第23話 分配
「それで……これからはどうするの? ランクとレベル上げるって話だったけどゴールドまで上がったし、レベルも十分だと思うけど」
あ、それ俺も気になる。
ランクとレベル上げるのが目標だったけど具体的には決まってなかったし。
「そうですね……正直どうしようかと。予定では勇者パーティの出立までにゴールド、可能ならプラチナランクまで上げてから勇者パーティと別ルートで魔王を目指そうかなと思っていました」
「このままプラチナ目指す?」
それなら一応サーシャの予定通りにはなるけど……
「それでもいいのですが、少しもったいないかな? と思いまして……まさかこの短期間でここまでレベルを上げられるとは思いもしませんでした」
「いつかは追い越されると思っていましたが2日は早すぎます」
「そうッスよ! 自分らの立場がないッス!」
ぞんざいな口調だが2人はそこまで気にしている感じでは無い。
「それより聖女様、時間に余裕があるということでよろしいですか?」
「え? えぇ、恐らく勇者パーティの旅立ちまであと数ヶ月はかかると思いますし、魔王側もまだあまり活発には動いていませんし……」
「ならば行きたい場所があるのですが……」
言い淀むソフィアって初めて見るかもしれない。
淡々とクールなイメージがあるからな。
「どこに行きたいのですか?」
「迷宮です。迷宮なら効率よくレベルアップか可能ですし、踏破階層によってはランクアップをすることもある聞いたことがあります」
「なるほど確かに……」
迷宮? ファンタジーの定番迷宮?
「なぁ、迷宮って?」
「クリードは知らなくても仕方ないわね。迷宮っていうのは魔界から瘴気が流れ込む場所と言われているわね。最奥には魔界からやってきた強力な魔物がいて瘴気を発していると言われているの。その魔物を倒して迷宮を解放すれば文句無しでオリハルコンランクね」
オリハルコンランクねぇ……
「それに迷宮では貴重な鉱石やマジックアイテムなんかを手に入れられることもあるのよ。だから迷宮には沢山冒険者が入って死んでいくのよね」
よくある設定そのままだけど、実際耳にすると恐ろしいな……
「それって危なくないの?」
「もちろん危険よ? でも浅い階層ならそこまで強い魔物も現れないし気にする程じゃないと思うわ。自分の力量さえ把握出来ていればれば大丈夫よ」
深く潜ればそれだけ強い魔物が現れるってことか。
「分かった、ちょっと興味あるから行ってみたいかな」
「そうですね……このメンバーならそこまで危険は無いでしょうし、クリード様とウルト様が居れば最深部まで行けちゃうかもしれませんね!」
最初難しい顔をしていたサーシャも段々乗り気になってきたのかテンションが上がってきた。
でもウルトはともかく俺はそこまで頼りにならないと思うぞ。
「ならどこの迷宮がいいかしらね? ここからそう離れてない場所と言えば……東のグリエルか北のリバークくらいかしら?」
「それならリバークの方がいいッス! グリエルの迷宮は昆虫系の魔物が多いって聞いたことあるんで出来れば行きたくないッス……」
昆虫系……俺も嫌だな……
「そうね、ならリバークにしましょうか。それでサーシャちゃんいつ出発する?」
「あまり時間を無駄にするのもアレですし、皆が良ければ明日冒険者証を貰ったら出発でどうですか?」
「私は構いません」
「自分も大丈夫ッス!」
「俺は……なんも無いな、大丈夫だよ」
買うものも無いし、そもそも知り合いも居ないんだから俺にやることなんてある訳がない。
「じゃあ明日ここの精算してギルドで冒険者証を受け取って出発ね。それと決めておかないといけないことがあるからその相談なんだけど」
「決めておかないといけないこと? なんですか?」
「報酬の分配よ」
「ん? 頭割りじゃダメなの?」
報酬の分配と聞いて一番に思いつくのは頭割り。
一番公平でいいと思うよ? 1人2割だね!
「今回の殊勲者はクリードよ? 貴方はそれでいいの?」
違うよ。ウルトだよ。
「殊勲者が俺かどうかは議論の余地しか無いけど、もしそうだとしても俺は頭割りでいいぞ?」
「そうなの? クリードがそれでいいなら提案があるのだけれど、いいかしら?」
どうぞ。
誰からも意見が出ないのを確認してからリンは続けた。
「総額の2割と端数をパーティ資金に、残り8割を6人で頭割り。これでどう?」
「え? 6人で?」
意味わかんないよ?
「私、サーシャちゃん、クリード、ソフィア、アンナ、それからウルトよ。ウルトは使えないだろうからウルトの分は実質クリードの取り分ね。どうかしら?」
ダメだと思いまーす! 不公平でーす!
「私はそれでいいと思います。ウルト様のことは頼りにさせてもらいますし」
「私も構いません。と言うより私とアンナの立場で頂いてもよろしいのかと……」
「自分は文句は無いッスけど……今回何もしてないのに分け前だけ貰うのは心苦しいッス……」
え? みんなそれでいいの?
「じゃあそれで決まりね。クリードもいい?」
「いや……不公平じゃない? 俺だけ貰いすぎというか……」
そりゃ少ないより多い方がいいよ? けど明らかにほかの人より多く貰うのは気が引けるというか……
「これからもクリードとウルトには頼らせてもらいたいし、パーティ資金を2割に抑えてるのも街から街に移動する時の馬車代を節約してウルトで移動したいからっていうのもあるの。だから節約できる分をそっちに回しただけ……納得出来ない?」
うーん……ウルトのおかげで経費削減できるからその分貰えってことか……
「みんな不満は無いの?」
「ありませんよ。このような言い方はあまりよくありませんがクリード様とウルト様にはそれだけの価値があります」
ほかのメンバーを見ても頷いている。
下手に反対しても長引くだけか……
「わかったよ、受け取る」
「それでいいのよ。じゃあ収支報告するわね」
リンが発表した収支報告は以下の通り。
ゴブリン総数327匹で大銀貨6枚と銀貨2枚と大銅貨1枚。
ホブゴブリン5体で大銀貨1枚。
ゴブリンキング1体で金貨4枚。
ウルフ10匹で銀貨2枚。
合計金貨4枚、大銀貨7枚、銀貨4枚、大銅貨1枚。
分けやすいよう銀貨換算239枚と大銅貨1枚。
ここから銀貨46枚、大銅貨1枚をパーティ共有資金へ。
残り銀貨193枚を6人で割って1人頭銀貨32枚と少し……
さんじゅうにまんえん!!
全員銀貨32枚受け取り端数はパーティ共有資金へ。
俺はウルトの分も受け取るので銀貨64枚。
たった3日で64万円稼いでしまった……
「これで終わりね。明日は8時に食堂集合ね、じゃあ解散!」
いや解散とか言われてもまだ2時とかだよ?
昼寝しかやることないしそれはもったいない。ならば……
「なぁリン、魔法教えて欲しいんだけど……」
「魔法? 今日見たでしょ、たくさん魔法使って私疲れてるのよね。だから私は今日はダラダラ過ごすの!」
リンはベッドに飛び込んでそのまま動かなくなってしまった。
これは今日教わるのは無理か……どうしよう?
「クリード様、私でよければ教えますよ? リンさんと比べてしまうとレベルは低いですが……」
「いいの? レベルなんて関係ないよ、是非頼むよ」
「はい! では……クリード様の部屋でやりましょうか」
サーシャは苦笑いを浮かべながらリンを見てそう言った。
確かにあそこまでダラケてる人の横でお勉強はやりづらいよね。
「ソフィアとアンナも寛いでいてください。リンさん、お昼寝するならせめて着替えてからしてくださいね?」
2人は頷きリンは片手を上げてヒラヒラさせている。返事だろう。
「それではクリード様」
「うん、よろしくね」
魔法……早く使えるようになりたいな。
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