる。


 リンを先頭に部屋に入ると、そこは執務室のような部屋でギルドマスターと数人の事務員が忙しなく働いていた。


「聖女様、このような場所で申し訳ありません」

「いえ、お仕事中に押しかけたのはこちらですので……それで報告させて頂いてよろしいでしょうか?」


 ギルドマスターが書類にサインする手を止めてこちらに顔を向けたのでリンが話始める。


「まずはゴブリンキングの捜索及び討伐は完了しました。クリード、首と剣を出してもらえるかしら?」


 ここで?


 ギルドマスターを見ると頷いたので来客用と思われるテーブルに首と剣をウルトに出してもらう。

 そのまま出すのは憚られるが頷いたんだからあとの処理はそっちでしてね? 掃除とかさ。

 てか剣出したらテーブル軋んだけど大丈夫だよね?


「ふむ、確かに確認しました。この剣はゴブリンキングが?」

「えぇ、ゴブリンキングが持っていました。魔剣のようで効果は【状態保存】、呪いの類はかかっていません」

「ほう、【状態保存】ですか、良い効果ですね」


 嬉しそうに頷くギルドマスター、やっぱり状態保存っていい効果なんだね。


「うちで使えそうなクリードにも扱えませんでしたので、こちらも納品しようかと思うのですが」

「分かりました。その方向で進めます。査定を行いますので結果は明日でもよろしいですか?」

「大丈夫です」


 リンは頷く。

 それを見てギルドマスターは事務員指示を出してから話を続ける。


「ではまずお約束通りリン殿とクリード殿のゴールドランク、聖女様方3名のシルバーランク昇格の手続きをしますのでこちらは明日以降ギルド受付で冒険者証の交換をお願いします」

「分かりました」


 明日からゴールドか……登録して今日でまだ3日目だぞ……


「続けて報酬ですが、今取りに行かせておりますので少々お待ち願います。キング以外のゴブリン、ホブゴブリンの討伐金については受付でお願いしてもよろしいでしょうか?」

「構いません。今日もかなりの数を討伐して来ましたのでここで数えるのは大変でしょうし」

「やはりかなりの数が残っていましたか……」


 ガチャリと扉の開く音がした。

 そちらを見ると小さなお盆に金貨を載せて持ってきた事務員が居た。


「お待たせしました。こちらが報酬の金貨4枚です」

「確かに。ありがとうございます」


 リンがその金貨を受け取り書類にサインする。領収書みたいなものかな。


「では失礼しても?」

「えぇ、ありがとうございました。明日の朝には冒険者証と査定結果を用意しておきますので」

「わかりました、では失礼します」


 軽くギルドマスターに会釈して部屋を出る。

 そのまま受付に移動してゴブリン、ホブゴブリンの討伐証明部位を提出して討伐報酬を受け取ってギルドから出る。


「お腹空いたわね……何か食べに行きましょうか」

「私パスタが良いです!」


 サーシャの提案でパスタを食べに行くことになった。

 この世界パスタあるんだね。何があって何がないのかまだ分からないけどパスタは好きだからあってよかった。


 5人で近くのパスタを食べられる店に入り昼食を済ませて宿に戻る。


「じゃあ今日はもうゆっくりしましょう。明日は冒険者証受け取って森の中にでも入ってみる?」

「そうですね。ゴブリンキング戦では何もしていないので少し戦いたいです」


 こういう話をしている時は基本的に警備に集中して話に入らないソフィアが珍しく話に入ってきた。

 珍しいもなにも出会ったばかりなんだけどね。


「あらソフィアが自分の意見を言うなんて珍しいわね」


 珍しいと思ったのは間違いじゃなかったみたいだな。


「それよりもクリードさんゴブリンキング戦でレベルアップしてないんスか?」

「ん? そういえば確認してなかったな……ステータスオープン」



 ◇◆


 名前……レオ・クリイド レベル26

 職業……トラック運転手

 年齢……21

 生命力……B 魔力……C 筋力………C 素早さ……C

 耐久力……A 魔攻……D 魔防……C


 スキル

【トラック召喚】【トラック完全支配】【魔法適性(雷、氷、水、風、光、音)】【瞬間加速】【瞬間停止】【自己再生】【魔力吸収】【気配察知】【剣術】【直感強化】【知覚強化】【剛腕】


 ◇◆



「おぉ、5つもレベル上がってる……ステータスも伸びてるし【剛腕】ってスキルも覚えてるな」

「5つもあがってたんですか? さすがクリード様ですね!」

「剛腕ですか……確か発動すると筋力がアップするスキルですね。アタッカーには相性がいいです」


 ソフィアは少し羨ましそうに【剛腕】について教えてくれた。

 筋力アップか……いいスキルゲットできたな!


「リンは上がってないの? 結構な数1人で倒してたけど」

「あたしのレベルじゃゴブリンやホブゴブリンじゃ中々上がらないわよ。ステータスオープン」



 ◇◆


 リン・ヒメカワ レベル29

 職業……魔法使い

 年齢……27

 生命力……C 魔力……A 筋力……E 素早さ……D 耐久力……D 魔攻……A 魔防……B


 スキル

【魔法適性(火、水、風、土、)】【魔力ブースト】【ツインマジック】【魔力吸収】【魔力感知】


 ◇◆



「あら、上がってるわね……あれくらいで上がるとは思わなかったけど、ゴブリンキングの経験値が予想より多かったのかもね」

「みんなも確認してみてくれない?」


 俺がそう言うと、サーシャたちも各々ステータスを開いた。



 ◇◆


 サーシャ・ライノス レベル17

 職業……聖女

 年齢……17

 生命力……C 魔力……B 筋力……E 素早さ……D 耐久力……E 魔攻……C 魔防……C


 スキル


【魔法適性(聖、光、空間)】【聖なる護り】【聖女の祈り】【魔法効果上昇】【浄化の光】


 ◇◆



「すごい! 私も3つレベル上がってます! ステータスは……素早さが上がってます!」


 サーシャは嬉しいのか今にも踊り出しそうだ。



 ◇◆


 ソフィア レベル21

 職業……戦士(槍)

 年齢……22

 生命力……C 魔力……E 筋力……C 素早さ……C 耐久力……D 魔攻……E 魔防……E


 スキル

【槍術】【身体強化】【気配察知】【騎士の矜恃】【剛腕】


 ◇◆



「私は2つ上がっていますね。何もしていないのに上がるなんて不思議な感覚です」

「まぁそれは仲間が倒したんだし気にしなくていいんじゃない? それにソフィアにも【剛腕】あるじゃん!」


 筋力も上がっているし【剛腕】も習得したならソフィアの攻撃力はかなりアップしたんじゃなかろうか?

 本人はなんとも言えない顔をしているが喜ばしいことだろう。



 ◇◆


 アンナ レベル20

 職業……戦士(剣、盾)

 年齢……19

 生命力……D 魔力……E 筋力……D 素早さ……D 耐久力……C 魔攻……E 魔防……D


 スキル

【剣術】【盾術】【堅牢】【衝撃緩和】【不動】


 ◇◆


「自分も2つアップと【不動】を覚えたみたいッス! いいスキルが手に入ったッス!」


 素早さもアップしてるな。

 しかし【不動】、どんなスキルなんだろ?


「ねぇ、【不動】ってどんなスキルなの?」

「【不動】は発動したら数秒間だけ移動出来なくなるスキルッス! だから吹き飛ばし攻撃受けてもノックバックせず耐えられるッスよ」


 なるほど、それはタンク職にとって最適なスキルだな。


「やっぱりみんなレベルアップしてるんだね」

「みたいです! これもクリード様のおかげです!」

「俺じゃなくてウルトだよ。俺は結局今日何もしてないし」


 1匹も倒してないからな!


「でも昨日は大量にゴブリンを倒していますし、その経験値も分配されたものと思われます。なので聖女様の言う通りクリード殿のおかげで間違いはありません」

「そうよ。それにウルトの力も元を辿ればクリードの力、少しは自信持ちなさい」


 そっか……まぁそうなのかな?

 完全にウルト頼りだけど一応俺がマスターなんだし、自信持ちすぎるのもダメだけど卑屈になるのもいけないね。


「分かったよ。卑屈になり過ぎないよう気をつける」

「卑屈だなんて……クリード様はもっと堂々としていいと思いますよ?」


 勇者なんですから、とサーシャは続けるが追放されたから勇者では無いよ。

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